見出し画像

曹操を天下へ押し上げたのは

おはようございます!!! 書評行きます!!!

「政治家の覚悟」 (文春新書) 
文藝春秋 2020年出版 菅義偉著 244P

(以下は読書メーターのアカウント https://bookmeter.com/users/49241 に書いたレビューです)

とにかく反・縦割り行政。各省庁の横の連携の無さへの憤りが目立つ。前例主義のエリート官僚を庶民の気持ちがわかる政治家が動かすという理念には賛成。強引な進め方をするけど、それが有効な場合もあるはず。ただ森友問題で省庁の職員を自殺に追い込んだことに触れないのは残念。公文書改ざんは国の信用を揺るがす大事件。安保法制の捉え方にも疑問符。違憲判断は妥当。日本学術会議の意義はともかく、あの一件が報復なら幼稚だし異論排除は全体主義の第一歩だ。あと温室効果ガスゼロは原発推進。インバウンド依存の危険はコロナで証明されている。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

けっこう強権を発動しているので驚きました。NHK改革の件においても、自身とは異なる意見を表明した人を更迭しています。前例をひたすら踏襲する事なかれ主義の官僚を動かし、既得権益を打破していくにはそれぐらいの強引さが必要なのは理解できます。実際そうやって閉塞した状況を切り開いた例もいくつか紹介されていて、素直に素晴らしいと思いました。ただ常態化してしまうと危ないですよね。たとえば安保法制や共謀罪の強行採決とか。

あとやはり新自由主義者だなあと(ブレーンが竹中さんやデービッド・アトキンソンという時点で明白ですが)。この本の中で述べられているインバウンド信仰はコロナの流行を経た現在も揺るがないのでしょうか。総理は秋田県のイチゴ農家出身ということを繰り返し述べられていますし、地方創生への熱意は感じます。でもそれならばインバウンドの前に第一次産業の保護を訴える方が自然なはず。放射能汚染水の海洋放出という話が最近出ていますが、いまそんなことをしたら福島の、いや東北の漁業はどうなるのでしょうか。風評被害を加速させて、観光にも影響が出るのでは? 

新自由主義はグローバルな大企業の優遇と親和性が高く、保護主義は国内で頑張る中小企業への支援と結びつきます。総理の中でこれらのバランスがどうなっているのか気になるところです。

一方で携帯電話の通信料値下げを訴え、その原因である大手三社の寡占状態を憂慮しています。ここでは「健全な競争がなされていない」という理由であえて市場に介入するわけです。確かに携帯料金が下がれば助かります。でもそこまで庶民の暮らしのことをわかってくれているのなら、なぜ消費税を上げて法人税を下げることの是非を疑わないのでしょうか。

いろいろな総理がいるなあというのが率直な感想です。政権の中で歯止めというか「それはちょっと」と窘められる人がいればいいんですけど、異論を差し挟むと冷遇されるから結局イエスマンしか残りませんよね。総理は「三国志」がお好きみたいですが、曹操をあの位置まで押し上げた最大の功労者は彼とは異なる国家観を抱く荀彧だったという事実をいまいちど思い出していただきたい。かといって野党やメディアの批判が大概的外れなのも事実ですからもどかしい。国民民主党に期待しています。




作家として面白い本や文章を書くことでお返し致します。大切に使わせていただきます。感謝!!!