ゆり

放っておくとすぐに立ち止まってしまう心が癒されるような気がして書き散らすものです。この…

ゆり

放っておくとすぐに立ち止まってしまう心が癒されるような気がして書き散らすものです。この世界を好きになれるような美しい言葉に出会えれば嬉しいです。皆さんの投稿される美しいお写真が大好きです。

最近の記事

ツクモガミしゅぎょう~えんぴつのかみさま~

しとしとしとしとしとしとしとしと……。 雨が止むまで 帰れない。 ひとり ふたりと お迎えが来て、 一年二組のまん中で いよいよ ぼくは ひとりぼっち。 目をつむると、お化けが出そう。 目をあけてても、お化けが出そう。 「ころころ、かっつん」 「こつん、こんこんこん」 隣の教室で、音がする。 ぬきあし、さしあし、そーっとのぞいて、見ていると、 廊下に近い机の上で、えんぴつたちが、輪になっている。 まあたらしい、長いえんぴつに囲まれているのは、 ちびた古いえんぴつだ。

    • こんこんさま こんこんさま

       町外れのお稲荷様には、商店街のひとたちが、あれやこれやと、願い事をしにやって来る。  まるの兄さまは、立派な「おけんぞく(稲荷の使い)」だ。稲荷様にも、町の人にもとっても頼りにされている。このまえだって、町内会のもめごとを、ちょっとご神木を揺すって見せて、くるっと治めてしまったんだ。まったく、たいした、りきりょうだ。  それなのに、妹狐のまるときたら、泣き虫で甘えん坊で気分屋。なにひとつ、ひとりでできた、ためしがない。はやく兄さまみたいに、りっぱな「おけんぞく」になりたいな

      • かえりみち

        きょうを引きずって 歩いていたら 夕焼けに あしたがぶら下がっていたよ

        • ブランコ

          誰も悪くないから 夏の空を 蹴る

        ツクモガミしゅぎょう~えんぴつのかみさま~

          夏草

          赤いサンダルに 置き去りにされたのは わたし

          夕日

          鉄橋が東に進んでいると思ったら あなたが夕日に向かって歩いていたよ

          虹色ロケット

          晩ごはんを食べながら、思い出した。 「おかあさん。あした、遠足だった。」 「そういうことは、早く言ってよ。」 『秋のえんそく』 行き先 月 持ってくるもの ①おやつ ②すいとう ③おべんとう ④ロケットは、かくじで用意してください 「どうしよう、お店、もう、しまっちゃったわ」 おかあさんは戸棚やタンスをごそごそ、ごそごそ 大きなハサミとミシンをでーんと出して 「怒られる前に、さっさと寝なさい」 次の朝 ①おやつ、OK ②すいとう、OK ③おべとう、OK ④ロケット、!! 「

          虹色ロケット

          THE NEW COOL NOTER賞

          THE NEW COOL NOTER賞へ参加しました 画像リンクのはりかたがわからないから、参加できてないかもしれないです

          THE NEW COOL NOTER賞

          森の じどうはんばいき

          森で 見つけた へんな じどうはんばいきの おはなし 「だいじなものを、一こ 入れてね」 川で拾った平べったい石!水切りをするのに最高なやつ。 カタン  ことん こないだ捨てた落書きノート 「かっこいいパイロット!」 (あんま、いらないけど) 「だいじなものを、一こ 入れてね」 すっごく良く飛ぶ 紙ひこうき! カタン  ことん 「たからの ちず」  僕よりすっごいへたくそな字だけど、ふむふむ、ぜんぶ歩いて行ける ザリガニがいっぱい釣れるポイント カブトムシの

          森の じどうはんばいき

          すき間の季節②

          ①猫が忘れていった長靴は 軒下で冬の雨に打たれ ②一寸法師が降りたあとのお椀と箸は 空っぽのまま春の小川をたゆたい ③シベリアへ向かう風が取り落とした白鳥は 夏の渡し場にぽつんと浮かび ④赤いサンダルが脱ぎ捨てて行った女の子は 裸足で秋の草原に立ち尽くす ⑤ジュース屋が置き忘れて行った森の自動販売機は 次は何を売ろうかしらとぼんやり考え ⑥赤ちゃんが置き忘れて行ったお母さんは 日がな一日流しの下や引き出しを探すのにも疲れはて ⑦⑧そうこうするうちに百年経ってしまっ

