さき さなえ(左樹 早苗)

海外生活14年(カナダ、ニューヨーク、ベルギー、ドイツ) 帰国後、英語塾を開き、同時に…

さき さなえ(左樹 早苗)

海外生活14年(カナダ、ニューヨーク、ベルギー、ドイツ) 帰国後、英語塾を開き、同時に文筆業をスタート。エッセイ、小説、 児童書などを出版しています。自然、動物、音楽が大好き! インテリア(古いもの)にも、とても興味があります。

最近の記事

「あの時はありがとう」とゴンが言った

さき さなえ ある寒い冬の日、某大学学生寮の、日の当たらない、じめじめした場所に置かれていた小さな犬小屋。その中にいた一匹の年老いた犬。白い中型犬。初めてそこを通りかかった著者と、目が合った瞬間、敵意をむき出しにして、狂暴で恐ろしい目つきになり、著者を威嚇した。 険悪そのものといった、とても悪い目つき。その次に又そばを通った時も全く同じだった。リードでつながれていなかったら、確実に著者を襲ったことだろう。 著者が通り過ぎると、ぴたりと吼えるのをやめた。 普通の怒り方ではな

    • 挽歌(ばんか)二本のコナラの樹

      さき さなえ 私はこれまでの23年間、貴方たち二本のコナラの樹と共に暮らしてきました。 今の住まいに入居したその日、ベランダのすぐ真ん前に、周囲にそびえ立つ沢山のケヤキの樹々、その中に埋もれるように貴方たちは居た。とても心細く、頼りなげに見えました。 だって、幹もまだとても細く、高さも低くて、その目立たないことと言ったら……。そんな貴方たちと私は、初対面の挨拶を交わしましたね。初めまして、どうぞよろしく。 毎朝カーテンを開けると、ベランダ越しに、真っ先に私の目に飛び

      • 第二の故郷 鶴岡

        さき さなえ 2023年4月24日と25日の両日、私は東北へ旅をした。過去一度仙台を日帰りで訪れたことがあるとはいえ、東北は私にとってほぼ未知の領域。 旅立つ2日前、コンクリートの上で転んで腰と膝を強打した。花粉症にも悩まされていた。12キロ近い大きなリュックを背負って歩かなくてはならない。こんな状態で、果たして、無事に旅ができるだろうか……。 行程で利用する上越新幹線も新潟からの特急も、一度も乗ったことがない。腰と膝がかなり痛くて、途中で倒れるのではないか……こん

        • 尾瀬

          さき さなえ 人生100年の時代となった。誰かが、自分は100歳です、と言っても、もうそんなに驚かないのだから、考えてみれば、大変な時代になったものだ。 私は若くはないが、まだ100歳までは当分ある。 誰にとっても、健康上の問題さえなければ、長生きは素晴らしいことだと思う。 70歳になり、80歳になっても、気持ちは若い時とそんなに変わらないし人は、生きてきた年数だけ、経験を積んでいるわけだから、その経験から多くを学ぶ。 若い時には理解できなかったこともわかるよ

          愛車シャレード

          さき さなえ 大切なこまごましたものを入れた箱を整理していたら、車のキーが出てきた。こんなところに入れていた……取り出して手に取る。じっと見た。 2010年までの21年間、私はこのキーを毎日使っていたのだ。いつも玄関の台の上の箱の中に、家のキーと一緒に大切に保管していた。 愛車シャレード! 私があんなにまで愛した車! 取り出したキーをなでていると、次から次へいろいろ懐かしい思い出がよみがえってきた。 私はこの車を、飼っていた愛犬ミミのために購入したのだった

          ヒグラシ

          さき さなえ 私は暑さが苦手だ。朝から湿度が高く、温度がどんどん上昇してゆく真夏の日など、ぐったりしてエアコンを稼働させ、早く秋になればいいのに……そんなことばかり思って一日を過ごす。 少なくとも23年前までの私はそうだった。 今から23年前、私は現在暮らしている団地へ越してきた。あたり一帯が豊かな自然に囲まれていて、私にとって理想郷のような環境に一目ぼれだった。水が好き。川でも湖でも小さなせせらぎでも、とにかく水を近くに感じると嬉しくてたまらなくなる私に、何と

          秋の七草

          さき さなえ 花も草木も大好きです。大輪のばらのように豪華ではないけれど、野の花、路傍に咲く名もない小さな花にも心惹かれます。 私の住まいのべランダも、長い間色々な花で彩られてきました。 室内でもいくつか観葉植物を育てているけれど、どれも寿命が長く、ペンジャミンに至っては、もう40年も私と共に暮らしている! 私の家に来た当初、あんなに細かった幹は、すっかりたくましく太くなり、高さも天井に届くほどに成長しました。何度か剪定もしています。寒さに弱く、順風満帆に4 0歳を迎えた

          連作(その1)酢漬けのニシン

          さき さなえ 彼女とはベルギーで出会った。 当時私は、ブリュッセルでの仕事が決まり、アパートが見つかるまで臨時にYWCAに滞在していた。 YWCAの近くのカフェのテラスに、すぐ日本人だと分かる若い女性が座っていた。それが彼女だった。先に話しかけたのがどちらだったか覚えていないが、私たちは話し始めた。 感じの良い明るい人だった。一人でヨーロッパを一カ月の予定で旅行中だと言った。 話がはずみ、私たちは意気投合して、いっしょにアムステルダムへ行きましょうということになった。 私は

          連作(その1)酢漬けのニシン

          幸せ

          さき さなえ 五月のある朝。目覚めて窓のカーテンを開ける。ベランダの向こうに広がる樹々の緑が目に飛び込んでくる。大きな喜びで胸が満たされてゆく…。今日も良い一日になりそう。       自然が特別好きである。私の住まいは山の中でも田舎でもない。町のはずれ、とでもいったところ。でもあたり一帯が豊かな自然にすっぽり包まれていて、春の新緑、夏の深い緑、秋の紅葉、冬の雪景色……四季それぞれの美しさは群を抜いている。                   私の住まいを訪れた人に、どの

          初恋

             さき さなえ 夢を見た。 にぎやかな大通りを歩いていると、だれかとぶつかりそうになった。すみませんと言って相手を見ると男性である。とたんに「あ、江田先生!」と大きな声を出していた。    先生は何も言わず、ただ優しい笑顔で私を見ている。                  それだけの夢だ。                                夢はしょっちゅう見ている筈なのに、いつも内容が思い出せない私である。目覚めた瞬間は覚えているのに、数秒もたたないうち

          自己紹介

          初めまして。私の名前は「さき・さなえ」です。女性。物書きです。 年齢不詳。 ただし、年齢にこだわる人には、ヒントとして「人生十分長いこと生きてまいりました」とだけ、そっと耳打ちしますね。              本日、2023年4月20日、この noteブログをスタートしました! これから、兼好さんにあやかって、つれずれなるままに、これまでの人生で学び得たもろもろを、心に浮かび来るまま、自由に、気ままに、書き連ねてゆきたいと思っています。      一人でも多くの方