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無題


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担任と飲んだ。高校の最寄り駅という思い出の地で飲んだ。思えば、それをいつかしたいと卒業したときにはすでに思っていたのだろうか。きっかけは高校時代の友人からの連絡である。私はその友人とは同じ美大を目指すいわば戦友のようなものだった。高校卒業してからも会おう、と言ったきりほとんど会うことはなかった。部活が一緒であったために、その関係でしか卒業後も会わなかった。そんなもんだと思ってた。蔓延した未知のウイルスはさらに距離を広めたのだろう。しかし私に聞きたいことがあるということでコントクトをとってくれた。久しい友人に会うのは楽しかった。同じことを志したこともあり、学びが、新たな発見があった。その友人を"だし"に使ったのかもしれない、一年以上連絡の取っていなかった、担任にも連絡を取った。紆余曲折を経て、こっちが連絡を取っていなかっただけだった。罪悪感があったが飲みに誘った。ブランクを全く気にせず快く了承してくれた。トントン拍子に話が進み一週間後には会うことになってしまった。高校で過ごした思い出の地で。


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私は高校にそこまで思い入れもなかったかもしれない、懐かしさなど微塵も感じなかった。主要駅から一駅はずれるので不便だと思っていた、それくらい。先生はわざわざ予約してくださった。行きつけの店ということらしい。あの4年間(私が入学前にその高校に来たので正確には6年間?)の間に通い詰めたのだろうか。そんなところに誘ってくれるなんて思ってもみなかった。てっきり大衆的な居酒屋に行くもんだと思っていたからだ。はしごもするかもしれない、とかね。そんな緊張を抱えながらバイトで長引いた15分の遅れを連絡して駅についた。


先生も友人も居なかった。

ドッキリかと思った。


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どうやら既に二人は店で待っていたようだ。申し訳ない、面目ない。店の名前を指定され向かった。店は個室の部屋で構成されていた、豪華だ。襖を開けると先生は水色のパーカーを羽織っていた。変わっていない笑顔がそこにあった。


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思い出せばあんまりにも楽しい時間だった。あんまりにも一瞬で過ぎていった。覚えているのは別の場所に居る顧問となぜか直接電話して、試験に受かったことを報告したこと。先生が「教え子と飲む年齢になったんだなぁ」と呟いていたこと。会話は思い出で構成されていたこと。話は延々と続いたこと。気付いたらタバコを3人で吸っていたこと。気付いたら会計は終わっていたこと。いっぱいある。。。。あり過ぎて忘れてしまった。全て肯定して聞いてくれる先生と笑ってくれる友人が好きだと改めてあとで気付いた。

会計の後にタバコを吸って。ちょっと話したこと。なんか哀愁のある終わり方。

先生は特にそこで長居もせず帰ってしまった。二次会もあるのかと思ってた。お礼を言って、動く背中を見送った。


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そのあと思い出の地を友人と巡った。酔い覚ましの名目で散歩して歩きたかっただけなんだろう、自分も。終わったあとの感慨が凄かった。自分も思ったんだ、憧れの人とちゃんと食事したな、とか人生初めてのフォーマルな飲みだったので。


思い出せないけど、永遠に忘れない、忘れたくない思い出になった。ただの食事と飲みですが。


今日はそんな先生の誕生日です(過ぎたけど)どこかで伝わることを期待して、ここに綴りました。

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忘れられない先生

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