見出し画像

"はと弁"って知ってる?弁護士接見の闇

こんにちは、弁護士の髙野です。 みなさん、最近ニュースで弁護士が逮捕されたり、懲戒処分を受けたりしているのを耳にしていると思います。その中には、詐欺事件の共犯者として捕まっていた人たちに、別の人から頼まれて「弁護人になるつもり」と言って何度も会いに行き、弁護士会から業務停止の処分を受けたというものもありました。「それってそんなにダメなことなの?」と思う方も多いんじゃないでしょうか。今日は、刑事弁護の世界で「はと弁」と呼ばれる弁護士たちの問題について、わかりやすくお話ししていきたいと思います。

一般の方が捕まってしまった人と面会する際のルール

まず、普通の人が捕まった人と会う場合のルールを確認しておきましょう。以前noteも書いていますのでそちらも併せてお読み下さい。

捕まってしまった被疑者・被告人の方は、平日の朝9時から夕方4時くらいまでの間に、1日1回、15分くらい、最大3人までしか面会することができません。しかも、警察官が同席していて会話を聞いています。さらに、接見禁止になっていたら、家族でさえ会えないし、手紙のやり取りもできません。かなり厳しい制限がかかっています。

弁護士の「特権」?

これに対して、弁護士は特別な扱いがされています。土日関係なく(拘置所は除く)、深夜でも何回でも、時間制限なしで会えるんです。「それって弁護士の特権じゃない?」と思うかもしれません。しかしこれは、捕まってしまった人の権利を守るために絶対に必要なものなんです。
例えば、捕まってしまった人が「今日中に取調べについて相談したい!」と思っても、一般の方の面会ルールだと、すでに1回会ってたらダメ、夕方5時過ぎてたらダメ、土日ならダメ...ってことになってしまいます。これでは、十分な弁護活動ができません。捕まってしまっている人の権利を守るという弁護士の職責を果たすため、このような特別扱いが認められているわけです。

はと弁とその動きについて

この特別扱いを悪用して暗躍しているのが「はと弁」です。薬物事件や詐欺事件などで、組織の上の人が状況確認や口止めのために送り込む弁護士のことです。伝書鳩みたいに組織と捕まった人の間で伝言ゲームをするから"はと弁"と呼ばれています。
「はと弁」の問題点はたくさんあります。まず、捕まった人のためではなく、組織のために動いていること。弁護士は依頼者の利益を第一に考えなければならないのに、それに反しています。次に、何人もの共犯者を同時に弁護するのは適切ではないということ。「あいつに言われてやった」とお互いに責任を押し付け合うような状況で、同じ弁護士が両方の味方をするなどできるはずがありません。これは想像できると思います。
弁護士であっても「弁護人になろうとするつもり」がなければ、上記のような特別扱いは許されません。はと弁は上記状況からして「弁護人になろうとするつもり」などあるはずがないのです。それなのに「弁護人になるつもり」であると嘘をついて面会をしているのです。ルールを悪用しているということです。
「弁護人になろうとするつもり」と言えば、接見等禁止がなされている場合でも、警察官のいない所で会えますから、これを利用して共犯者たちに組織の指示を伝えて回るなんてこともあるようです。

被疑者・被告人の権利が脅かされる危険

はと弁の行動は、弁護士全体の信用に関わります。しかしそれだけにとどまりません。彼らの存在によって、被疑者・被告人の方の権利が脅かされる危険があるのです。
弁護士が自由に捕まった人に会えるようになったのは、実はつい最近のこと。数十年前は弁護士でも警察の許可がないと会えなかったんです。もし弁護士自身がこのルールを悪用し続けたら、また昔みたいに自由に会えなくなるかもしれません。そうなれば、一番困るのは、即座に弁護士のアドバイスを受けることができなくなる被疑者・被告人の方なのです。

はと弁に対する私の対処方法

私自身も、私の依頼者のところに正体不明の弁護士が来たと聞くことも、少なくありません。そういう時は、すぐにその弁護士に連絡して「次に無断で会いに来れば、弁護士会に懲戒請求しますよ。」と警告します。たいていはそれで来なくなります。ただ、より悪質なはと弁は名刺も置いて行きませんので、どこの誰だか分からなくて困ることもあります。

まとめ

最後に、ご家族の方へアドバイスです。もし捕まってしまったご家族の弁護人がはと弁のような行動をしているなって気づいたら、すぐに別の弁護士に相談してください。そういうことをする弁護士に、まともな刑事弁護は期待できません。そもそも組織から派遣されているわけですから、ご家族を守るために最大限頑張ってくれることなどありえないことは想像できるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?