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生きている実感のために


 再就職活動を経て、6月から勤め始めた新たな勤務先。
 慣れるので精一杯だった初期の日々を過ぎ、少しずつ業務に慣れ始めた頃、一つの現実が発覚し、それは大きな壁となって私の前に立ちはだかりました。
 指示された新たな業務は、求人票に明記されず、面接においても説明されず、全く私が想定していないものだったのです。
 過去に、同様もしくは類似の業務の経験があれば、あまり深刻に考えずに取り組めたかもしれません。
 しかし、未経験で尚且つ私には非常に苦手とする分野の業務だったため、責任が求められるその業務を担うことは、酷く恐ろしく重圧に感じました。
 どうするべきか随分悩みましたが、苦手で不慣れなあまりに、とんでもない失態をやらかして会社に物理的社会的な損害を与えるよりは、さっさと辞すべきだと判断し、上司に退職希望を申し出ました。
 その業務に慣れている上司は、「そんなに難しく考えることじゃない」、「その内きっと慣れる」と繰り返し言うばかりで、私の感覚を共有してもらうことは難しいようでした。
 ともあれ、私が過度な負担を感じないよう、その業務の際には上司が共同で担ってくれることになり、一旦はそれで様子を見る、ということなりました。
 しかし、後日上司に呼び出された際、社長や他の社員と話し合って「辞めてもらった方がお互いのため」という結論になったことを告げられました。
 そういうわけで、双方納得の上での円満退職が決まったのが8月半ばで、私は締め日である25日までは働くことになりました。
 ところが、他の社員の家族の1人がコロナを発症し、その社員が出勤できなくなったために、「8月末までは」と上司に懇願されて、勤務は延長に。 その後も、その社員の家庭では2人目、3人目の発症者が出て、その社員が出勤できない状況も更に延長されることになりました。
 私の退職にあたって募集されていた求人を見て2人の応募者が面接に来社しましたが、上司の目には適わなかったこともあり、改めて退職を考え直してほしいと熱烈に説得されました。
 色々重なって、私に辞められると会社が困る状況になっているのを察した私は、9月の締め日である22日までは延長して勤務することにし、その後のことはその間に考える、と上司に告げ、募集は打ち切らないようお願いしました。
 やがて、休んでいた社員が復帰し、1人の応募者が面接に来社しながらも採用に至らないでいる状況の中、私は今後のことを考えました。

 本来想定していなかった業務。苦手な業務。絶えずそのストレスを抱えながら、物凄く頑張って頑張って苦手なことが少しだけ苦手じゃなくなる生活。
 それはそれで悪くはないけれど、それは私がやりたかったことではない。そんな生活は楽しいだろうか。
 自分はわがままなのだろうか。
 自分が元々やりたかったことでなくても、仕事があって収入があるだけ恵まれていると考えるべきなのではないか。
 必要とされるだけありがたいと思うべきではないか。

 しかしそんな生活、本当に生き生きと生きている、と言えるのかな、とも思ったのです。
 本当にやりたいことを仕事にできている人は少ないのかもしれません。それでも、折角働くなら、得意なことが活かせる好きな仕事で頑張りたい。それが、生きていると実感できる、生き甲斐になると思うから。
 働くことは生きることの一部であり、しっかりと楽しんで、充実した人生を生きたいと思うのです。

 上司には21日に、苦手なことで頑張るより得意なことで頑張りたいので、やはり辞めさせてほしい、と告げました。上司は、無事会社の危機を乗り切ったためか、今度はあっさりと了承してくれました。
 こうして9月22日に、私は3ヶ月余り勤めた会社を辞めました。
 再び就職活動を始め、今日1件面接も受けて来ました。あまり感触は良くありませんでしたが、それも通過点です。
 私は、再び次へと進んで行きます。



 こちらに続きます。

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