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【プロの仕事とは。Vol.2】文化の日に思うカルチャーってなんだ?松浦弥太郎さんを通して知った、知識の量ではなく、知識への愛。そして、物事への深い眼差し。

11月3日は文化の日。
文化=Culture、カルチャーということで僕の知っている方の中で最もカルチュアルな方である作家の松浦弥太郎さんを紹介したい。弥太郎さんの仕事は幅広い。「しごとのきほん くらしのきほん100」や「仕事のためのセンス入門」など多数の著作、中目黒の古書店「COW BOOKS」代表、「暮しの手帖」元編集長、そして最近は、企業の役員を務めながら、DEAN&DELUCAマガジンの編集長でもある弥太郎さん。

弥太郎さんとは電通時代に出向していた大手アパレル会社で一緒に仕事をさせていただいた。大規模なTVCMや新聞広告の商材にはならないけど、こだわり抜いて作っている一見、地味な洋服の数々を毎週、弥太郎さんの紡ぎ出す物語とともに100着(!)紹介していく「LifeWear Story 100」という案件だった。僕は弥太郎さんの担当編集のようなものをやらせてもらっていた。毎週どんな洋服をピックアップするのか、実際の洋服をデザインしたりパターンを作っている社員さんに繋いで一緒にディスカッションしたり構成を考えたりさせてもらっていた。

連載はその後、「着るもののきほん100」として書籍化した。
僕の本にはドッグイヤーが群れをなしている。

この「LifeWear Story 100」がすごいのは上記の通り、物語という形を取りながら毎週違う洋服を取り上げているところだ。「僕」がアメリカに飛び立ち、そこで様々な人と出会い古本蒐集を商売にしながら、そして「アシャ」という女性に出会い恋をする・・この中のどこに洋服が出てくるんじゃいという話なのだが舞台であるサンフランシスコやニューヨークの空気感に毎週出てくる洋服がぴったりマッチするから不思議だ。僕の成長とともに洋服の描写が読む人の好奇心をくすぐっていく。ある回ではベルトの巻き方に父の教えを思い出し、ある回では旅人に旅の必需品としてシャツの大切さを説かれていく。

有り体に言えば、最高の仕事だった。かなりの頻度で弥太郎さんに会っていたが会うのが楽しみでしょうがなかった。弥太郎さんの深い教養に触れることができたから。そう、「LifeWear Story 100」の主人公である「僕」は弥太郎さんそのものだ。若い頃に単身でアメリカに渡り古今東西の古本=古今東西の文化に触れてきたからか弥太郎さんの語る言葉には色々なブンガク/カルチャーの香りがした。でも、それは知識の量ではなく知識への愛だ。本当に好きでインプットしたからこそ出るあらゆる事象に対する目線の優しさやアウトプットの独特の感性を感じた。それは洋服だけではなく、写真や車、料理、そして生き方まで弥太郎さんのフィルターを通すとこうも世界は芳醇なのかと毎回、感じ入っていた。何より弥太郎さんの哲学を感じていた。真似したくても出来るものではない。

月日は流れ、出向期間は終わり電通に戻り、そして僕は起業した。弥太郎さんに報告したら何かできることがあれば・・という話をいただいたので早速、僕はインタビューの依頼をした。快く了解をいただき、とてもとても嬉しかった。テーマは「スキンケアを通して考える素敵な男性とは」。弥太郎さんは「より良く素敵に生きる」ことをひとつのテーマに執筆活動をしていると思っていた。せっかくスキンケアの会社を興したのだから、それらのことを交差させたテーマにしたインタビューを商品サイトに載せたかった。

ここをクリックすると読めます。全2回の1回目です!

インタビューは僕の想像を超えて濃く深いものになった。スキンケアとは他者のための健康管理であり礼儀である、という話は慧眼だったし、そこから話は哲学を持つことの重要性にまで発展した。スキンケアを通して縦横無尽に話が展開していくので一読の価値があるインタビューに仕上がったと思う。
ここにも弥太郎さんが持っている文化が、物事への眼差しが、そして愛が満遍なく溢れかえっていた。より良く素敵に生きる、素敵な男性になるためのヒントが散りばめられている。弥太郎さんの話を聴きながら、この人には敵わないなぁと思った。全2回あるので、是非とも読んでほしい。

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今でも僕は仕事で立ち止まったり悩んだりしたときに「LifeWear Story 100」をパラパラめくりかえすようにしている。そうすると必ず新しい発見があるから。毎回、書かれている言葉にハッとさせられる。言葉に勇気づけられる。大切なものが何か再認識させられる。ここで僕の琴線に触れた言葉を列挙するのはやめておく。弥太郎さんの物語があっても言葉なので是非とも本を手に取って読んで感じてほしい。

弥太郎さんとの仕事で得たものは数知れない。いや、数の話ではなく深さの話だから底知れない、と言ったほうが正確かもしれない。なんだか怖い感じになってしまうけど。
一番大切なのはどれだけ深く愛するかということ。今の自分の仕事に当てはめてみる。自分の商品をどれほど深く愛しているか、男性の清潔感や自信を高めるという夢に対してどれほど深く想い詰めているのか、、まだまだ足りない。まだまだ浅い。もっともっとできることがあるはずだ。BespokeWashという洗顔料ブランドが多くの男性に愛されるものになることこそ、弥太郎さんへの恩返しになると信じて頑張る。