岩下こうし

みんな個性的ですごいなぁ

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  • ドラゴンスレイヤーズ

  • 小此木さくら

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最近の記事

剣の王子、書の王子

「兄さんこれ読んでよ」 「魔人殺しか。好きだな。ユージェフ」 まだ十歳の兄は寝っ転がっていた草原から立ち上がり、さらに幼い弟の差し出した書を手にする。 王宮書院の書庫にある書のひとつであり、貴重な皮紙が使われている伝説の記録である。 かつてこの世界に現れ、今も在るとされる人ならざる人――魔人について記された書であり、それを打ち倒した英雄王アルターブの冒険譚でもある。 いわばアルターブ王国建国記の一部であり、原書として貴重な品である。 だが彼らにはそれを自由に持ち出す権限がある

    • 小此木さくらとヒースの本気

      気合の声が響く。 ガチだ。 あのおじさん本気でヒスクリフの玉を取りに行ってる。 対するヒスクリフも髪を逆立てさせて受けて立つ。 こうしてみると金色の髪が銀髪に生えている角みたいにも見えちゃう。 ヒスクリフの目はギラギラと輝き、暗い森を駆ける獣の素早すぎる動きを強調しているようだ。 わたしは思わず、こぶしを握り締める。 あ、あんなものを見せられたら当たり前だ。 (乱入したい!) わたしは心の底からそう思う。 心の底の野獣が咆哮を上げ、魂の牙がリングを翔けたがっている。 「ワイル

      • 完全なる自然守護主義者

        アルターブ王国の東には未開の森が広がっている。 もちろん人間にとって、王国人にとっての未開である。 森にすむ者たちは毅然として存在しており、彼らは動植物ではありえない。 その種族名をエルフと言った。 森の木々を揺らすこともなく、駆ける影があるひとつ、ふたつ、あるいはそれ以上かもしれない。 だがそれに気づくものはいない。 人であれ、獣であれ、木々の枝を渡るエルフの姿を捕らえることは容易ではない。 彼らは一様に新緑の葉の色をした緑衣をまとい、背中に小型の弓を背負い、腰には樫木の剣

        • 覇王国認定式剣舞。アルターブ王国

          「司祭様、今夜の剣舞よろしくお願いします」 この日、覇王国に認定されたアルターブ王国の宰相が恭しく頭を下げた。 青年は軽くうなずき、戦衣と呼ばれる神官衣へと着替える。 着替えると言っても神官衣の下に着ているので、正確には神官衣を脱ぐことになる。 白い神官衣を脱ぐとさらに白い戦衣が現れる。 上半身は肩の辺りで布が途切れており、下半身は太もものあたりまでしか衣がない。 戦衣の袖が短いのは激しい剣舞の邪魔にならないようにである。 青年の胸には聖剣印が揺れている。 舞台はアルターブ王

        剣の王子、書の王子

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        • ドラゴンスレイヤーズ
          6本
        • 小此木さくら
          9本

        記事

          魔術師アラムのはじめてのフィールドワーク        迷いの森と銀狼と

          小山のように巨大な魔狼が放った白銀の咆哮に、熊のような体躯を持つ男が赤色の三又に分かれた炎のような剣を大地に叩きつけ砕く。 すぐに赤い炎が燃え上がり竜の息吹きとなって魔狼を押し包む。 白銀の赤炎が混じり、赤褐色の毛色を見せる。 そこへ気合とともに長い柄を持つ竿状武器がつきこまれる。 先端に神の銀と呼ばれる特殊な銀で作られた刃をかぶせた鉾槍だ。 頭蓋を砕いた手ごたえに重装鎧の騎士は快哉の声を上げる。 そのそばには軽い皮鎧を着た痩身の盗賊と特徴的な布の服をまとった武闘家が立ってい

          魔術師アラムのはじめてのフィールドワーク        迷いの森と銀狼と

          魔術師アラムのフィールドワーク

          森の中を歩くというのは簡単ではない。 誰もが思い描く豊かな森は緑豊かでありながら森の本性である「危険」の取り除かれた人の作品に過ぎない。 木々の枝の間から漏れる光さえも専門の庭師の選定によってつくられた偽りだ。 本来の森では心地よく澄んだ空気は肌を撫でるナイフであり、生い茂る木々の枝は闇を招く手でしかありえない。 そんな中を四人の男女が歩いている。 ピクニックに来ているわけではない。 その証拠に彼らに笑い声はなく、一人一人がそれぞれの武器を手にしている。 先頭を歩く男は右手に

          魔術師アラムのフィールドワーク

          小此木さくらと竜殺しのおじさん

          ヒスクリフの首根っこを掴んだまま、わたしはドラゴンスレイヤーの中へと落ちていった。 落ちていくなぁ・・・・ どう考えてもドラゴンスレイヤーのコックピットに落ちたとしたらおかしな距離をおかしな感覚で落ちていく。 ちょっとテレポートの感覚に似ている気がしないでもない。 「あれ、見てよ!」 と声を上げたのはヒスクリフ。 わたしより先に落ちているヒースには何か見えているらしい。 やがてそれはわたしにも見えた。 なんかこうボロボロの服を着て髪も髭も伸ばし放題のおじさんが一人で山ほどの武

