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荒地の家族


あらすじ 


40歳の植木職人・祐治は、災厄の二年後に妻を病気で喪い、仕事道具もさらわれ苦しい日々を過ごす。 地元の友人も、くすぶった境遇には変わりない。 誰もが何かを失い、元の生活には決して戻らない。 被災地に生きる人々の止むことのない渇きと痛み。

選書理由

「ブラックボックス」「推し、燃ゆ」を読んで以来芥川賞作品をいつか読むということで購入。
今年は大衆文学にしか触れていないので積読から純文学を抜粋。
(お金無いというのもある)

感想

元には戻れない過去とそれに向き合って生きていくお話
事細かに表現される描写は大衆文学にはなく、純文学ならではのリアルさ、生々しさを感じる。
扱っている内容が東日本大震災というのもあり
今まで読んできた純文学よりも強く感じるほどです。

不器用で過去に囚われつつも
子供への責任感、そして存在を希望とすることで友人の明夫とは違う生き方を進むことができた。
あの災厄で元へ戻れないと分かっていてもifを考えてしまう。
住み慣れた町、見慣れた浜、山、クロマツ含む自然
馴染みの物が消えるというのは、ここが地元である根拠も消えるということ。

元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か、
一人ひとりの「元」はそれぞれの時代も場所も違い、一番平穏だった感情を取り戻したいと願う。

「報いだよ」

最後に

視線を感じた
誰もいない虚無のなかに確かに視線を感じた
1人殻に籠っていても作り出されるそれは
死人に残した想い
後悔も懺悔もいらない
一人になれないのは一人になりたくないから
身近な死と現に残した感情が俺を見張っている

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