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#35 ーうつ病みのうつ闇ー 闇の正体

これを書きながら、溺れそうな毎日の中でたくさんのことを気づき、学んだ。うつの黒い霧はしつこく自分につきまとい、その闇に今にも飲み込まれそうだったし、今もそういう瞬間がある。

前を向こうとしたし、上に浮かび上がろうともした。でもそうすると、必ず自分の闇の部分が、とにかく強烈(きょうれつ)に引っ張り返してくる。

最終的には、自分を不幸にするのは自分だ。シナリオを描いているのは、自分自身だ。だったら自分が、そのシナリオを幸福なものに書き換えればいい。それがわかっているはずなのに、まるで中毒の患者のように不幸を繰り返そうと、自分を責め続ける。

あの夏の陽炎のように、ゆらゆらと揺れるうつの黒い霧の波間に見える闇…その正体は、いったい何なのだろう。その目的は?その存在に気づいてから、ずっと謎(なぞ)だった。何度問いかけても、答えは返ってこなかった。

そして今、様々なことに気がつき答えが見えてくる中で、ようやくその正体がわかりつつある。


子供を殺した17歳の夏…あの時…子供に対する罪悪感と共に、子供よりも自分を守った卑怯な自分を、心の底から嫌悪した…そういう自分を許せないと思い、それが激しい憎しみになって、ずっと自分を苦しめ続けていた。

さらに言えば、子供への罪悪感よりも、自分のことに気が向いている自分に、またよりいっそう嫌悪や憎しみが増していた。自己嫌悪や憎悪が強い分、清廉潔白(せいれんけっぱく)でありたいと強く願った。

そうやって自分の問題を覆い隠した。それでも隠しきれない憎しみや嫌悪が、汚泥(おでい)のように自分の中に溜(た)まっていき、今ではそれに埋まりそうになって、身動きができなくなっている。冷たく重いその泥に。
 
あの夏、近所の団地の15階の廊下から、飛び降りて死んでしまいたかった。手すりを越えて宙に舞ったらどんな感じなんだろう。落ちていく時に何を考えるのか。地面に叩きつけられる衝撃と、その感覚はどんなものなんだろう…いくども考えた。

結局その時、体は飛び降りなかったけれど、心は飛び降りて死んだんだ。

15階から真っ逆さまに落ちて、地面に叩きつけられ砕け散った心。一人の理解者も味方もいなかった、あの時の苦しみと悲しみ、寂しさや無念さ、絶望…心からの慰め一つもない、誰にも相談できないという孤独な状況。

一人ではとうてい抱えきれない罪の意識。抱えきれるはずもないものをただただ耐え、人間の体からこんなに涙が出るんだというくらい、隠れて独りで泣いた。どんなに泣いても、誰も気づかなかった。母親でさえ。

そうだった…気づかれてはならない状況でもあった。

そうしているうち、自分の砕けた心を完全に分離し、あの団地に置き去りにしたんだ。抱えきれないものを何とかするには、そうするしかなかった。

でなければ気が狂っていたし、生きてはいけなかったから。それでも、犠牲(ぎせい)になった子供のために、死ぬわけにはいかなかったから。あの時の自分には、生きるくらいしかできなかったから。

死んでしまえれば、どんなに良かったか。地獄の炎に焼かれながら生きるのに、正気ではいられない。

その時、生きるために切り離したものが、きっとこの闇なんだ。じっと耐えて隠れていた…砕けた心。

だから、私が幸せになろうと本気になって自分の過去と向き合い、闇の存在に気づいた時「今さら何だよ!あの時置き去りにして、知らん顔していたくせに。今まで無視し続けていて、今さら何だって言うんだよ!もう遅いよ!とっくに砕けて粉々なんだよ!どうしてくれるって言うんだよ!幸せになりたいって?冗談じゃないよ!」と、激しく反発した。

その激しい怒りは黒い霧となり、ものすごい力で私を闇へと引きづり込もうとした。闇は近づこうとしてくるものは何であれ気に入らず、とにかくすべてをぶち壊してやると怒り狂っていた。 
 

私は心の中であの団地に行き、砕けた心の欠片を拾い集め、その悲しみや孤独、虚しさや怒り、絶望を…その欠片たちと共に抱きしめる。欠片たちが癒されれば、輝く光になって私の中に取り込まれていくだろう。

罪も孤独も悲しみも、怒りも絶望も…自分の全てを受け入れ、許し、愛せるようになれるだろう。そうなろうと決めるんだ。本気で。

ここにある分度器――たった1°でも角度がついていれば、0°の基線と1°の線…1°の線は上昇していき、2本の線は先に行くほどその角度は大きく開いていく。

0°のままでいるのか、1°を選ぶのか…私は1°を選ぶ。うまくいかなくても。とにかく、選び続ける。10°はできなくても、1°ならできるだろう。挫けて0°に戻っても、きっとまた1°を選ぶだろう。

闇がしつこく0°に戻しても、私もしつこく1°にする。だって闇は、私自身だから。闇が私にとって厄介な存在なのと同じように、私も闇と同じくらいしつこくて、闇にとっても厄介なヤツに決まってる。

1°でいられる時間が長くなれば、その分大きく基線から離れ、0°に戻すはさらにエネルギーが必要になる。私は、1°だけ引き上げれば良いが、闇は戻すのに2°3°4°と大きく戻さなければならない。

そしてやっと0°まで戻しても、私はまた、たった1°頑張れば良い。勝利は私の手にある。

1°持ち上げることを選び続けること。たったそれだけ。何度挫けても、自分がどうなりたいかという着地点だけは決して変えずに、その方向に向けて1°の努力で立ち上がる。

あらゆる闇の戦略に対して、私は1°の戦略で立ち向かってみる。小さいけれど、大きな一歩。小さいけれど、大きな希望。

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