2023年7月の記事一覧
月の砂漠のかぐや姫 第278話
それでも「母親」の心の中には、「娘に会えるかもしれない」という希望が僅かながらにしても残っていたのですが、濃青色の球体の中に理亜を取り込み、娘とは全く異なるその姿形を目の前にしたいまでは、その様なものは母親の中から完全に消えてしまい、憤り熱いが血脈となって身体中を駆け巡るようになっていました。
これまでの長い間、地下世界という変化のない場所で自分の中の悲しみと絶望だけを見つめ続けてきた結果、半
月の砂漠のかぐや姫 第277話
想像するまでもなく、小さな理亜にとってそれはとても難しいことです。それでも彼女がその場を逃げ出さないで顔を上げ続けているということが、この上もなく大きくて強い思いが彼女の中にある事を表していました。
「お母さんっ!」
理亜は再び大きな声を出して、刺すような視線で自分を見降ろしている母親に訴えかけました。理亜はこの「母を待つ少女」の昔話の当事者である母親に、つまり、遠い昔に絶望のあまり地面の裂け
月の砂漠のかぐや姫 第276話
羽磋と王柔は「母を待つ少女」の昔話を知ってはいましたが、それは「少女」が砂像となってしまい、それを見た「母親」が大地の裂け目に飛び込んでしまう、というところで終わっていました。しかし、濃青色の球体の中で母親の過去を追体験した結果、二人はその話に続きがあったことを知りました。裂け目に飛び込んだ「母親」は死んでしまったのではなく、地下に広がっていた空間の中で濃青色の球体へと変化していたことを、いまで
もっとみる月の砂漠のかぐや姫 第275話
ふっ、と一拍の静寂が生じた後に。
カッ。ピカアッ!
母親の身体を覆い隠していた青い光の繭が砕け、その破片が四方八方へ弾け飛びました。それは、全くの無音での出来事であり、いささかの熱や風圧も伴っていませんでしたが、あたかもそこに青い太陽が新しく生まれたかのような、激しい光の爆発でした。
たちまち、地下世界の奇妙な全景が青い光で浮かび上がりました。
地下世界の地面の上を流れていた川の水は、そ