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乙女と間の抜けた男、それから石板(読書記録16)


■男は叡智の図書館に、私は病院に

今回読書記録を残しますのは、多崎礼著:「叡智の図書館と十の謎」、です。

ちなみに本日5月12日より私は病院に入院することと相成りました。
旅人は叡智の図書館を目指して謎を解きますが、私は身体の中の謎を解くべく入院するわけです。

なので、パソコンが使えないため、数日間は更新は簡易なものになると思います。
小説なんかも書ければいいのですが、点滴が始まると腕をあまり動かしてると怒られそうです。

■ファンタジーからSFまで

「叡智の図書館と十の謎」ですが、最初の謎から中盤の第五の謎くらいまではファンタジー色の強い作品が続くのですが、第六の謎で現代が舞台、その後は近未来的な世界が続くなど、謎を経るごとにファンタジーからSF的特色の強い作品になっていきます。

個人的には第四、六、八、九の謎あたりが好みです。特に第九の無機質なメカのような存在たちが、ネコの親子を巡って生死を賭した戦いを繰り広げるのには、和むやら心打たれるやら、感情が忙しなかったです。

■登場人物

◯守り人の乙女 旅人に謎を問いかける。謎を解ければ叡智の図書館の封印の鎖が切れ、謎を解くのにしくじれば、命を奪う。謎が解かれ、封印の鎖が切れていくに伴って彼女も自分のあり方に疑問をもつなど、何かを取り戻していく。

◯旅人(ローグ・ログ) 金色の石板を手に、守り人の謎を解く男。途中の謎の回答にしくじり、乙女に心臓を槍で貫かれるが……?

◯魔法の石板 登場人物? 旅人の求めに応じて守り人の問の回答になる映像を再生する石板。意思疎通ができる不思議な石板で、英語でメッセージを表示する。

■感想

謎の回答として英語の単語が示されるのですが、その回答の単語自体が後になってそう生きてくるとは、という使い方をされていました。

叡智の図書館、守り人とは離れているように見える謎から物語が始まって、やがて守り人の乙女に謎の物語が迫っていく構図がよかったですね。

それぞれの物語は西洋風のファンタジーであったり、現代物であったり、和風ファンタジーやSFであったりと、バリエーション豊かです。
十の物語を紡いでそれぞれに特徴を出しているところなどは、さすがだなと思わせられます。

おすすめは第八の謎でしょうか。
未来が予知できる能力をもっていても、未来は変わらないと諦めている男が、出会った一人の女性研究者との交流の中で変わっていく、切ない物語は一読の価値あり、です。

ファンタジーの短編集などをお探しの方には、おすすめの一冊かなと思います。

叡智の図書館とは、守り人の乙女との謎の問答の末に、旅人が見るものとは何か。
ぜひご一読していただいて、確かめてもらえればと思います。

■サイトマップは下リンクより

■マガジンは下リンクより


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