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2023年、あと6分の5:されど桜の花道をゆけ

 驚くべきことに、2023年もそのスタートから6分の1が終了してしまった。

 あまりの忙しなさに、梅や桜をも逃してしまいそうになる。それでも、ことしはまだ6分の5ある。

 思えば、令和が幕を開けてから、世界はずいぶん遠くに来てしまったように感じる。それでもまた、河津桜は何事もなかったかのように咲き誇り、坂道をゆけば、その足もとは花びらでいっぱいになっていることだろう。

 個人的なことを云えば、昔から春という季節は素直に好きな時期ではなかった。入れ替わりから夏の暑さまでがもうすぐだと知って二十年余、秋冬の侘しさくらいしか四季の取り柄なぞないと確信する一方であったが、いまになれば、その四季循環のリスタートたる春季の重大さもまた如実に実感する。

 観桜はなにも満開の花弁を観るだけにとどまらない。その木々の淡い色を構成するひとつひとつの小さな一片が、悠悠と地に落下していくみごとなまでの潔さこそ、国花たる桜のすばらしさであろう。

 一瞬の栄華に人人は釘付けとなる。その脇を追い越していくように、坂道をのぼり、裏道の小梅に別れを捧げて、また短き春をとじる迄である。

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