2023年4月の記事一覧
連載小説「超獣ギガ(仮)」#13
第十三話「記憶」
昭和九十九年十二月二十八日。
神奈川県横須賀市。
閉め切ったカーテンの隙間から、白い光線が室内へ切れ目をつくっていた。かすかな風に布地が揺れる。冷気が忍び込んで、乾いた髪を揺らした。足元に冷たくなった白いシーツ。毛布を掴んで、引き上げた。膝を抱くように小さくなって、スマートフォンで日時を確認する。いつから眠っていたんだっけ。何日経っただろう。まさかとは思うけど、ひょっと
連載小説「超獣ギガ(仮)」#14
第十四話「空洞」
同日、昭和九十九年、十二月二十八日。
東京都千代田区。帝国ホテル跡地から、国会議事堂、その周辺地域の地下に建造されていた大質量空間。通称、大空洞。
「なんだこれは」
見上げる。その視線は天井に到達しなかった。しかし初春を思わせる程度に、照明が行き届いてもいた。どこを見ても、ぼんやりと白く霞む。何でできているのか、ぼんやりと光を放つ壁。視程可能な距離は全て白い。地下空間を
連載小説「超獣ギガ(仮)」#15
第十五話「星屑」
「お待たせ」
ようやく開いたドアから、花岡しゅりが笑顔を見せた。口角を上げ、にっこりと笑みを浮かべているが、しかし、それは作り笑顔だった。いつものように、光を伴う彼女の姿ではなかった。背に影を背負っているように重々しい雰囲気を連れてさえいた。
しかし、顔色は悪くなかった。頬はかすかに赤みを帯びてもいた。梳かしていないらしい、どころではなく、数日はろくに風呂にも入らず、洗いも
連載小説「超獣ギガ(仮)」#16
第十六話「月光」
どうして憶えているんだろう。
しゅりはその記憶がよみがえるたび思わず首を振る。目をしかめて、奥歯を噛みしめる。忘れようとするたび、思い出してしまう。振り返ると追跡に気づく影と同じなのかもしれない。並走する影は、体から離れることがない。
影。足下から伸びて、離れずについてくる影。
十二月下旬の冷たいアスファルトに鳴る足音。
忘れたい。忘れたくない。何度、揺れただろう。し