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『インヴェンション・オブ・サウンド』書評
この小説は音であふれている。犬の遠吠え、ワインをグラスに注ぐ音、錠剤を奥歯でかみ砕く音、真珠のネックレスをはずす音、録音テープのざらざらした再生音、サイレンやエンジンの音、電飾の電球がはじけ割れる音、建物が崩れ落ちる音、そして悲鳴。
それもそのはず、主人公の一人、ミッツィ・アイブズはハリウッドで音響効果技師をやっていて、「悲鳴」作りにかけては定評がある。音源を売らずにライセンスを売って暮らす彼
書評『インヴェンション・オブ・サウンド』 チャック・パラニューク著/池田真紀子訳
疫病に戦争。明日にでも終末を迎えそうなわたしたちの世界を、最後のひと突きで崩落させるのは、あるいは、人間が腹の底から発するたった一つの悲鳴かもしれない——何かの比喩かと思われるかもしれませんが、あに図らんや。邦訳は十八年ぶりとなるチャック・パラニュークの新作『インヴェンション・オブ・サウンド』(池田真紀子訳)で、悲鳴という名の音は「物理的」に世界を破壊します。
舞台はハリウッド。音響技士とし
<書評>あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集(西崎憲・編)
つい先日「第4回翻訳者のための書評講座」というものに参加させていただきました。これまで書評など書いたことはなく何をどう書いたらいいものやら頭がぐるぐるになりつつ提出した初書評でしたが、講師の豊崎由美さん始め参加者のみなさまから合評いただき大変勉強になりました。以下、講評を受けて書き直したほうの書評、いただいたコメントとわたしの意図、提出した書評の順で掲載します。
*修正後*
<七月の日曜の朝は