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一読の夢~短編小説集~

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ジャンル問わず、全短編をまとめたものです。 更新は不定期。小説を読みたい方はぜひ読んでみてください。
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2024年6月の記事一覧

四姉妹の話~青(ブルー)~

■他の姉妹の話はこちら■本編 大陸東端の地よりさらに東の果てにある島――イルダリア。そこ…

水瀬 文祐
4か月前
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スタードライバー(第3話)

■これまでの話はこちら■本編 正気ですか、とマリー皇女は整備が完了したスターリースカイ号…

水瀬 文祐
4か月前
111

スタードライバー(第2話)

■前回の話はこちら■本編「これからどうするのです」  皇女のマリーは沼地に半分埋まったス…

水瀬 文祐
4か月前
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菩提樹の下で

 胃潰瘍で数日間入院することになった。  胃の痛みなどはほとんどなく、自覚症状としては胃…

水瀬 文祐
4か月前
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スタードライバー(第1話)

■あらすじ宇宙を股にかけ、世界と異世界を繋ぐスタードライバーのロクは、ある日異世界の皇女…

水瀬 文祐
4か月前
134

金碧の反逆者(碧天の巫女第2話)

■前回までの話はこちら■本編 大薙刀を携えた巫女チハヤの顔を、篝火の揺らめく炎が淡く照ら…

水瀬 文祐
4か月前
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四姉妹の話~黄(ジョーヌ)~

■別の姉妹の話はこちら■本編 こんな晴れた日は、散歩をするにうってつけですな、と老人は杖を突きながら朗らかに言った。石畳を照らす朝日のような温もりのある声の響きだった。  私と老人は連れ立ってサン・パル通りを南に向かって歩いていた。この通りは商店なども少なく、運河に面してもいるので、蒸気船が貨物を運んでいる光景がよく見られる。  私の住むこの街は海に面していると同時に山に囲まれてもいるので、陸路が険しい。街から出る道は、運河を除けば一本しかなく、それが山を一つ越え、二つ越えて

夢の扉

 雨が降る。音もなく、漂うように。  タケルは傘を差すことも忘れ、駅前のロータリーに立ち…

水瀬 文祐
4か月前
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蟹壺(第3話)

■これまでの話 僕は和室の扉に手をかけ、開けるか、と悩んだ。開けるべきではない、という警…

水瀬 文祐
5か月前
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蟹壺(第2話)

■これまでの話■本編 大学の屋上で、遥か彼方に見える海を眺めながら煙草をふかした。  い…

水瀬 文祐
5か月前
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ゆうぐれあさひ~after story~

■これまでの話はこちら■本編 家に帰ると、久しぶりに書置きがされてあった。母からだ。  …

水瀬 文祐
5か月前
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play dead

 もういやだ。おれは死ぬ。  三番目に目覚めた男は、何人目かの女が目覚めると、そう言って…

水瀬 文祐
5か月前
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月を捨てる

今回の小説は下記のとおり、クロサキナオさんの企画に則って書いたものになります。 6月の誕生…

水瀬 文祐
5か月前
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借物の外套

 私は本屋のアルバイトだった。しがない本屋のしがない学生アルバイト。  大学でも地味でぱっとせず、人付き合いのいい方でもないから、当然彼氏はいないし、友だちも少ない。合コンに誘われることもない。マッチングアプリで一度男の人と会ってみたことがあるが、これがひどいマザコン男で、女は嫁で、子どもを産む装置で、労働力と考えているような、前時代的、という言葉が優しい響きに聞こえるほど化石的な思想をもった人物だった。  初対面で経験人数を訊かれたので、ぐーで殴って帰った。ぐーで。幸い男は