          すき間の季節②

          すき間の季節

           新緑の渡し場に白鳥が一羽、所在なさげに浮かんでいます  朝の涼やかな光が集まって出来たような真っ白い羽は、 あたりの空気まで明るくしているようでした  まっとうな冬鳥であれば、とっくにシベリアに渡って、皆で子育てしている時分ですから、岸辺に住まうものたちは、皆で揃ってけげんそうに、彼の様子を眺めます 「ほら、子どもも育てずに、のんきなものだね」 岸の野茨たちがこそこそさわさわ、噂します 白鳥は、聞こえたようでも聞こえないようでもありましたが、ただただ、岸から伸びる柔

          すき間の季節

          ゆめバス

          ストロベリームーンの明かりを頼りに走るのは、星々を廻る巡回バスだ。今夜は、ゆめバスツアーの晩。会いたい人の夢を訪ねる、特別な夜の遠足なんだ。 キリンの星で乗り込んで来たのは、子どものキリン、ジルだった。 まちの小さな動物園で、初めて生まれたキリンの赤ちゃん。それはそれは大事にされていたんだけれど、ひどく冷え込んだ冬の朝、ジルは凍えて死んでしまった。 誰よりジルを可愛がっていた飼育員のヤマシナさんは、ジルの首にしがみついて、ボロボロ涙をこぼしたんだ。 熊の星で、破けた耳を気

          ゆめバス

          24 南瓜の花と 糸瓜(へちま)水

          焼け跡に祖父の青春 花南瓜 じいちゃんが息を引き取ったのは朝の七時十五分ちょうどだった 定年まで毎朝家を出ていたのも七時十五分 じいちゃんらしい旅立ち方だ ばあちゃんは精一杯背伸びして、ベッドに横たわったじいちゃんに呼び掛ける ありがとうね がんばったよねえ ばあちゃんの立っているほうの目から一粒、涙をおとして、じいちゃんは最後の息を吐いた 夏休みの宿題に飽き、台所にいくと、ばあちゃんがいた。綺麗に洗ったジャムの小瓶を並べて、一升瓶から何やら移しかえている タロッ

          24 南瓜の花と 糸瓜(へちま)水

          25 隙間の季節

          新緑の渡し場に白鳥が来ている まっとうに渡る冬鳥であれば、春先には渡りを終え、今頃シベリアで子育てに勤しむのであろう 彼はその豊かな白い羽をきちんと畳み、所在なさげに岸から伸びる桑の若葉をつついていた 遠くの茂みから、時折雉が鳴く 隙間の季節 暑くも、寒くもない。明るくもないが、暗くもない。死にたいわけでもないが、生きているには物足りない。ひととおりすべて揃っているようで、なにもない。寂しくはないが、ひとりだ。 人生の節目節目にも、この隙間の季節というのは到来する

          25 隙間の季節

          23 ピザ王

          ここは、ピザ国 私は、ピザ王 毎朝、国いちばんのピザしょくにんが 国でいちばん上等な小麦をひいて 国でいちばん真っ赤なトマトをならべ 国でいちばん香りのいいバジルをちらし 国でいちばんすてきなチーズをたっぷりのせたら 国でいちばん大きな石窯で 大きな大きなピザを焼くのである 大きな大きなピザが焼けたら 大きな大きなピザに乗り 国ぢゅうを見て回るのである (各地に「ピザポート」) ピザ王はぐるんぐるんと飛んでいく うまくやろうと調子にのって ピザをくるくる、くるくるぽ

          23 ピザ王

          22 ちび竜と わたし

          竜神様なんていうから、どんなおっかない姿かと思うでしょう? わたしの竜神様は、右手に乗るほどのちびっこ、ちび竜 「どんな立派な竜神も、最初はみんな、ちっちゃいんだ」 小さなうろこをカチカチ振るわせて、ちび竜は、言う こころがふわふわして、どうにも落ち着かない、春の日 夕陽も届かないエニシダの茂みに うんとちいさく、まるくなって震えていたのを、 見つけたの、わたし 今朝から香取さまのお手水のぐあいが良くないって おとなたちがさわぐから わたし、あなたがどこから来たのか、す

          22 ちび竜と わたし