アトピーとバリキャリOLが本気で向き合ってみた【1日目】
「肌汚いから、鬼ごっこ入れてあげない!」
この一言が、私の人生を変えた。
小学校2年生の時だ。
私にではなく、同じ小学校でアトピー持ちの友だちに、クラスのボスっぽい子が浴びせた言葉だ。
このとき、はじめてアトピーの私は、
排除されるという恐怖感に襲われた。
どうすれば仲間はずれにされないか、
必死に、必死に、人に好かれようと生きた。
アトピー性皮膚炎。
私はこの相棒と、25年間生きてきた。
何度、この相棒を心の中で殺してきただろう。
何度、「アトピーじゃなければ」と自分の人生を悔やんだだろう。
何度、私より太くて可愛くない人を見て「私じゃなくてあの人がアトピーだったら良かったのに」と思っただろう。
ゴミみたいな性格だと、我ながら思う。
というか、他の人も思うだろう。
きっと、いつかそんな言葉を心の中で浴びせていた人たちに、呪われると思う。わかってる。
でも、思ってしまうのだ。
幸いなことに、今までアトピーだからという理由で虐められたことはなかった。
幼少期はカトリックの女子校で12年間育った。
博愛主義を刷り込まれる教育において、
見た目で人を差別するというような行為は、
生まれにくかったのだと思う。
本当にありがたい。アーメン。
ただ、アトピーだからという理由で、
自分自身が好きになれなかった。
だから、何者かになろうとして、
ミュージカルの部活に入った。
その時間は私の心を少しずつ変えていってくれた。
アトピーの私でも、演技中は、
アトピーではない普通の人になれた。
それが私の心を少しずつなだめていった。
それなりに恋もしたし、
それなりに友達もできた。
アトピーだからという理由で、
他人から何かを言われたことはない。
でも、やはりアトピーは世間から少し怪訝な目で見られていることを感じる。
わたしはアトピーであることを、
基本的に人には言わない。
いったところで、だ。反応がしづらい。
そうすると、時々、悲しいことばをきく。
「アトピーで肌がかさかさの人が隣に座ってきてずっとぽりぽり掻いててさー、嫌だったなー」とか。
私からすれば、アトピーって掻きたくてかいてるわけではないんだよ!気持ちを落ち着かせるためだったり、いろんな意味があるんだよ!と言いたくなるが、何も言えない。
排除される恐怖からだ。
そんなとき私は、勝手に裏切ってしまったような気分になって、罪悪感でいっぱいになる。
一生わたしは、嘘をつくのかと。
つまり、私は、アトピーであることを、
ずっと隠し続けている。でも、しんどい。
隠し続けていることがコンプレックスなのか、アトピーがコンプレックスなのか、分からなくなった。
最近、一人暮らしをはじめた。
少し風邪気味だったので、風邪薬を買おうと近くのスーパーに寄った。
そこはビジネスパーソンがよく住む場所で、
24時間営業、薬局も併設しているスーパーだ。
食料品のレジに持っていくと、
「あーこれは薬局のレジでしかお会計できませんね」と言われてしまい、仕方なく薬局のある2階へ。
レジに葛根湯と総合薬を持っていくと、「呼び出してください」と書かれたふだと、その横に呼び出しボタンがあった。
「もう、いつかえるんだよ。。」
とボソボソ文句を言いながら、ボタンをポチっとおすと、白髪のおじいちゃんが、てくてくとこちらへきた。
チラッと商品をみるなり、「この2つは一緒に飲んじゃダメですよ」と言われた。
親切な人だなあと思って、
「そうなんですね、ありがとうございます!」
とにこやかに伝えた。
すると、おじいちゃんが一言。
「失礼ですが、アトピーですか?」
うわー、きたと思った。
「はい。」と答える。
すると、おじいちゃんが話し出した。
「アトピーであることは、変わらない。でも、やるかやらないかで、変わることもある。アトピーの人は、分かってるのに、身体にええことを実践しない人が多い。勿体ないと思うねん。お嬢ちゃん、たぶん、2.5やわ。いま。肌きれいになったら、5。」
この空間に名前をつけるなら、ぽかーん。だ。
続けておじいちゃんは、話す。
「アトピーを持ってる人の子供は7割が、その遺伝子を持って生まれるねん。いま、お嬢ちゃんがアトピーに対する知識を持たへんと、おんなじことが子供におこった時に、またおんなじようにステロイドでお医者さんにかかる。でも、それは、根本的な解決ではないねん。まずは、胃から綺麗にしていかなあかん。ほんまに、おれは、勿体ないと思ってんねん。」
何も言えなくなる。
「まあ仕方ないか、で終わるか。やってみるか。それだけやねん。」
なんだこのおじいちゃん。とムッと思ったが、
なぜか妙に、話したくなった。
「まずはな、ハトムギ茶とどくだみ茶や。
ハトムギは乾燥に、どくだみ茶は毒素に効く。あとは豆乳やな。肌はタンパク質でできてるから、大豆取っておいたほうがええねん。ここやったらトップバリュの豆乳はオリゴ糖が入ってるからあまくてのみやすい。下行ったらあるわ。どうせ、朝ごはん抜き、昼ごはんは麺とかパスタ、夜はお酒、スイーツやろ?あかん、一番あかん。朝ごはんはせめて、バナナと豆乳とっておくこと。あとは、海苔もええな。日持ちするし葉酸たくさん入ってる。おっちゃん、伊達にここに立ってへんやろ」
と、笑いながら、話してきた。
「あ、なんか、わたしこのおじいちゃんに、
頑張って向き合ったよ。アトピー治したよ。お嬢ちゃんすっかり可愛なったなあって言われたい。」
そう、思った。はじめて、思った。
おじいちゃんはつづける。
「なんでもええねん、しんどくならん程度にな、まずは続けてみる。肩くって上がらんくらいにな。急には難しいかも知れへんけど、続けていけば必ず少しずつ良くなるからな。でもストレス溜まったらあかんで。それは続かへんから。いつでもな、相談しに来てくれたらええから。なんでも。物買わんでええわ。相談だけでもな。」
都会にこんなあたたかい場所があったのかと、
なぜか少し涙が出そうになった。
「わたし、約束する。5の女になる!」
なんだこのセリフ、と自分でツッコむ。
でも、言葉が口から勝手にでていた。
嬉しそうなおっちゃんの顔。
「おっちゃん、土曜と木曜以外の夜はおるからな。いつでもおいでな。」
おじいちゃんの名札には「やまもと」と書かれていた。
思わず、私は言う。
「やまもとさん!また会いにきます!」
どこの月九の終わり方だよ、
とまたもや突っ込みたくなるセリフだ。
今まで見て見ぬふりをしてきたアトピー。
コンプレックスだったアトピー。
でも、それは、
自分への言い訳だったのかもしれない。
治そうと向き合ってこなかった、
自分を大切にできてなかった、そうかも知れない。
今日からアトピーと向き合ってみよう。
アトピーのひとに、すこしでも、勇気を。
アトピーのひとに、すこしでも、元気を。
アトピーのひとが、すこしでも、生きやすく。
アトピーのひとが、すこしでも、かわいく。
わたしなんてちっぽけかもしれないけど、
それでも、伝えていきたいと思った。
アトピーの私が好きになれるように。
アトピーに関する情報、
ここで少しずつ発信していきます。
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