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#23 そして、夫が出て行った。

こんにちわ。id_butterです。

人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の23話目です。
先月末、夫が家を出た。その辺の話について書いてみる。

わたしは、子どもたちを公園で遊ばせている傍ら、ママ友のFさんに最近のできごとを話していた。

わたし:「そういえば、先週出て行ったんだよ。」
Fさん:「え、スピード離婚!話出てから2ヶ月たってないよね。どう?」
わたし:「…テレビが消せるようになった。」
Fさん:「???」
わたし:「実はさ、夫はテレビ好きで24時間テレビが点いていたのよ。子供の教育上、食事時とかだけでも消したかったんだけど、消せなくて。」
Fさん:「そうなんだ。」
わたし:「食事中、子どもには『テレビ見るな』ってずっと怒ってて、夫は自分の好きなテレビを見てるっていう状況だったから、そのストレスがなくなった。」
Fさん:「…え?…それは…やだね…(無言)」

また、優しいFさんを困らせてしまった。
というのはさておき、夫が出て行ってからの変化はわたしにとって大きく、想定通りのこと想定外のこともあったし、メリットもデメリットもあった。

小さなところから挙げてみる。

【メリット】
●わたし個人のこと
 ・体調が格段によくなった(肩こり治る、体が軽い)
 ・睡眠の改善(ぐっすり寝られる、朝すっきり起きられる)
 ・言い訳しなくてよくなった、ビクビクしなくなった
 ・好きなものが食べられる、食べたくないときは食べなくてよくなった
 ・夫に合わせなくていいので、自由に使える時間が増えた
 ・自宅に圧迫感がない
 ・zoom飲み会なら参加できそう
 ・夜一人でのんびりできる(気を使わなくていい)
 ・イライラ、ストレスが減った
●子ども
 ・子どもが早く寝て早く起きるようになった
 ・子どもができることが増えた
 ・理不尽に怒鳴られることはなくなった
 ・(栄養面)揚げ物を減らして、野菜のメニューを増やした
●お金
 ・飲食費・タバコ代が減ったことで、生活費が結構減った
 ・ひとり親世帯になったから何かしら手当が出るかもしれない
●家事
 ・ごはんのメニューが決めやすい(夫の好き嫌いを気にしなくていい)
 ・夫の食器や服を洗わなくていい
 ・靴下がなくならない(今まで靴下の片方がよく行方不明になっていた)
●その他
 ・トイレ(夫は3h/日くらい滞在する)、お風呂に自由にいつでも入れる
 ・一人当たり使えるスペースが広くなった

【デメリット】
●わたし個人のこと
 ・仕事への影響(子どもにごはん作るからあまり残業できない)
 ・防犯面や地震などの有事への不安が増えた
 ・リアル飲み会への参加が絶望的に難しい
●子ども
 ・子どもがパパに自由に会えない(下の子はあまり気にならないらしい)
●お金
 ・家計全体としては、夫の収入分が減
●家事
 ・ルーティン系の家事全般がワンオペになった
 ・電球替えるのとか大変そう
 ・粗大ゴミとか捨てるときどうしよう
●その他
 ・ごはんが食べきれない(3合炊いていたのを1.5合に変更したけど残る)
 ・作れないおかずができた(作っても食べきれないから)

書き出してみて、思った。
わたしつらかったんだな、とか。
けっこう、気を使っていたのね、とか。

ざっくりまとめると、こんな感じ

・わたし個人のこと メリット>>デメリット
・子ども(親からの視点) メリット>>デメリット
・子ども(子からの視点) メリット<デメリット
・お金、家事、その他 メリット≒デメリット
・(時間 メリット≧デメリット)

今の所、メリットの方が大きく見えるけど、防犯面の部分は何かあったら一気にデメリットが跳ね上がるので測りきれない部分があると認識している。
そして、他は想定通りだったのだが、家事の結果が「メリット≒デメリット」となったのが意外だった。
夫が分担していた
・朝・晩ごはんの準備
・週2回のゴミ捨て
・洗濯半分
・子どもの送迎半分
を鑑みて、予想では「メリット<<デメリット」だったのに。

ただ、よく考えてみればこれは理由があった。

夫がいなくなったと同時に、そもそも家事ががくんと減った。
主に食事。
夫は好き嫌いが多く、子どもとは別メニューを用意したりしていたし、量も必要だったので、品数も必要だったし、買い物の頻度も高かった。
子どものメニューだけ考えて準備するのであれば、そんなに大変じゃないし、量も必要なかった。
さらに、一人でやれば全部自分で把握できるので、効率化も自然進んだ。

夫に何かをお願いしてやってもらった場合、夫の仕事の尻拭いという業務が増えるという事実があった。
どういうことかというと、例えば夫が洗濯物を取り込んだ場合高確率で靴下が片方なくなり、探すという尻拭い業務が増えるということだ。
この業務は量が読めない上、明日必要だから買いに行かないと!とかのさらなる業務の緊急追加を呼ぶため、負担が大きかったのだ。

結果、夫にお願いしていた半分の家事は、わたしの手元に戻ってきても二倍にはならなかった。夫自身は大変だと思っていた家事がわたしにはそんなに大変じゃなかったことも事実としてある。

