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【五里霧中のうどん】

〈 ちょろ⑦ 〉
もうそろそろ
なにがしかの
仕事に就かないと・・
ぷー太郎でふた月目なのだ。
4匹の猫たちの
おまんまが買えない。
※(注)
最初は、先住のミー、
ちょろ母さんと子5匹
合計7匹でしたが、
3匹は養子に出しました。

これじゃあ いかんと
職安へいった。
希望する仕事は
無かった。
いや、色々あった。
しかし、年齢制限に
すべて引っかかって、駄目。
少し失意のなかの帰路
ディスカウント・ショップで
5束249円の乾麺うどんと
2キロ558円のキャットフードを買って帰る。

安うどんは家内の出汁づくりに期待するしかない。
膝が悪い家内を 
もうこれ以上
働かす訳にはいかない。
パート、家事、そして
いまは亡き父母の面倒見。
十二分過ぎるほど
頑張ってもらったのだ。
感謝しかない。

さて、帰宅すると
家内と猫たちが待っていた。にゃあにゃあ鳴いて騒ぐなか、私の状況を察した家内が気丈に笑顔で言った。
「晩ご飯はうどんね!」
どうしようもない、
コシもコクもない乾麺。
美味くなくても
お前のせいじゃない。

家内がたぎるお湯の中で
うごめく麺と格闘していた。
麺に粘りが無いから、
ぶつぶつに千切れていた。
頭を傾げ、
唇を噛み締めて、
まぶたにいっぱい
泪を溜めていた。

昆布といりこの出汁が効いた
ネギと卵入りの
千切れちきれのうどん。
一気にすすり、
いや、切れ麺を吸い込んだ。
胃袋に落ち、熱く沁み入り
なんとも言い様のない
五里霧中の
深い味がした。

初稿/2022.05.16
改稿/2022.05.18


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