うつわ屋の店長と美濃焼
美濃焼とは、岐阜県にある東濃地方と呼ばれる地域で製作される陶磁器の総称。https://wa-gokoro.jp/traditional-crafts/Ceramic/minoyaki/
インスタが映えない
転職してから、作った料理を写真で残すようになった。
日々インスタにアップしてイイネを集め料理を続ける元気に変えよう、というわけだ。
コツコツ続けてはいるものの、このところ映えなくなってきた。
見かねた恋人がうつわを新調しようという提案してくれた。
食器屋に行くのは久しぶり、良い器に出会えるか不安だった。
うつわソムリエ
目的のうつわ屋は団地街の真ん中でひっそりと店を構えていた。
再開発でもされたのだろうか。
団地はリノベーションされており、街にはスパイスに凝ったカレー屋や小洒落たカフェが目立つ。
天気は午後から雨の予報、だんだん雲も厚くなってきた。
店に入ると奥のカウンターで作業している店長と目が行った。
何やら作業で手を動かし続けているが、目は店内を回る客を注意深く観察している。
ただものじゃない。
こちらの好奇心がバレたのか店内のどこに行っても熱い視線が追いかけてくる。
観念してオススメのうつわを伺ってみた。
器の組み合わせを次から次へと目の前で披露してくれた。アイデアが溢れてくるようだ。
言葉のセンスもすばらしく、現れては消える様々な組み合わせが日々の食卓にどんな情景を広げてくれるのか、イメージしやすい言葉で歌うように話してくれた。
話の節々に「買わなくてもいいから、色々試してみて」と言うので気になって聞いてみると、その想いを語ってくれた。
組み合わせの数だけ、見える風景がある
うつわは一緒に並ぶ組み合わせの数だけ見える風景がある。
もちろんそのパターンは無数にある。
僕自身いろんな風景が見たいからずっと組み合わせを探していたい。
お客さんたちにも冒険することの楽しさをずっと味わっていてほしい。
思い切って全部変えようと考えているお客様もいる。
でも、全部そろえなきゃって思うと冒険できなくなることもある。
せっかく来てくれたから、たくさん試して楽しんでほしい。
焦らなくていいからうつわとの時間を楽しんでほしい。
完成させるのはもったいない
想いの乗った言葉に胸を打たれた。
うつわへの愛の奥にある人間への愛。
そんな深い言葉を話しつつ見せたいものがあると姿を消す店長。
余韻に浸る時間もなく、すぐ戻ってきてこれまでの研究を発表してくれた。
とんかつソースは錆に効く、洗剤だとジョイはやばい、など豊富な記録写真付きで、瞳はキラッキラに輝いている。
美濃焼と土
色々悩んだ末に茶碗を4つ、平皿を4つの計8枚のうつわを購入。けっこう買ってしまった!
選んだのはすべて美濃焼で岐阜からやってきたものだった。
偶然にもわたしの故郷のそばの街で驚いた、土も人も故郷は一緒なのか。
帰宅後机の上に皿を並べてみると、次はテーブルクロスを換えよう、写真が映えるようにライトはこっちに、晩飯はこんなふうにしたらどうかな、話は止まらない。
うつわを買っただけなのに、ふたりの間で暮らしのアイデアが湧き出てくる。ひとも一緒にいる組み合わせの数だけ異なる風景があるんだね。
良いうつわも手に入ったし、明日も料理を楽しめそうです。
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