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芯の通ったまっすぐな精神を持つ、仲間想いのヒップホップが好きだった男。(理容師/美容師)

岩手県、一ノ関市。


18歳の春。
美容専門学校、入学式の日。



学校へ向かう途中、


明らかに、スーツが似合わない、でっかいピアスが耳たぶに開いてる男が歩道を歩いていた。


その横を、僕が車で通りすがり、

『まぁ、こういう系だよなー美容学校は』

と心で思った。



それが彼(以下K)との初対面。



まさか、その時、親友になる奴だとはつゆにも思わなかった。




どうやら同じクラスメイトのようだ。





海沿いで育った男。



気性が荒くて、口がすこし悪いが、
話したら、なんかいい奴っぽい。


ヒップホップが好きで、地元とクルーを大事にして、ウェッサイ(西海岸ヒップホップ)を崇拝していた。


僕の周りには、
高校時代から、
先輩も同級生も、ヒップホップが好きな人間が沢山いた。



そんな環境もあり、
自分もヒップホップに親しみがあった。



そうは言っても、
自分はパンクの音楽に夢中で、それしか考えてない頃。



特に共通の話題はなく、
Kとの音楽カルチャー共有はせいぜいブルーハーツが口ずさめる事くらいだ。


ただ、それでも、
まっすぐで、すぐ熱くなる、
この男とは すぐ気があった。


短気で、男前で、
曲がった事が嫌い。


弱音は吐かず、明るい

人を笑わせる力もあり
仲間を大切にする人間性。



好きなことに偏りがあり、
偏食で、
人の好き嫌いもはっきりしていた。 


気に入らないことがあれば、
不機嫌になるし、
仲裁したり、
されたり、
互いに距離をとることもあった。


それでも、
気づけば、自然に
いつも、一緒に遊んでいた。


ダボダボなラッパーな見た目とは、相反し、
硬派な男だった。


溜まり場になってたKの部屋。


テーブルに、ZIPPO、
セブンスターメンソールに
ブラックコーヒー。



くだらない話をして、毎日、
日が変わるまで遊び、解散。


週末は、安い飲み放題とカラオケ。

パチンコで勝てば焼肉。


金がない日は、炊飯器いっぱいご飯を炊く。

それを仲間で喰らう。笑



そんな毎日。

よく通ってた景色。変わってない。



***


手先が器用で、

編み込みドレッドなど
特殊ヘアの道に進みたかったKは

普通の美容室に興味はなく、

自分で就職先を探し

埼玉熊谷にあるブラックヘア系の特殊スタイルの美容室に就職した。



自分は東京へ。



上京後も、
互いに、忙しかったが、
年に1-2回は会っては昔のように遊んでいた。



結婚式だって、
誰よりも祝福してくれたね。


その後、
Kは
色々な兼ね合いで、
地元に戻りたいんだ。と、

そんな連絡をとっていた。




地元に帰ったあとも、


たまに会い、近況を話してた。


いつも通り。


また会おう!

って、

いつものように互いに手を振って。


またな! って。




その後、

Kとあえることはなかった。






世には、こんな事があるのかと全てを悔やんだ。

なかなか、現実と思えなかった。
向き合えなかった。

まっすぐな男は、どこまでもまっすぐだったんだなって。


いまだ、本当にいないのかと考える時がある。




***




ようやく、今、思い返す。


言葉に出来るきっかけができた。


あれから、だいぶ月日が経った。



僕は、音楽が大好きだ。


だが、
ヒップホップはほとんど聴かない。



違和感なく、
僕の周りでは、
いつも傍らで
ヒップホップが流れていた。



溜まり場で流れてたヒップホップのビート音。


熊谷で初めて見た街並みと
かすかな景色。

ヒップホップ好きで、
地元やクルーを大切にしてたK。


そんな全部を一瞬で思い出してしまう。


情景描写に重ねる記憶。


芸術的トラックに
硬派で繊細な芯のあるリリックで
亡き仲間をうたう詩。


記憶が呼び起こされる。



この人達の曲を聴きながら、
この事を書かずにはいれなかった。


理容師美容師を志した事で

Kと出会い、


裏も表も、

深く、清く、

人間らしさを共有した

濃厚な時間を過ごした

楽しかった記憶の断片が

積み重なる。



今も、

髪を切る仕事を続けていく

原動力のひとつになってる事に

疑う余地はない。



僕らの中で、

彼は

いつまでも生きている。




当たり前に

感謝して生きていくことを

教えてくれたんだよな。



親友、ありがとう。

舐達麻

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