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【恋愛詩】古都

古都は何百年の歴史を見つめてきた

いつかのこの場所では 帰らぬ主人を待ち 
満月の晩にも顔を背ける女がいたかもしれない

いつかのこの場所では 結ばれてはならない二人が
人知れず闇に紛れて愛を交わしていたのかもしれない

しかし それらは歴史の書にも載らず
当人たちにしか わからないまま 時代とともに消えていった


ぼくたち二人の関係もそうだ

公の記録には残らず 未来において 二人が深く愛し合っていたことは 誰にもわからない

密かな愛は 音もなく 形もなく 姿を消す
それが 密かな愛の定めである


愛とは実に儚いものだ


この地を訪れて気づいた

なぜ京都に惹かれたのか
なぜ二人で古都を訪れたかったのか

それは
未来に形として残らないであろうこの関係を

歴史ある古都に見つめてもらいたかったのかもしれない

千年近く 高くそびえる八坂の塔の真下に
千体近い数の観音像の目前に

人目を気にせず 手を繋いて歩くことに感動する二人がいたことを

見つめ合い 冗談や愛の言葉を交わす二人がいたことを

この先も永遠に残る古都の記憶に残してほしい

そう願い 八坂の塔を見上げる
そう願い あえて観音像の怒りにふれるような冗談を交わす

儚い愛にも願うことはある
密かな愛にも希望がある

そして私は願う
何千年後も この場所が
二人の愛を証明する場所として残ることを


【詩の背景】

「1泊2日の京都旅行の思い出を詩にしてほしい」
彼女からの願いだった。

家に帰り、風呂につかって、寝床につく。
天井を見つめ、2日間のことを振り返り、自分の心と向き合う。

出てきた言葉をつないでいくと、驚くほど重たい詩になってしまった。

交際4ヶ月でこの詩は重たいと思い、別のものを作って送った。

この詩はお蔵入りしていたもの。

密かな愛にも 希望があるということを願ってかいた詩です。


#忘れられない恋物語

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