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ずくとは?

かつてフルタイムで働いていた頃、年に数回、手作りフリマに出店していた。

学生時代からテニスウェアなど着るものは自分で作っていたし、職場には陶芸小屋があったし、布が好きで集めたり織ったりはしていたので、何かを作ることは日常だった。作るだけでも充分楽しいのに、それを手に取ってお金まで払っていただけるなんて。

仕事の成果が分かりにくい当時の仕事に比べて、目に見える形になって、さらに反応と評価があれば達成感が倍になる。私に取っては新鮮な、日頃のストレスも吹っ飛ぶ、ワクワクする遊びの時間だった。

結城紬の古布で作ったスタンドカラーのシャツを買ってくれた男性が、新規開店する店で着るからと、さらに2枚注文してくれたこともあった。

仕事を続ける事に迷いが生じ、では何をするのかとあれこれ考えた時、そんなことが頭をよぎった。

天職とまではいかないまでも、自分に合った、やり甲斐のある仕事と思っていたのが、揺らぎ出してから、かなり長い間逡巡した。

人に指示したり、されたりする仕事は、今の自分には向いてない。全て自分の裁量で、基本ひとりで出来る職人になろう。逡巡の後の結論だった。

というわけで、しばらくは非常勤で週三日程仕事を続けながら、勉強を始めたのである。

そうそう、Zukuという工房名の話でした。

昼は仕事や勉強があったので、物作りは夜なべになる。部屋のあちこちに糸クズ。夜行性で、クズ(→ひっくり返してズク)だらけ、ということで、Zuku。ズクはミミズクの古語である。 

語の響きが気に入っている。勢いズク、納得ズク、色気ズク…いいんじゃないの、と言ってくれる人もいた。

イベントで長野からの出展者と隣り合わせた時、名前の由来を聞かれた。信州の方言に、"ズクのある仕事"、"ズクを出してやれ"、"ズク無し"等の言い回しがあるという。

"手間を惜しまない"というような意味と聞いた。

そんな言葉は知らなかったけれど、まあ、悪くはなかったな、とホッとした。

以来、聞かれる度に、嬉々として由来を語る。地域によってニュアンスが微妙に異なることもあるようだが、概ねそのような意味らしい。

八ヶ岳・自然文化園でのクラフトフェアの開会式は、主催者の挨拶が必ず、「では皆さん、今日はズクを出していきましょう」で締められた。

Zukuという名は、つまり、気負ったつもりは毛頭なく、宵っ張りミミズクのズクに、手間を惜しみません、という素敵な意味が後からついてきたというわけである。

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当時、中学生だった姪が6種類の文字と絵を、消しゴムで彫ってくれた。絵入りは紙袋やカード、文字は布バッグのロゴとして使っている。









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