          小此木さくらと竜殺しのおじさん

          ドラゴンスレイヤーズ

          《あらすじ》 竜を支配するという杖の購入に失敗した騎士アラム。魔術師の杖と薔薇の剣を交換した男の子と女の子。竜人と戦い、大陸の危機を直感し王国を捨てた王。王国を征服したもののドラゴンを見て撤退した帝国騎士団。王は自らドラゴン退治を志し、帝国はドラゴン討伐を黒騎士に託した。帝国に編入された魔術王国の魔術師は皇帝の依頼を受け、薔薇の剣を送った幼馴染帝国の剣と大司教ラズエルを皇帝から借り、王は竜を神と崇めるリザードマン種にドラゴン討伐の許可を得た。彼らはドラゴンに戦いを挑み、負傷し

          ドラゴンスレイヤーズ

          小此木さくらとドラゴン伝説

          灰白から銀白へと変わりさらにその色を変じようとしている巨人が震えている。 背中を丸め、うずくまるように膝をついた巨人の背中がはじけ、虹色の煙を帯びた銃士が弾丸のごとく射出される。 トマトがつぶれるような音を聞いて、レイ・カリーニンに顔をしかめた。 東方教会の本部に安置されていた聖戦士ドラゴンスレイヤー。 三メートルを超えるオリハルコンの巨人はやはり聖人の血によって出現した聖なる慰霊碑「槍の大樹」に縛り付けておくべきだったのだという考えがレイ・カリーニンの頭をよぎる。 だが伝説

          小此木さくらとドラゴン伝説

          まおう

          「あー、負けた。負けた」 吉音はビールのプルタップに指をかけて舌打ちする。 今日の流れなら絶対にとれると確信していたのに、まさかの万車券を超えが10万車券にまで成り上がるとは・・・ テーブルを叩いて、腹の中をうねる悔しさを冷やすために苦い液体をのどの奥に流し込む。 流し込まれた液体は一瞬、ひやっと腹を冷やすが吉音が枝豆に手を伸ばしたころには逆にかっかと頭を叩いてくる。 「惜しかったなぁ」 最終コーナーまでは予想通りの大穴だったのだ。 それがまさか差し替えされるとは・・・ 「ま

          雄渾

          「ここがいい」 「確かにここならコウヤ様も満足なさるでしょう。戦が起これば必ず主戦場となることは確実ですからね」 「この島国で唯一、大会戦の許される平原の係争の要地。征夷の殿も必ず満足なされるはずだ」 「見るだけで退屈と言われるかもしれませんが」 「そのときには黄泉から炎馬を駆って駆けあがって参られるでしょう。そういう人でした」 「黄泉の鬼より地上の戦ですか。コウヤ様らしいですね」 「北の鬼も黄泉渡りしている。退屈ではなかろう」 「それよりもつれあいとなって黄泉を乱しておらぬ

          小此木さくらとニート竜人たち

          黒髪に銀の混じった髪がべったりと額に沈み込んでいるような感覚がある。 竜の巣でのテレポートという難行を繰り返した報いである。 それどころか、足元さえおぼつかない。 膝まで地面に埋め込まれて、さらに背中に冷水を浴びせられ、際限なくウォッカを飲んだ報いの二日酔いにさいなまれているような、朦朧としたというにはつらすぎる状態だ。 「大丈夫ですか?」 そう声をかけてくる少女の声さえ歪んで聞こえる。 ただし彼には、その声がこの苦行を強いた少女小此木さくらのものではないことさえわからない。

          小此木さくらとニート竜人たち

          小此木さくらとドラゴンスレイヤー

          「ぐばぅべげぼっ・・・」 黒髪に銀白色の髪をはねさせたマーガスさんが膝をついて咳き込んでいる。 黒鵜くんの指示のもとにみんなで作った多重魔方陣という魔力収束と魔力備蓄それに魔力補給をいっしょにやってくれる便利な二十六芒星の効果だ。 マーガスさんが意識を取り戻したのを見て、のどかが祈るように手を合わせて涙ぐみ、そんなのどかの様子にクラスのみんなが肩を叩きあう。 そして 「それじゃ、マーガスさんもよみがえったことだし、ロボット捕まえに行こう!」 とこぶしを突き上げたラブやんにみん

          小此木さくらとドラゴンスレイヤー

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          通知を見て、ふと思う。 わたしも投稿してみようかと・・・ やるときもあるけれど、やれないときもある。 今日はやれる日だったみたい。

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          一週間に一回の目標は泡と消え

          てしまいました。 コロナ陽性で熱出したりしていたので、仕方ないとも言えますが熱があるときは眠れなくて、動けていたけれど、 食べれなくてつらい間はがんばれていたけれど、 体が急速回復モードに入ってしまうと動くのがつらくなりました。 コロナあけて、元気になるつもりが とんでもない「ダルさ」という「体の休むべし」指令に大敗北です。 無理に食べると吐いちゃうし、外を歩けば息が切れる。 くるしい一週間が過ぎ サポステ就職集中講座に戻ろうとするもまだ咳とか出るしの一週間が

          一週間に一回の目標は泡と消え

          胸がどきどきするのは

          不安だからじゃなくて「新しい経験のための準備」をしているから。 そんなスタンフォード大学の授業的プラス思考を実行して、がんばっていくぞと、サポステの就職集中講座に通っていたらぶっ倒れました。 コロナウイルス陽性でした。 お腹が痛くなったり、喉が渇いたりという反応は「体が新しい経験を受け入れるために起こす良い反応」という信仰が間違っていることもあるという珍しい例かもしれません。 もともと「現象は代えられない」けれど「解釈は変えられる」。 そしてできるなら「自分に良い結

          胸がどきどきするのは