でも、ちょっとわかってもいた。
こうやったらいいよとか言ってももめるだけなので、自由にやってもらうことにしていた。
自分がやれば簡単なことをあえて効率悪くても好きなようにやってもらって、「なんでお前はやらないんだ」と文句を言う自由もそのまま置いておいた。結果として平和を保つという実を取る、というのはわたしの小賢しい戦略だった。
「お前はおれをバカにしてるのか!」と夜中にブチ切れるとかそれを子どもに見せるとかの大事じゃなく、日常の文句くらいで済ませたかった。
納得していたとはいえ、わたしはストレスを感じていたみたいだ。
やってくれるだけましだよ!と友達に言われてから、誰かにこういうことを聞いてもらうことはできなかったから、余計だった。


もう一つ、意外だったことがある。

わたしは、夫を怖がっていたようだ。

散歩に行くときは「30分で戻らないと、『子どもがかわいそう』とか文句を言われるのでは」ということがいつも頭を離れなかった。
お風呂に入っている裸で無防備な状態のとき、話しかけられるのが嫌だったから、お風呂はいつも夫が寝たことを確認してから入っていた。
朝、夫が子どもとわたしを起こすときあえて大きな音でドアを開けてバチっと電気を点けるのが嫌だったから、体調が悪いと言っていたし実際にいつも胃が痛くて体が重くて起きられなかった。(今は目覚まし時計がなくてもぱっちり同じ時間に目が覚める)
夜、リビングでゆっくりしていても、夫の部屋で変な音がしたりすると忍び足で見に行って様子を伺った。(いなくなってからも癖が抜けなかった。)
夫のいびきが聞こえると、ビクッと反射的に体が反応した。

夫がいなくなってから、ビクビクしている自分に初めて気づいた。
夫の名誉のために言っておくが、殴られたことはない。
でも、怖かったのだ。

夫のいなくなった家の空気は軽く、夜は穏やかで、朝は爽やかだった。
あくまでも、わたしの心象風景だけど。
部屋が死ぬほど散らかっていて汚いことは、何も変わってない。
やっと片付けられる、と思った。


ただ、その前には一悶着あった。

出ていく夜、夫に離婚の理由を聞かれた。
夜9時の公園、人通りもそれなりにあり、その中に保育園や学校の関係者もいるかもしれない。
腹が立った。
わたしも子どもも、これからもここで生きていくのに。

「なんでこんなタイミングなの?」

と思っても口からこの言葉が出ないくらいわたしはもうどうでもよくなっていた。
理由?ありすぎて、説明できないよ。
というか、今までいってきたけど?聞いていなかった人に?またいうの?

わたしから話したいことはなかったので、ベンチに座ったりはしなかった。
どうせ覚えていないのだし、何を言えばいいんだろう。

「もう終わったことだから。今まで言ってきたし。」

それが、精一杯だった。
今更感情をぶつける気もないし、親切にする義理もない。

「おれ、覚えてないけどなんかしたんだよね?」
そこから始まった夫の話は相変わらず盛りだくさんだった。
あと半年で仕事を辞めること、急いで引っ越すために借金をしたこと、そのためにもう少しお金をもらえないかという相談、子どもがいないなら仕事なんてどうでもいいんだ、とか。
わたしが死んだら、子供が未成年だった場合後見人に自分を指名してくれという話は断った。

相変わらず設定が多すぎる夫、だけどわたしはもう相方ではないのでつっこんで話を広げてあげたりはしないのだった。
お腹いっぱいだよ、くらいは言いたかったけど。

この前は昔大好きだった人に戻った気がしたけど、気のせいだった。

思えば、本当に長い時間を夫と過ごした。
交際期間も含めれば20年近くずっと、がんばってきた。
たのしいこともたくさんあったし、寄り添って泣いたこともあった。
子どもを授かったことは感謝している。
最後の方はつらいことが多くて、ひとりぼっちだった。
それでも夫は大事だった。
夫を幸せにしたかったし、夫と幸せになりたかった。
でも、だめだった。
全てのわたしの中の優しさとか明るさとか信じる気持ちはブラックホールに吸い込まれて消えて、もう残ってない。
もう、あきらめる。
でも不幸だったとは今でも思ってない。

これは、夫に言えなかった。というか言わなかった。
夫は分かっているはずだし、もし分かっていないのならなおさらいう必要がない。

夫は、最後に涙ぐみながら「ありがとう」と言っていたけど、わたしは返さなかった。何も分かっていないことがわかったから。

綺麗になんか終わらせてやるもんか。
散々やってきたくせに、最後だけ綺麗に終わらせようとする自分勝手さに呆れた。
今更わかったふりとかいらない。

勝手に苦しみ続けろ。と黒いわたしは思った。

まだ未練がありそうな夫に背を向けて、元気にぶんぶん手を振って夜の公園の散歩を再開した。
30分後汗だくになって、自分がちゃんと笑えるか確認してから、家に戻る。
でも、娘たちはスヤスヤと寝息を立てて気持ち良さそうに寝ていた。

わたしは、いろんな平和を守った。
これからも自分の中や外の平和を守るために戦う。

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