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弟子入りしてからすること①

弟子入りしてからすることの実技①です。

まずは、面相筆を使って良い線を描けるようになる為の練習をします。これは、もっとも重要な基礎中の基礎です。実際の作品作りの場合、下絵写しの青花を使う場合や、直描き系の作品制作の時に役立ちます。良い線が分かるようになるという事は、名品を理解出来るようになるという事なので、今後の人生に大きく良い影響を与えてくれるでしょう。

面相筆の持ち方の指導、身体の向きや腕の動かし方など細かく指導していきます。道具は、面倒筆、硯、墨(固形墨)、水、半紙です。半紙はザラザラしている裏の面を表にして使用します。練習用の図案を工房で用意しているので、その図案の上に半紙を起き、図案の線を写します。

大切な事は、1枚を同じ調子の線で描ききる事です。細いなら細い、太いなら太い、同じ太さと調子・抑揚の線で1枚を描ききる練習です。

細い伸びやかなハリのある線を描けるようになる事も必須です。これに関しては、良い線と悪い線の違いが分からないとどうしようもないので、本や実際にお手本を見せながら線の違いが分かるようになる事も指導していきます。

墨(固形墨)を使う理由は、適切な濃度を自分で導き出す訓練です。染料や顔料の止めの濃度を調整する時などに役立ちます。水分が多すぎても、墨が濃すぎてもいけません。丁度よい、適切な濃度を保てるように練習します。

変なクセをつけない事と良いクセをつける事も重要です。筆の持ち方や姿勢、筆の動かし方や筆先の整え方などは特に細かく指導します。初めが肝心です。手が汚れないようにする工夫なども実体験の中で覚えて貰います。

手が汚れている状態で白生地を触ったり、制作途中の作品を触れたりしたら大変な事になるので、緊張感を持って行動する指導をします。例えば...手が汚れたらすぐに気がつく事、服で汚れを拭かない、手は常に清潔な状態にする事、机の上は必要なもの以外何も乗せないなど...当たり前のようですが、指導しないと分からない方も多いです。(大変な事=作品にシミが付いてしまう等)

この練習は、月曜日〜金曜日の10時〜18時までしっかり練習したとして、2週間〜1ヶ月は最低続きます。他の練習をしながら、合間合間に練習して貰うので、弟子入りして1年目は時間があれば、この練習はずっとします。眠たくなりますが、早く次の段階に進みたいのであればサボるのではなく、早く上達すれば良いので自主練等、頑張りましょう。

多くの場合、月〜金通って土日の休みを挟むと次の月曜日には下手になっています。その下手になっている事に気がつければ、まだ良いのですが、人によっては下手になっているという事に気が付けない方もいらっしゃいます。これは、少し難しいですね。違いに気がつくという事は、成長をする上でとても大切な事です。現状の自分がどのような状況なのか、なるべく正確に把握出来ると良いでしょう。把握出来ないのであれば、師匠の言う事をしっかり守って師匠の言う通り練習に励むと良いと思います。

日本画を嗜んでいた(学校の専攻が日本画科である)とか、書道を嗜んでいたとか、そういうことは全く関係ありません。今までも、そういう経歴を持っていた方は何人かいらっしゃいましたが、だからと言って「良い線が描ける」という事とは無関係です。場合によっては、筆の使い方のクセがついていて、フォリアで染色を行なう上で必要な筆の使い方を習得することの妨げになる場合があります。指導をした直後は指導した通りになるのですが、少し目を離すと自分が今までしていたような筆の動かし方をし始めます。なので、フォリアに入る前に何を学んでいたとかそういう事は一切関係ありません。「良い線が描けるか、描けないか。引けるか、引けないか。」重要なのはその点だけです。

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次は、弟子入りしてからすること②作品制作の時に実際に使用する絹布を使った練習に入っていきます。



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