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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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#ファンタジー小説

「月の砂漠のかぐや姫」登場人物等紹介

「月の砂漠のかぐや姫」登場人物等紹介

「月の砂漠のかぐや姫」は、今でない時、ここでない場所、人と精霊の距離がいまよりももっと近かった頃の物語です。「月から来たもの」が自らの始祖であると信じる遊牧民族「月の民」の少年少女が、ゴビと呼ばれる荒れ地を舞台に、一生懸命に頑張ります。
 物語世界の下敷きとなっている時代や場所はあります。時代で言えば遊牧民族が活躍していた紀元前3世紀ごろ、場所で言えば中国の内陸部、現在では河西回廊と呼ばれる祁連(

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月の砂漠のかぐや姫 第4話

月の砂漠のかぐや姫 第4話

 幸いなことに、竹姫は、村人みんなに見守られながら、健やかな少女へと成長しました。
 親代わりの翁の目から見ても、その姿の麗しいことは暗い夜の中で草原を照らす満月のよう、その声の清らかなことはオアシスに湧きでる祁連山脈の雪解け水のようでした。
 また、竹姫は、とても人々に愛されていました。竹姫のように「神の子」、「月のお使い」とされる存在は、月の民の他部族にもおりました。でも、一般的にそれらの「巫

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月の砂漠のかぐや姫 第3話

月の砂漠のかぐや姫 第3話

 村の中心にある広場では、大きな篝火が夜を焦がさんばかりに焚かれていました。
 讃岐村に貴霜族の遊牧隊が戻ってきて初めての夜で、村をあげての歓迎の宴が開かれているのでした。
 連れ戻ってきた羊などの家畜は村の外の仮柵に入れられて休息をとっていましたが、遊牧から戻った者たちや村人達は、お酒やご馳走を楽しみながら、大きな声で笑いあったり話し合ったり、また、抱き合ったりして、家族や友人との再会を大いに楽

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月の砂漠のかぐや姫 第2話

月の砂漠のかぐや姫 第2話

 村人から尊敬を込めて翁と呼ばれる老人は、竹林で拾った赤子を白衣に包んで連れ帰り、大切に育てることにしました。
 でも、翁の妻も彼と同じ年頃でしたから、赤子に乳を与えることはできません。そこで、翁は、讃岐の村で最近子供を産んだ女を探し、乳母とすることにしました。見つかったのは、有隣(ユウリ)という名の女性でした。彼女は、讃岐の村が所属する貴霜(クシャン)族の大伴(オオトモ)という若者の妻で、ちょう

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