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#28 優しくされたらダッシュで逃げたくなってしまう件

こんにちわ。id_butterです。

人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の28話目です。
「優しさ」については、#15 可哀想な人に、もう恋はしないで書いた。
ここがまだ引っかかっているらしいので、今回もインナーチャイルドの話になる。次々沸いてくるインナーチャイルドというのは、わたしの中に一体何人いるのかと思うと気が重いのだが、一つひとつ解決できていると思おう。いつまで不幸ぶってるんだ、という言葉が頭の片隅によぎるけれど。

一つだけ。
痴漢にあった記憶について触れています。フラッシュバックの可能性がある方は読まないほうがいいかもしれません。


それにしても、なんでこんなに次から次へといろいろなことが起きるんだ。

ここ2、3日またしても涙腺がぶっ壊れている。
きっかけは上司Kさんのさらに上司である部長のひとことだった。
業務上説明の必要が生じてzoomへの参加を求められたわたしは、部長含む2名に業務説明を行っていた。説明し始めて少し経って、Kさんも通話に入ってきた。朝にKさんにも説明していたトラブルだったので、単に情報を取りに来たんだろうな、とわたしは思った。
けれど、部長の受け取り方は違った。

「現れたよ、保護者が。俺が〇〇さん(わたし)をいじめてないか見に来たんでしょ。だいじょうぶだよ、そんなに心配しなくても。」

頭が真っ白になるのを押しとどめる。

冗談で言っているトーンではあったけれど、実はわたしも前から気になっていたのだ。周囲から、Kさんがわたしに必要以上に過保護に見えてるんじゃないかということが。
離婚の話をそんなに詳しくしてはいなかったけれど、状況が異様すぎることは端々からKさんに伝わっていたのだと思う。Kさんがわたしを心配してくれていることはわたしに伝わってきていた。
いつもより少し長めに設定された納期、自分だけで完結できるような業務の多さ、など至るところにそれはあらわれていた。
わたしは、周りの目が気になっていた。
Kさんの立場は悪くならないだろうか。わたしに優しすぎる、と考える人はいないだろうか。
離婚の話は、Kさんと部長含め仕事の近い数名にしか伝えていなかった。
離婚の話を部署のみんなに言おうとするわたしを、Kさんが「いう必要ないんじゃない?」とやんわり制したので、タイミングを逃したのだ。
Kさんに聞いてみたこともあったけど、「〇〇さんは現状部署の中で技術力が低い(すみません。そうなんです。)んだから手をかけるの当然でしょ。」とかわされ、その通りではあるのでもう言えなかった。

やっぱりそう思われていたのか。
異動しなくてはいけないのかもしれない、と思った。
わたしが彼に迷惑をかけていることは明白だった。

わたしを救ってくれた彼の仕事に自分が迷惑をかけるということは、許容範囲を超えている。
今回の離婚でわたしがいろいろなわたしを許しているのは、あくまでも自分のことに関する部分だった。他の人を巻き込むつもりはなかった。
前のわたしならさっさと諦めて異動をあっさり願い入れていたことだろう。けれど、今回は簡単にあきらめられなくてつらい。
やりたい仕事、だいすきな彼と、たくさんの時間を重ねてきた優しい仲間、全てが大事すぎる。

彼にもう優しくしないでください、と言えばよいのだろうか。変だけど。
「異動したくない」「異動するしかない」
完全に同じくらいの大きさの気持ちに挟まれていた。

ここで、いつもの違和感がきた。

そういえば、今回が初めてではない、前からだ。
そもそも、迷惑をかけるだけでない、優しくされすぎると苦しい。
好きなのに優しくされすぎると逃げたくなってしまうってこれはなんだ。
相手から見た大きさは関係ない。
自分から見た優しさの大きさが大きすぎると、わたしはなんだか胸が苦しくなってくるみたいだ。
うれしいのに。しあわせなのに。

そう思ったあたりから涙が止まらなくなってしまった。

まただ。
わたしの中の誰かがまた関係しているに違いない。
気づくスピードが上がっているのには少し笑えた。

以来、何をしても何を言われてもふとしたことで涙が止まらなくなった。
困った。自宅勤務とはいえ、これ以上長引くと仕事に支障が出る。

そういえば、優しさを受け取れない、これ前あったな。
#10 優しくする資格は王子様?wwwにしかない
…書いてあった。

私の守る対象から守られるという感覚を受け取れない体質は、おそらく自己肯定感の低さに関係している。まだ、もやもやしてはっきりと言語化できないので、もし書けるようになったら書きたい。

しかもなんと、予言してた。
今が言語化のタイミングらしい。

でも、読み返して気づいたことがある。
これは、揺り返しだ。
ふたりのわたしがせめぎ合っている。
離婚を決めたわたしは、優しくされてうれしい方のわたし。
この人が前へ進もうとしているのを、今までのわたしが元の闇に戻りたくて後ろにひっぱろうとしている。

今までのわたしはしあわせが落ち着かない。
あとでどん底に落っことされるという恐怖に終始怯えているのだ。
それに、今のわたしはしあわせすぎるように見えるんだろう。
片思いなのに守られている感覚に満たされている。
彼がくれるしあわせは、甘くて甘くてわたしはいつもトロトロなのだった。

甘えすぎじゃない?

