🍰背中を押して…🍰

彼女はあたしの大切な親友
いつもあたしのみかたなの…
あたしが大好きな男の子がいて
その男の子のことを
彼女も好きだったとしても
あたしに譲ってくれるし
あたしがその男の子から
告白されても
笑顔で
良かったね
って喜んでくれるの
それに彼女の
お気に入りのお洋服を着て街に2人でおでかけした時の話なんだけど

本当はそのお洋服
彼女がその日に着ていく予定だったんだけど
あたしが彼女に

それあたしの方が似合うって思うんだけど貸してくれる？って言ったら
快く
そうねあなたの方が似合ってる！って
貸してくれたの

街を歩けばみんな振り返ってたわ
なぜ？って
あたしが可愛いからよ
みんなみんなあたしの方ばかり見てるんだもん
当たり前なんだけど！
そしたら知らない男の人が声をかけてきてそれって
モデルにならないか？って
スカウトだったの
あたしだけにスカウトしてきたのよ
隣にいる彼女のことなんて
まるで眼中にないかのようにね
砂漠の中で原石を見つけたかのようにキラキラした目であたしに夢中って目をしていたわ
でもちょっぴり
勇気がでなくて…
あたしは悩んでたの
そしたら彼女ったら
あなたは可愛いから自信持って！
モデルなんて素敵じゃない
やってみたらいいよって言ってくれたの
彼女はいつもあたしのことを応援してくれる大切な親友…

そう信じていた
そう思っていた
はずだった…
モデルのオーディションに行くことになって心臓が破裂しちゃいそうなくらいにドキドキしてたあたしの手を
彼女は優しく握ってくれた
大丈夫よ…ちゃんとそばにいるから
あなたの親友なんだもの…
そう言うといつものように微笑んだの
でも…その握りしめてる手が
どんどん
どんどん強くなってて
思わず
痛い！って叫んだの
なんだか…とっても変な感じがしたの
だって彼女った
汗でベットリした手のひらの
見ても微笑んでるんだもん

ごめんね…あなたのこと大切な親友だって思うばかりについ強く握りしめちゃったの

なんだか彼女の視線がどこか遠くを見てて全然あたしと視線が噛み合わない
よくわからないけど
妙な違和感を感じたのを覚えてる

でも折れそうなくらいに握りしめてくれたその手が優しさであたしのことを守ってくれたって思い直したの
そういつも
彼女はあたしの背中を押してくれてたんだもん
あたしに対する愛だと思ってた…
でも
違ってた…
オーディション会場に行く途中の電車に乗るのに
電車が来るのを2人で待ってたんだけど
電車がすぐそこまで来てて
もうすぐ停まろうとしたその時だった
彼女は突然あたしの背後に回ると
トンって
あたしの背中を押したの

えっ…
あたしはこの事態がよくわからないまんま
彼女の方に向かって手を伸ばしたんだけど
彼女はその手を振りほどいて
あたしのことをものすごい形相で睨み付けてた…
スローモーションみたいにあたしはゆっくりと堕ちていった…

遠くでかすかに聞こえるのは
耳をつくような
かな切り声で笑う彼女の声と
あたしに対するたくさんの罵声

あんたなんか親友なわけないじゃない！
欲しいものを全部
平気で奪うあんたなんか
大嫌いだった
でもねあんたはあたしの大切な親友だから
あんたのお望み通りにしてあげたわ！
背中を押してあげただけの話よ！
そう言って
彼女はあたしの後から
自分も落っこちてきたの…

知らない誰かの泣声みたいな叫び声とか
ざわめきとかを脳裏に焼き付けながら
金属のすすり鳴きと擦れ切れる感覚
血生臭い5月の風が
通学途中の男子学生の頬をなぞる

何度も鳴る電車のブレーキの音
あたしの人生は
そこで終わっちゃったみたい…
彼女の人生もそこで終わっちゃったみたい…

だって…
あたしたちは
大切な親友だから…