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短編

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4000字~20000字程度の小説です。5~30分くらいで読めます。 10000字以上になるときは2、3回に分けますので、1つの記事で15分程度の目安です。
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記事一覧

【短編小説】壺中の天#創作大賞2024#オールカテゴリ部門

【短編小説】壺中の天#創作大賞2024#オールカテゴリ部門

(読了目安8分/約8,100字+α)

 ようこそお越しくださった。どうぞお時間の許す限りごゆるりとご覧ください。
 ……おやおや。それが気になりますか。いいえ、それはただの筒でございます。宝石の輝く時計も、とある宮殿を飾った燭台も、水の涸れない水差しも、禁書とされた歴史書も、かくも珍しい角のある頭骨も、どれでも手に取りご覧ください。
 ……それがよろしゅうございますか。いかにも、それは万華鏡。あ

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【短編小説】余命幾許#夢の訳し方を知らない僕等

【短編小説】余命幾許#夢の訳し方を知らない僕等

文学フリマで出版されている短編集に寄稿したお話です。
ポートフォリオ的な目的で記事でもアップしています。
できれば本の形で手に取っていただきたいですが、必ずしもそうはならないと思うので。

Kindle Unlimitedでも読めるようなので、できればこちらからどうぞ。
『夢の訳し方を知らない僕等』

その他の作品の紹介の記事はこちらです。

(読了目安7分/約5,200字)

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【短編小説】春と風#夜行バスに乗って#シロクマ文芸部

【短編小説】春と風#夜行バスに乗って#シロクマ文芸部

(読了目安7分/約4,900字+α)

『春と風林火山号に乗って新宿に行こう!』ツアーにご参加いただき、誠にありがとうございます。このバスは21時00分に出発し、途中〇〇サービスエリアに23時00分、△△サービスエリアに2時00分、〇△サービスエリアに4時00分、終点バスタ新宿へ6時00分到着予定です。私、乗合が運転手を務めます。どうぞ到着までよろしくお願いいたします。

23時00分 〇〇サービ

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【短編小説】氷の女王#四節の輪舞曲

【短編小説】氷の女王#四節の輪舞曲

 今年もあっという間のクリスマスですね🎄🐤✨
 昨年、文学フリマに出す本のために書き下ろしたお話を、クリスマスプレゼントとしてアップします。寒ーい冬にどうぞ。

 なお、こちらのお話はkindle unlimitedで無料で読める、電子書籍にまとめさせていただきました。できれば本書の方でお楽しみください。

また、本書の宣伝とあとがきはこちらの記事で紹介しております。

(読了目安7分/約5,

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【短編小説】愛は犬#シロクマ文芸部

【短編小説】愛は犬#シロクマ文芸部

(読了目安9分/約7,850字+α)

「愛は犬を連れてくる」

 突然聞こえてきた呟きに、我に返った。振り向くと、カウンターに腰かけた美女と目が合う。切れ長の瞳。顎のラインで切りそろえられた黒髪。その合間からキラリと光るイヤリング。スレンダーな四肢。細い首、手首、指先を飾るゴールドの装飾は生まれつきだと言われても信じそうなくらいなじんでいる。思わず絶句した僕の顔を舐めるように眺め、薄く笑う。

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【短編小説】平和とは#シロクマ文芸部

【短編小説】平和とは#シロクマ文芸部

(読了目安6分/約5,000字+α)

 平和とは何なのだろう。二か月前まであったものが平和、だったのだろうか。でももしも平和が安らぎなら、今の状態が平和なのかもしれない。いや、とにかく今はそんなことよりも。

 朝起きたら、隣に知らない男性が寝ていた。理由は想像もつかない。けどまあ、私の飲み過ぎが原因なのだろう。

 二十歳くらいのジャニーズみたいな整った顔。ドレープカーテン越しの微かな陽ざしの

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【短編小説】回遊する魚の噺#創作大賞2023#オールカテゴリ部門

【短編小説】回遊する魚の噺#創作大賞2023#オールカテゴリ部門

(読了目安7分/約5,300字+α)

 魚も、海の中で息苦しくなることがあるのだろうか。

 雨粒が目に入るのも気にせず、闇で塗りつぶされた空を仰ぐ。星も月もなく、この道には街灯もない。光るものはときどき狂ったように走る自動車だけ。

 ここまでどうやって来たのか、もうここがどこかもわからない。

 ハイヒールの中がぐっしょりと濡れて、歩くことも嫌になる。私はその場に靴を脱ぎ捨てる。

 前方に

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【短編小説】祖母と私#清潔のマイルール

【短編小説】祖母と私#清潔のマイルール

(読了目安10分/約8,300字+α)

 別に、お祖母ちゃんが嫌いなわけじゃなかった。同じ市内に住んでいたし、時々お母さんと一緒に顔を見せに行った。あらかじめ遊びに行くことが分かっていれば、普段お祖母ちゃんは食べないようなお菓子が用意されていて、色んな煮物やいくつかの総菜を用意してくれていた。でも一緒に暮らすのは別の話だ。

「ほら、未来もお祖母ちゃん好きでしょ。大学も近いし」

 お母さんはこ

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[短編小説]涙のプール

[短編小説]涙のプール

(読了目安5分/約4,800字)

 小学校一年生になった春、祖母が死んだ。

 当時はよくわからなかったが、祖母は以前に心筋梗塞をしていたらしい。薬を処方されて飲んでいたみたいだが、再発、悪化して入院、そのまま帰らぬ人となった。

 もともと泣き虫の私は、お通夜も葬儀も火葬もその後もずっと、メソメソと泣いていた。

 「みか子、一生に流せる涙の量は決まっているのよ。そんなに泣いたら涙が枯れちゃう

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【短編小説】家族がみんな隠しごとをしている#2022年のライトノベル短編

【短編小説】家族がみんな隠しごとをしている#2022年のライトノベル短編

文学フリマで出版されている短編集に寄稿したお話です。
ポートフォリオ的な目的で記事でもアップしています。
できれば本の形で手に取っていただきたいですが、必ずしもそうはならないと思うので。

Kindle Unlimitedでも読めるようなので、できればこちらからどうぞ。
『甘々なアイスコーヒーが良いに決まっている』

(読了目安10分/約5,990字+α)

【短編小説】ウソつき#やさしさを感じた言葉

【短編小説】ウソつき#やさしさを感じた言葉

(読了目安15分/約11,500字+α)

 嫌いだった。

 物心ついてから今も、この先も、橋本諒真が大嫌い。

 昔は、近くの公園で砂遊びや滑り台で遊んだ。でも、せっかく作った砂のお山に上から水をかけて壊された。滑り台を滑るのが怖くてなかなか降りられないでいると、不意に後ろから押された。お誕生日に買ってもらった髪留めも勝手に盗って返してくれなかった。諒真はいつもわたしに意地悪ばかりした。

 

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【短編小説】桜との約束#第二回「絵から小説」

【短編小説】桜との約束#第二回「絵から小説」

Kindleで出版している本を記事でも出しています。
ポートフォリオ的な目的です。
Kindle Unlimitedなら0円で読めますので、そちらをオススメします。

 本書の宣伝とあとがきはこちらの記事で紹介しております。

(読了目安10分/約8,460字+α)