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京都伏見のあやかし甘味帖/お酒と甘味のマリアージュに京都の神使(しんし)を添えて

こんばんは。Book Conseillerの都築です。

今回ご紹介するのは、ひょんな事から京都の町屋でシェア生活をおくることになった女性の物語。

日本酒と甘味と神使(しんし)、という少し不思議な組み合わせが面白い作品です。

ジャンル:現代&神道ファンタジー、ライトノベル
著者:  柏 てん 
出版社: ‎‎宝島社 (宝島社文庫)
文庫‎ : 285ページ

『「ぷはーっ、たくやってられかってのよ、なにもかも!」
小薄(おすすぎ)れんげ、二十九歳。
うら若き……といえないかもしれないが、それでも十分に若い彼女が平日の昼間から新幹線でビールを呷っているのには、それ相応のわけがあった。』
京都伏見のあやかし甘味帖 おねだり狐との町屋暮らし〝 より一部抜粋

この物語の主人公、れんげは東京の巨大商社で働くキャリアウーマン。
バリバリ仕事をしていたのに、一日で仕事も彼氏も失ってしまいました。
衝動的に新幹線に飛び乗り、向かったのは京都。
民泊先の家主で大学生の穂積虎太郎とシェア生活を始めます。
観光に出かけたれんげは、見つけた小さな神社にふらりと立ち寄り、子狐の神使(=神のつかい)と出会うのでした…。

先程も書きましたが、この作品の特徴のひとつは『お酒』(日本酒)です。
主人公は大人の女性で、お酒が好きな設定。
表題にある〝伏見゛は主人公が民泊する場所に近く、日本酒の産地だそう。

物語の序盤から京都のお酒や酒蔵(さかぐら)の話や日本酒のバーやカフェが物語に出てきます。

きっとお酒が好きな方もそうでない方も、興味を持ったり、楽しめるのではないでしょうか。

表題のもうひとつ〝甘味帖゛の部分は、本編とは別に「虎太郎の甘味日記」というサブパートにあります。
家主もとい同居人の虎太郎くんが、大好きな老舗の京菓子(和菓子)屋をいそいそとめぐる、というお話になっています。
販売方法や期間が限定されている京菓子も紹介されており、京都に住んでいる友人に教えてもらったような、ちょっぴり得した気分になれます。


最後の表題〝あやかし゛は、れんげと契約を結んだ神使、子狐のクロからつながる面々でしょう。
登場し始めた時は、神使という以外は明かされておらず、ぼんやりしたイメージですが、この巻の終盤で謎は残っているものの、ルーツが分かるお話になっています。

幼い子狐の行動に、れんげは振り回され、怒り、迷惑がっていたのてすが、終盤ある事件を切っ掛けに子狐の自分にとっての存在を見つめ直すことになります。

あやかしに関連する場所も出てきますが、観光地とは違い、京都の神道や神話にまつわる場所だったりするので、京都でもひと味違う味わいが残ります。


この巻で印象に残った部分を挙げると、
亀屋伊織のお菓子、月桂冠旧本社のカフェ、錦市場など。
そして、京都特有の隣家との隙間ギリギリまで建てている描写なども地元感があり、面白い部分でした。


この巻は6つの物語+5つのサブパートで構成されています。
全体ページ数のボリュームは中くらいという感じで、読みやすい文章だと思います。

観光地だけでない京都を知りたい、または興味のある方におすすめできる作品です。

☆5点満点中
読みやすさ ☆☆☆
ストーリーの重厚度 ☆☆
不思議 ☆☆☆☆
京都 ☆☆☆☆
甘味 ☆☆☆☆



◇この作品が好きな方はこちらもおすすめ◇
 ワカコ酒

小説ではありませんが、お酒と聞いて連想したのがこちらの作品。
こちらはお酒とお料理にフォーカスした、お一人様女子の酒場放浪記の作品です。
お酒がお好きな方は、ぜひ読んで見てください。

※お酒は二十歳になってから(^-^)
それと飲み過ぎにはくれぐれもご注意を。


皆様と本との素敵な出会いがありますように。
都築都でした。



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