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ドーナツとコーヒー、ときどき本

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特別に読書家なわけでも、文学に明るいわけでもない、ごく普通なアラサーの読書備忘録
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#日記

「食べる」の美学 〜ごはんにまつわる好きな本4冊〜

「食べる」の美学 〜ごはんにまつわる好きな本4冊〜

自分で料理をするのは苦手だけど、「料理」「食べること」に関する本を読むのは好きです。

誰の日常にも存在するものへの視点にこそ、独自性が出る。つまり、「食べる」を通して、自分とは違う感性を知るのが好きなのです。

ということで、「食べる」にまつわる好きな本を紹介したいと思います。いつもの風景への視点をちょっと変えてくれるような本たちです。

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帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったの

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道徳の授業通りに進まないのが、大人の愉しみ/「痴人の愛」谷崎潤一郎

道徳の授業通りに進まないのが、大人の愉しみ/「痴人の愛」谷崎潤一郎

小学生のときの「道徳教育」、あれは何だったんだろうと思うときがある。

初めから「善」と「悪」の模範解答がくっきり決まっていることがらに対して、「みんなはどう思いますか?」と先生は聞いた。

私たちは「それは良くないと思います」と、大人の望み通りの答えを言って、そして滞りなく授業は終わった。

それから時が流れて、学校という枠の外に放り出された私たちは、「道徳的に正しいことをしても必ずしも報われる

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春の澱みと向き合うために/「デッドエンドの思い出」よしもとばなな

春の澱みと向き合うために/「デッドエンドの思い出」よしもとばなな

春は心が澱む。

もわっと暖かい風を吸い込むと、おなかの中にホコリが巻き起こって、黒く澱んだ小さな沈殿物が溜まっていく。

「寒くなると古傷が痛む」とよく言われるけれど、心の古傷がいちばん痛むのは、だんだんと暖かくなる今くらいの時期のような気がする。

『デッドエンドの思い出』は、そういう心の古傷に、近すぎず遠すぎない距離感でやわらかく寄り添ってくれる。

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「ドカンとショッキングなことが

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