小さなご馳走 その9
お料理と名乗るのも憚られるけれど、
食べると幸せを感じるおかずたち。
豆腐サラダ
実はこれ、
私の大切なお料理のひとつだ。
私が子どもの頃から自分の母親に作ってもらっていたサラダだからだ。
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結婚してから、何かの折に、急に
「あぁ、実家にいたときに食べていたあのお料理が食べたい!」
とふと思い出すことがよくあった。
味も然り、このお料理を食べていた時の家族の光景までもが甦ってきて、その光景ごとなつかしく思って無性に食べたくなるのだった。
母親のようには要領よく、上手にはできないけれど、
何度か作っているうちにだんだん母親の味に近づいて行っている気がしてうれしいし、
自分の子どもたちにも、これがおなじみの味となって、浸透していってくれているのもうれしい。
お料理を作ることや食べることの喜びは、こういうところが原点なのではないかなと思う。
料理本を見て何かを意気込んで作ろうとするよりも、またあの味に出会いたいと思って作る方がずっと気持ちが入る気がするし、
あの味をまた楽しみたいと思って食べる方が、食べたときに感じる幸せや満足の度合いが高い気がするのだ。
つまりは、心の奥深くを揺さぶる、大切な宝物だ。
お料理を食べて笑みがこぼれたり、ふと泣けてきたりするのはこういう瞬間ではないだろうか。
私も母親にしてもらったように、子どもたちにもそういう襷を少しでもつないでいけたらと思う。
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本当の母親のレシピには、ここでしおもみした生の玉ねぎスライスが入るのだが、子どもには辛いと思って今はまだ入れたものを作っていない。
このサラダに玉ねぎを入れられるようになったら、
「子どもたちこんなに大きくなったんだな」とふと思ってぽろりと泣けている私を、想像してしまった。
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