弁護士髙野傑

刑事弁護人の髙野傑です。早稲田リーガルコモンズ法律事務所パートナー弁護士です。 刑事事…

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刑事弁護人の髙野傑です。早稲田リーガルコモンズ法律事務所パートナー弁護士です。 刑事事件について、わかりやすくお話しします。 メール:takano.s@legalcommons.jp Twitter:https://twitter.com/su_takano

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暗証番号やパスコードは無駄?-押収されたスマホの中身は見られてしまうのか-

 現代社会において、スマートフォンは人の第二の脳とも呼べるほど、多種多様な情報を保存しています。今回は、警察などの捜査機関が、暗証番号によるロックを突破し、スマートフォンに保存された情報にアクセスする方法を解説します。 スマートフォンに保存された情報は、最も重要な証拠の一つ 犯罪の成否において、その人が行為時にどのように認識していたのかが重要な意味を持ちます。故意に犯罪を行ったのかという重要な問題です。人の心の中や思考を直接覗くことはできません。その人が何を意図して行動して

    • どこの誰かはすぐわかる!?警察が犯人を特定する方法

      どうやって「どこの誰か」を特定しているのか 先日の記事で、防犯カメラのリレー捜査等、犯人の疑いがある人の足取りを追跡する捜査について解説しました。  警察などの捜査機関が、その人の足取りを追跡するのは、追っている人物(多くは犯人)がどこの誰かを特定するためです。特定できるまで、あらゆる手段で追いかけます。  今回は、足取りを追う捜査のゴールとも言える「どこの誰かが特定できる場面」について解説します。 どこの誰かが特定できる場面自宅まで足取りを追跡することが出来たケース

      • その犯人、どうして見つかった!?防犯カメラのリレー捜査について

        「防犯カメラのリレー捜査」とは? 先日ニュースを見ていて、このような言葉が耳に入ってきました。  警察などの捜査機関は、事件が起きればまず犯人がどこの誰なのかを特定しようとし始めます。そのための手法の一つが「防犯カメラのリレー捜査」などと呼ばれるものです。  弁護士は、刑事裁判のなかで証拠を見ることが出来ます。その中には、捜査機関がどのようにして犯人を追跡していったのかがわかる報告書などが含まれています。今回は、捜査機関が犯人をどのように探していくのか、足取りを追跡していく

        • ドラマ「アンチヒーロー」から尋問を学ぶ:物を利用した証人尋問

          ドラマ「アンチヒーロー」のリアリティ アンチヒーロー第1話を見ました。これからの展開に期待できそうな終わり方で、おもしろかったです。もちろんエンタメですから本物の刑事裁判どおりとはいきませんでしたが、手続きについてリアリティを感じる場面もありました。  今回は、私が良くできていたと感じた尋問の場面を取り上げたいと思います。なお、ネタバレはありませんのでご安心下さい。 尋問では証人に自由に物を見せることはできない 長谷川博己さんや堀田真由さんが演じる弁護士が証人尋問をする場面

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          「弁当切り」が不可能になる!刑法改正と執行猶予

          執行猶予制度について  刑事裁判で有罪判決を受けた場合、すぐに刑務所に入ることになると思っている方が多いかもしれません。実際はそうではなく、初めて刑事裁判を受けた場合に、実刑判決を受けることは稀です。多くの人は、執行猶予付きの判決となります。執行猶予とは、本来は刑務所に入らなければならないところ、一定の期間刑の執行を猶予し、その期間が経過すれば刑務所に服役しなくて良くなるという制度です。 「弁当切り」と呼ばれる手法について  覚醒剤の使用など、再び罪を犯してしまう人が多

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          ワンナイトもお持ち帰りも危険-不同意性交等罪の問題点とリスク

          強制性交等罪から不同意性交等罪へ 令和5年7月、改正刑法が施行されました。これまで強制性交等罪と呼ばれていたものが「不同意性交等罪」へと変わりました。多くの人は「自分が犯罪をするわけがない」と考えていることでしょう。しかし「不同意性交等罪」は、誰もが、場合によっては社会的地位が高い人ほど問われる危険がある犯罪となっています。  不同意性交等罪は、罪となる行為をいくつかの類型に分類して定められています。その類型のいずれかを原因として、相手が性交等に同意しない意思を「形成」「表明

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          違法な取調べの実態に光をあてるために2:法廷での再生と裁判の公開原則

          (この記事は、私が所属する法律事務所のコラムの内容を、手続の進展にあわせて修正したものです。)  最近、検察官を含む捜査機関によって違法な取り調べが行われていることが注目を浴びています。しかし、普段から取り調べの映像記録を目にする機会の多い弁護士からすれば、このような取り調べが決して珍しいものではありません。表に出てきているものはあくまで氷山の一角なのです。違法な取り調べを根絶するためには、このような実態を一人でも多くの国民の方に知ってもらう必要があります。  この記事は、

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          違法な取調べの実態に光をあてるために1:「目的外使用禁止規定」という障壁

          (この記事は、私が所属する法律事務所のコラムの内容を、手続の進展にあわせて修正したものです。)  昨今、警察官や検察官の取調べの音声や動画がYouTubeなどで公開され、注目を浴びています。私はこのうちの一つの国家賠償請求訴訟の原告代理人の一人です(取調べ映像はhttps://www.youtube.com/watch?v=XArMxYdhk_U)。  この事件について、これまでの手続きと今起きている問題について、取調べの録音録画映像に関することを中心にお話ししようと思いま

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