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虹色ロケット

晩ごはんを食べながら、思い出した。
「おかあさん。あした、遠足だった。」
「そういうことは、早く言ってよ。」
『秋のえんそく』
行き先 月
持ってくるもの
①おやつ ②すいとう ③おべんとう
④ロケットは、かくじで用意してください
「どうしよう、お店、もう、しまっちゃったわ」
おかあさんは戸棚やタンスをごそごそ、ごそごそ
大きなハサミとミシンをでーんと出して
「怒られる前に、さっさと寝なさい」

次の朝
①おやつ、OK
②すいとう、OK
③おべとう、OK
④ロケット、!!
「おかあさん、これ、どこで買ってきたの」
「家中の布を縫い合わせて、作ったのよ。うまく、飛ぶと、良いんだけれど。」
校庭には、みんなが持ってきたロケットが、いっぱい
「それでは、ロケットに乗って、一列にならんでください」
たてに、よこに、ならんで飛んでも、ぼくのロケットが、いちばん目立つ。
「きれいなロケット、どこに売ってたの?」
「えっとね。ひみつ。」
(隕石に看板が立っている)
「つき ここをまっすぐ」
「もうすぐ つきに つきます!」
月でも、ぼくのロケットは、ひょうばんになった。
「ステキなレインボーね。ワタシのロケットと、コウカンしませんか?」
「柔らかくて丈夫で、乗り心地がよさそうだね。」
「サンキュー。サンキュー。」
月の公園で、おべんとうをたべて、月の動物園で、お土産を買って
「晩ごはんまでに帰りますよ。」
たてに、よこに、ならんで帰る、帰り道でもいちばん目立つ、お母さんの虹色ロケット
(隕石に看板が立っている)
「地球 ここを直進」
「たいきけん ご注意ください」
たいきけんに入ると、ぼくのロケットから、一枚ずつ、布がはがれはじめたんだ。
色とりどりの小さい布が、ロケットの後ろに飛んでいく。
「すごい、すごい!虹色ロケットから、虹が出てるわ」
「どうしよう、どうしよう。お母さんの手作りロケット、壊したっていったら
おこられるかしら。」

ブワーーーーッ
虹色ロケットから虹色のパラシュートがそらいっぱいに開いたよ

地上では、お母さんが、望遠鏡を覗きながら待っていた。
「いざというときのために、パラシュートをつけておいたの。無事に帰れて、良かった、良かった。」

晩ごはんを食べながら、おかあさんに月のおみやげをあげたんだ。

お父さんが、決まり悪そうに話し出した。
「おかあさん。そういえば、明日は火星に出張なんだけど…」
「そういうことは、早く言いなさいよ!」

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