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宮部みゆきさんの火車を読んだ感想『ただ、幸せになりたかっただけなのに』
宮部みゆきさんの小説
『火車』を読んだ。
この小説を読んだきっかけは、私の大好きなnoterさんのおひとりでもある
くなんくなんさんのnoteを読んで興味を持ったからだ。
あらすじ・・・
怪我をして休職中の刑事、
本間俊介は
本間の亡き妻の遠縁にあたる栗坂和也に、失踪した彼の婚約者を探して欲しいと頼まれる。
失踪した彼の婚約者である
関根彰子は両親を亡くし
天涯孤独の美しい女性。
銀行員である和也は、二人の新生活に向けて大きな買い物をするために
クレジットカードを持っていない彰子に、カードを作ることを提案するが
カード作成の申請が却下される。
理由は、彰子が金融機関のブラックリストに載っている
いわゆる自己破産者だったからだった。
その事実を和也から突きつけられた彰子は
『説明するから少し時間をくれ』と言ったきり、
翌日には和也の前から忽然と姿を消してしまう。
本間は刑事という身分を隠して彰子の消息を掴むために動き出すのだが
捜索を進めていくうちに
関根彰子は全くの別人物だと判明する。
本物の関根彰子はどこにいるのか?
では、失踪した和也の婚約者はいったい誰なのか?
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この物語の時代背景は
1990年代
いわゆるバブル全盛期の頃だ。
贅沢な生活に日本国民の大部分が憧れて、お金を使うことが正義であるかのような風潮で、日本人は右肩上がりの好景気が永遠に続くと信じていた、そんな時代。
また、「欲しいものをもっと手に入れたい」と日本人の限りない欲望に合わせて、クレジットカード会社やサラ金がどんどん増えていった時代でもあった。
クレジットカードがあれば
欲しいものが即座に手に入る。
お金が貯まるまで買うのを
我慢しなくていい。
今欲しいものをその場ですぐに手に入れられる。
それはただのプラスチックのカードが魔法のカードになる瞬間だった。
クレジットカードで支払うということはカッコイイ
スマートな気分になれる
現金で払うなんて、なんだかダサい
スマホが普及して、今でこそキャッシュレスだ、ポイント払いだと現金を持ち歩かない生活が浸透しているけれども、
30年以上前はまだまだ買い物は現金が主流だった。
私もクレカを作るまでは
ちょっと値段の高いものをショッピングする時は
念のために10万円くらいの現金をお財布に入れてお買い物に行ったりしたものだ。
現在のようにスマホひとつでカード作成の申請など
もちろんなかったし
クレジットカードを作るのも今よりはハードルは高かった。
だからクレジットカードを持っていることは
クレジット(信用)がある人物のステイタス、だったのかもしれない。
人によって欲しいものは色々あるだろう。
マイホームや車から
洋服、バッグや貴金属
旅行や高級なレストランなど
でも、もしも支払いが滞ったら、その時はペナルティーもあることは自覚しないといけない。
なぜなら、ローンは完済して、初めてそれらが自分のものになるのだから・・・
次々とカードで買い物をして金利を払い続けていくうちに
自分でも何にどれだけ払っているのかわからなくなり
最終的には金利が膨れ上がって、取り立てに追われて
仕事も家族も親戚・友人とも離別しなければならない人生を送る人も現実にいるのだ。
そして、本物の関根彰子もその一人だった。
ただ、彰子になりすましていた和也の婚約者の女性は自己責任とは違った形のローン破産の被害者だったのだが・・・
タイトルにも書いたが
「私、なんでこんなことになったのか、わからないんだよね。私はただ幸せになりたかっただけなのに」
と言ったのは次々と欲望のまま買い物をして自己破産した本物の関根彰子の言葉。
本物の彰子のように、地方から出てきて、学歴もコネもなく、安月給で東京で一人で暮らしていくのは大変だ。
会社の寮をでて、一人暮らしを始めた頃から彰子の生活はだんだん派手になっていき、歯止めが効かなくなっていく・・・
では、心の隙間を埋めようとして
欲しいものを際限なく手に入れることは本当の幸せにつながるのだろうか?
『お金さえあればすべてがうまくいく』
確かにある程度のお金は必要だけれども、
カードひとつで簡単に手に入るものは私を心から幸せにしてくれるものなのか?
心が満たされていないと、
いくら買い物をしても心の渇きは潤わなくて
本当の意味では満ち足りない。
一つ手に入れても、また次の欲しいものが出てきて、
「もっともっと」と 無限ループに陥ってしまうのだ。
身の丈に合った生活を送ることは、決して、恥ずかしいことでもカッコ悪いことでもない。
キラキラしている(そのように見える)誰かと比べなくても
自分自身が満ち足りているのかが大切なこと。
自分の等身大の姿をちゃんと直視できること
それが実は真の幸福とつながっているのかな・・・
これは私の自戒の意味も込めている
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最後になるが、作者は小説の中で自己破産に追い込まれる人だけが悪いのか、という疑問も、ある弁護士を通して投げかけているのを追記したい。
テレビやYouTubeのCMや
広告を見て『簡単にお金が借りられるんだ』というイメージが若い時から刷り込まれる危険はないのだろうか?
簡単に借りられてもそのお金は絶対に返さなければならない。
キャッシングやリボ払い、
などとカッコ良くカタカナで呼び方を変えても
借金はあくまでも借金なのだから
使ったお金の借金は魔法のように消えてはなくならない。
くなんくなんさん、今回も面白い作品を紹介してくださって
ありがとうございました。
宮部みゆきさんの小説は大好きですが、こちらは未読で
くなんくなんさんの記事に出会わなければ読んでなかったかもしれません。
展開がとても面白くて、ぐいぐい引き込まれました。
長編でしたが一気に読んでしまいました〜
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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いつも応援ありがとうございます。