見出し画像

意志か忖度かあるいは

いままさに「政治家の覚悟」を読んでいます。

「しおかぜ」というラジオの短波放送を使って北朝鮮の拉致被害者へ呼びかけるエピソードは、森ゆうこ議員&望月衣塑子記者の新書「追求力」(光文社新書)でも読みました(森氏いわく「菅さんはすごく一所懸命対応してくださった」と)。総務大臣として見事なリーダーシップだったと思います。横浜市会議員時代の「横浜保育室」制度も素晴らしい。困っている人、弱い立場の人に寄り添う政策をしっかり打ち出せる人だな、と。

ふるさと納税や裕福な県から地方への税の水平移動という発想、及びそれらを実行に移せる粘り強さにも感服しました。総理が実際にどういうことをしてきたのかあまり存じ上げなかったので、とても勉強になります。エリート官僚の体質や対処法も詳しく書かれていて読み応え十分。いわゆる「縦割り行政」への言及も多く、河野行革相が始めた「110番」は案外総理のアイデアなのかな、と思いました。わかりませんが。

ただ上の記事にもある通り、この新書版は旧版にあった「公文書の管理の重要性」へ言及する記述が削除されているようです。これは総理の意志なのでしょうか。あるいは周辺の人間か出版社が忖度したのでしょうか。この本を読んでいる限りでは、総理なら該当箇所を残した上で言行不一致となってしまった事態への反省と今後に向けた展望を堂々と書くのではないか、と思いました。もしこの本を書いたころ(2012年)の総理なら。

後者のケースだとしたら、例の日本学術会議の一件もあってまた委縮傾向が強まったのかな、と。でも結果的にこうして良くないイメージが広まるわけですから、誰も得をしない忖度ですよね。脊髄反射の保身ではなく公のためにどうするのが正しいかをじっくり考えてから行動して欲しい。それが責任ある立場にいる人の使命です。

尤も第三の可能性として、忖度したと見せかけて、実は反発的な世論を喚起するためにあえて出版社側が削除したという考え方もできます。つまり版元による菅政権への遠回しな批判であると。総理は過去に「あるある大事典」の一件をきっかけに放送法改正の提言をしていますし、NHKに対しても受信料義務化と引き換えの体質改善(受信料値下げ&諸々のコスト削減)を訴えています。前総理と比べてメディア全般からの受けがよくないのは確かです。

権力の横暴を監視することこそメディアの使命。しかしそのメディアが視聴率や売り上げの確保のために暴走し、視聴者をいたずらに不安に陥れる事態も起きています。どっちもどっち。互いにいまいちど足元を見つめ直して欲しい。国民のための闘いはセクシーではなくスマートに、なおかつフェアネスでお願いします。



この記事が参加している募集

スキしてみて

習慣にしていること

作家として面白い本や文章を書くことでお返し致します。大切に使わせていただきます。感謝!!!