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朱夏から白秋へ①

今回は読書の秋2021で、幻冬舎さまから頂いた
『中国経済の属国ニッポン』
を解説していこうと思います。

内需主導型経済へ

皆さまもご存じのとおり、
2020年以降から世界の動きは変わりました。
中国もまた、旺盛な消費意欲をネット通販で発散させることで、内需主導の経済にシフトしつつあります。


アメリカの感謝祭に似た『独身の日』


中国では毎年11月11日は『独身の日』(光棍節)
とよばれ、ネット通販各社が
セールを行うことで有名です。

米国のように家族と食卓を囲むのではなく、
買い物イベントに転じたのは
中国が長く一人っ子政策が続き核家族化が進んだ
という経緯があります。
独身の若者とネットの相性は抜群ですから、
売上高は毎年うなぎ登りです。

このセール期間中の
ネット通販大手、アリババグループの商品取扱高は
8兆円に迫ると言われています。
日本のネット通販大手、
楽天の年間取扱高は4兆円なので、
独身の日の約10日間で楽天年間取扱高を
はるかに超える計算になります。

商品取扱高…売上額+仲介取引額

ちなみに中国では独身というと
結婚もしていないし恋人もいない、という状態です。
恋人がいる方は、还没结婚【まだ結婚していません】
と言いましょう。


中国のAIスーパー


先ほど取り上げたアリババはネット企業ですが、
AIを活用した地域密着型スーパー
『盒马鲜生』(フーマー)を展開しており
2020年9月時点で222店舗、
2600万人の利用者を抱えるまでに成長しています。

見かけ上は従来型のスーパーマーケットと変わりませんが、中身はまったく違います。
セルフレジは当然ながら、
棚に陳列している商品に
専用アプリの入ったスマホを近づけると
産地や流通経路、食品安全検査の過程が
写真付きで表示されます。


ここまでは欧米諸国でも導入されており、
珍しいものではないですが
世界が注目するのは店舗運営の根本的な仕組みの違いです。

日本でも浸透しつつあるネットスーパーは、
あくまで実店舗主体の『店舗 兼 倉庫』
という体制ですが、
フーマーは『倉庫 兼 店舗』なのです。

IT化された巨大倉庫で、
配送業務のついでに店内販売も行っている
と考えた方がいいかもしれません。
注文された商品は
店内の天井に張り巡らされたレールを通って
配達員に届けられ、3キロメートル圏内であれば
30分以内に自宅に配達されます。


商品の売れ行きはAI上で管理され、
生鮮食品は翌日まで売り越さない
というオペレーションを確立しています。
生肉のパッケージには『不卖隔夜』(当日売り切り)
シールが貼られており、顧客の安心感を高めています。



すべてはコピー製品から


モノ作りの王道は、
先行する工業国の製品を模倣することです。

かつてイギリスは
質の高いオランダの工業製品をコピーし
安価で粗悪な製品を大量に製造することで
工業国としての地位を確立しました。

『安かろう、悪かろう』の代名詞だったイギリスが
やがてオランダを追い越し産業革命を成し遂げます。

戦後日本のモノ作りも模倣から始まっています。
トヨタは戦後、米国車を購入して
徹底的に模倣することからスタートしました。

1950年代に米国へ輸出したトヨタ車は
ハイウェイ入り口の坂を登れず
米国人の失笑を買いましたが、
今の時代に日本車の性能や品質を笑う人は誰もいません。



中国が日本製品を大量に模倣しているのを見て
私たちが笑っている間に、
アリババが楽天をしのぐ勢いとなり
見たこともないスーパーマーケットの形態が
生まれているのです。

1980年代の日本は今の中国人と同じように、
世界各国で猛烈な勢いでショッピングをしていました。
当時の新聞には、日本人観光客の横柄な振る舞いが顰蹙ひんしゅくを買う記事がたくさん掲載されています。

ホテルのテレビに日本の番組が映らない
と言って大騒ぎしたり、
購入した指輪の石がなくなったからといって
旅行代理店に現地の店に返金させるようゴネる
といった話がありました。

夏目漱石『三四郎』でも冒頭に
食べ終わった弁当の容器を
汽車の窓から投げ捨てるシーンがあるように、

日本もかつてはそのような国だったのです。


***



現在、ハイテク技術に関しては
日本は中国の後を追う形です。

今後、追いつくことはできるのか、
次回もまた書籍の力をお借りして解説していきます。



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