どこからか声が聞こえてくる。
そうなのだ、わたしはボケている。ここはそんなに平和な世界じゃない。
単なる噂をきっかけに出世レースから外れた人を何人も見てきた。

やっぱりこのままじゃだめかな。

後ろに引っ張る力が強まる。

しあわせになる資格なんて、わたしにはないんじゃない。
無意味だとわかるこの言葉に傷つきながら、でも少し掴んだ感覚があった。

そうだ、わたしは自分を罰しようとしてたんだった。

わたしは、以前 #13 優しくなんかならないで と書いた。
それに、#15 可哀想な人に、もう恋はしない とも書いた。
夫は優しくなく可哀想な人だとわたしは思っていたということだ。
だから、わたしは夫を選んだ。
夫がやさしくて、可哀想じゃなかったら、そもそもわたしは一緒にいられなかったのだ。
本当に欲しいものじゃない方を選ぶ、それがわたしだった。

わたしはきたない。穢れている。
だって、痴漢にあったのだ。
拒否もしなかった。
母は「汚い」といってわたしをゴシゴシ洗った。
男性の警察官に「何をされたのか」を矢継ぎ早に聞かれながら、やっと恥ずかしくなってきて、泣きたかったけど泣いてはいけない感じがした。
恥ずかしい言葉をいわされそうになって、のどにつっかかって、でも全部口にしなくてはいけない。
「ちゃんとしなさい。」
そう母に怒られるから。でも何かいうたびに母の目は鋭く光って、わたしをせめたてた。
目の前の男の人にわたしがきたない子だとちゃんとわかるように、恥ずかしくてもこの人が求めてくる言葉を返し続けなくてはいけない。
警察官が帰った後、母は「このことは誰にも言ってはだめだよ」と言った。
これからはわたしはわたしがきたないことを隠し続けなくてはいけない。
だから、きれいな人に触ってはいけない。近づいても、いけない。
ちょっと不幸なくらいでわたしにはちょうどいい、落ち着くのだ。
きたないわたしには価値なんてないから、何をされても我慢するのだ。

こんな気持ち、まだ残ってたのか…
もう解決したものと思っていた。
以前、痴漢にあった話は誰にもできなかった。でも、今わたしは誰にでもその話ができるし、批判されても一向に傷つかないからだ。大学時代の友人に話してみたところ、反応はバラバラだったけど、特に何の感情も浮かばなかったので、実証済みだ。
それに、20歳の時に振り返った記憶より、細かい記憶が蘇ったのが不思議だ。

わたしは「優しくされたいわたし」を支持しなくてはいけない。
冷静なわたしはもちろんそうわかっている。

でも、なんだろう。
まだ、だめだ。
これだけじゃ、ないらしい。

先週、あまりにも情緒不安定なわたし(だいすきでだいじな後輩が心配すぎておかしくなった)に、Kさんは「そんなに怒ったり笑ったり泣いたり大変じゃない?」とのんきな感じで笑っていた。
わたしは、その人に感情移入どころか同調してしまう。だから、その人が表に出さない本心とか抑えている感情とかがわたしを通して出てくるのだ。

たぶん、Kさんも傷ついているんじゃない、とふと思う。
これはKさんの感情の一部が混じっているのかもしれない。
彼がもう意識しないところで処理が終わってしまう感情。
彼はいつも、仲間のこととかを考えて考えて、考えた最後の結論しか表に出そうとしない。
誰でもあるはずの途中経過にあったはずのちょっとした傷とか悲しさとか、押し殺した怒りとかをわたしには見せてくれない。
当然だ、ただの部下だから。
「怒っても、しょうがないから」という。
でも怒ってないわけじゃなくて、しょうがないからってどこかに気持ちを片付けただけじゃない、とは返さなかった。
彼の強さを疑うみたいなことをしたくなかったし、片思いだから踏み込んでいいかわからなかった。
結論となって出た最後の一滴は、仕事という形になって、いつもわたしに優しく降り注がれている。
その甘さだけを今までこっそり味わってきた。

それが、もう悲しいのかもしれない。

明日、話してみようかな、話せたら。
どうしようか迷う。
正解がないというのは厄介だ。

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