ツバサをください 1【書けていた文字】
しかもそれは、「正しく書けていた字」が、ゆっくりと時間をかけて、だけど確実に「読むことが困難である、歪でバランスの悪い字」へと変化して行ったのです。
もちろん、書いている本人も、とてもとても苦しそうで、見ていられないほどになって行く。
そうしていつの間にか、彼は「字が、書けなくなってしまった」。
彼は「ぼくは発達障害」と言う作文を書き、それがとある賞に応募されることが決まり、「準特選」を頂いたことがあります。
この「ぼくは発達障害」、学校の方でタイトルを「もっとやんわりとしたもの」へと変えられてしまいました。
まあ、そこは色々と理由があるのでしょう。
つまり、彼は作文を書くことが出来るのです。
いや、出来ていたのです。
ずっと、確かに字を書いて来ました。
そして、彼は字を書くことが嫌いではありませんでした。
どちらかと言うと彼は、字を書くことが好きでした。
本当に、好きでした。
幼稚園の頃からの、彼の趣味にこんなものがありました。
好きなゲームのキャラクターたちの名をノートに書き、特徴を並べる。
好きな恐竜の名を全て覚え、ノートに書き、特徴や和名を書き記す。
好きな音楽の歌詞で替え歌を作り、ノートに歌いながら書く。
そして、楽しそうに新しいノートを母親にせがむ。
そんな風に字を書くことを、自然に、遊びの中で楽しんでいた彼は、まさか失ってしまうだなんて、思ってもいなかったのでしょう。
…私も、そうでした。
彼に何があったのかを知って、私は愕然としました。
どうして、気がつくことが出来なかったのか。
遅過ぎた、と後悔し、憎しみに駆られました。
苦しかった。
だけど、本当に、一番苦しかったのは、彼です。
それでも、笑いかけてくれる、夕陽。
強いね、偉かったね、ごめんね。
これから、そんな私の息子の夕陽がパソコンに打ち込み、形のない物語としたものを、私が文章に直し、更新して行こうと思います。
かなりマイペース更新かと思いますが、よろしくお願い致します。
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