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「営業マン」と「リリーフ」の喜び

1999年、フジテレビで「彼女たちの時代」というドラマが放送されました。

椎名桔平さん演じるエリートサラリーマンがリストラされて関連会社の営業職に転じ、叩き上げの上司から「使えない」と罵倒される場面が印象に残っています。しかもプライドが邪魔をして「何で俺がこんなことを」という不満に囚われている。

実は私も元・営業マンです。その会社に私より学歴の高い人はひとりもいませんでした。だから仕事ができなくて彼らから叱られても「何で俺がコイツらに」と不貞腐れていました。悪いのは結果を出せない自分なのに。

やがて椎名さんは奮起して本気で仕事に取組み、少しずつ結果がついてきます。営業に楽しさややり甲斐を見出し、会社における居場所と仲間からの承認を勝ち取ります。

私もお客さんから初めて「お願いするよ」と言ってもらえたときの喜びをいまでも覚えています。興奮して先輩に「この仕事に就いて良かったです!」と叫んだことも「おまえだからあの人を客にできた」「あのときの気持ちを忘れるな」というリーダーのアドバイスも。

さて、岩貞投手です。

回の頭からマウンドに上がるときっちり抑える。でもピンチの場面で引き継ぐと高確率で打たれる。これは彼のメンタルがまだ「先発投手」のままであることを意味します。

リリーフ投手は厳しい場面で結果を求められる理不尽な役割です。走者を溜めたのは他の投手なのに、ヒットを打たれてチームが負けたら自分の責任みたいに叩かれる。「何で俺が他の奴の尻拭いなんだ」「負けたのは俺のせいじゃない」「叩くならせめて先発させろ」という不満を抱いても不思議ではありません。営業マンになりたてのころの私みたいに。

岩貞投手には、先発への未練を捨てて「いま」に集中して欲しい。仲間のピンチを救い、ファンとベンチが「ナイスピッチ!」と盛り上がる。そこにやり甲斐と喜びを彼はまだ見出していない気がします。だから力を出し切れない。

本来の彼は二軍に落ちるような選手ではありません。「俺はリリーフに向いていない」なんて言い訳をせず、ぜひ与えられた場所で本気になって。その姿が私を含む多くの社会人に夢と希望をくれるから。

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