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「すずめの戸締まり」私的感想文という名の雑語り

 霜月も末ということで日比谷に足を運んだ。4階からみえる景色は壮観で帝都のビルヂングから皇居の緑までをこれでもかと堪能できる。さて、今回ばかりは観ておかねばならないものがあった。新海誠「すずめの戸締まり」この名を知らない人は劇場にそもそも来ていないだろうから、必然的に夕暮れ時のIMAXは薄らファンの期待とえも言われぬ感情とで入り交じっていることだろうというところだった。

 あまりに久々の映画体験だから、予告の長さにも懐かしささえ憶えたが、それはともかく、本編がいよいよ始まっていく。

!以下個人的感想という名のネタバレ!

 戸締まりという題目のとおり明らかに扉の開閉に関連して物語はすすんでゆく。九州の片田舎から出発して、四国、神戸、東京、東北──
 見覚えのある光景や毎度ながら美しい列島の情景が映し出されていく。本作の大テーマは自然災害と人間、というところなのだろうが、まさに平成年間に私たちが味わったさまざまな記憶が呼び起こされていく。ある人は神戸、ある人は三陸を想ったのだろう、まさに現代史の物語である。

 閉じ師の青年と半ば強行列島縦断の片道家出旅では、行く先々での出会いや寛大すぎる助け舟に救われながら、私たちの住む日本を自然災害、おもに地震から守ろうとしていく。劇中、重大なテーマとして要石が取り上げられるわけだが、まさに現実にも存在する地震をおさめるとされる石である。これらをめぐって、常世と現世の往還、あるいは死者との対話が繰り広げられ、最終的には嘗ての子ども時代の鈴芽と通ずることによりひとまず安堵して収束する───

 とまあ、このような大変おおまかな印象を抱いたわけだが、これは神と奉仕者の物語でもあるのだろうと感じた。前近代までの日本でも実際にこのような世界観な近しいものがどこかにあったのではないか、とまさにそう感じさせてくれる立派な作品であった。もう一度といわず、何度も見返したくなるのは必然だ。

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