季節はいつも黙って行き過ぎる かわす言葉も誓う約束もなく そこらの街角でふと交わるでしょう そのときこんにちはもさよならも ごめんねもありがとうも言わないでしょう …
ようやくめぐりあえたよ ファム・ファタル ほんとうにたまたまだったんだ 宇宙のかたすみの 偽物の星でぼんやり ラッキーストライクを ふかしていたら 足もとに立ってい…
削岩機で和紙は削れますかと面接官はきいた。面接官は左肩から先がなく右手には回転式拳銃を握っていた。ここは東京なのになぜ彼は左腕がないのだろうとぼくは考えていた。…
春のはじまり 嵐はすぎた 喫茶店 クランベリーケーキ 食べきれず にがいミルクティー 電話をかけた 不通 ウェイトレス にこにこ 繁華街 家に帰る もういちど ラッシ…
かーてんのすきまからあさひがさして ぼくはきみのはだかのせなかにきすをした まどぎわのさぼてんがひかりをたべていた きみはねぼけまなこでかべにかかったとけいをみて …
目が醒めると、天井が四角くくりぬかれていました。 ぼくは紙屑のカーペットにうもれていました。 一晩中ふり続いた雨は黎明の空にいきおいよく 吸い込まれて、やがて一粒…
ぼくはヨーグルトの ジェットコースターにのって 紙やすりのように ざらついた宇宙をめぐる 宇宙風の風圧をうけて 閉じたまぶたにうつる タコの貌をした宇宙人に手をふる…
白い花がネックに咲いた。 黒い穴からは透明な血がこぼれて、 きみの犬歯にしみついた。 何度、何度、つまびいても 正しい音は鳴らず 蝸牛の底に沈澱して、 波打ち際の深…
凪
2021年9月30日 23:20
季節はいつも黙って行き過ぎるかわす言葉も誓う約束もなくそこらの街角でふと交わるでしょうそのときこんにちはもさよならもごめんねもありがとうも言わないでしょう遅めの昼ごはんを静かに食べるでしょうお腹がふくれたらようやく天気の話をしてつめたいんだかぬるいんだかよくわからない潮風に吹かれてだだ広い港をならんで歩くでしょうアナウンスをきいていそぎ足で遊覧船にのって海に出るでしょう甲板
2021年9月23日 00:58
ようやくめぐりあえたよ ファム・ファタルほんとうにたまたまだったんだ宇宙のかたすみの 偽物の星でぼんやりラッキーストライクを ふかしていたら足もとに立っていたんだ まるい眼鏡をかけて履いてた靴はぼくとおなじ マーチンの3ホールでもぼくのと違って ちゃんと磨かれていたよなにかがはじまるような 気がして煙草の箱を投げ棄てた ちょっと高いジッポも苔生したような 思い出話もとうてい理
2021年9月20日 12:44
削岩機で和紙は削れますかと面接官はきいた。面接官は左肩から先がなく右手には回転式拳銃を握っていた。ここは東京なのになぜ彼は左腕がないのだろうとぼくは考えていた。咳払いに急かされて水玉模様のネクタイの先をいじりながら削れませんとこたえると面接官は笑いながら引き金をひいた。銃弾はネクタイをすべってぼくのあご先に穴をあけた。口腔にひろがる血と鉛の味わいにぼくは涙をこぼした。まあでもべつにここが東京だろう
2021年9月16日 22:55
春のはじまり 嵐はすぎた喫茶店 クランベリーケーキ食べきれず にがいミルクティー電話をかけた 不通ウェイトレス にこにこ繁華街 家に帰るもういちど ラッシュアワー籠の中の 紋白蝶あっという間の 星霜夜の底 洗いそこねの靴下詩人もどきの ツベルクリン反応さよなら 葦切さよなら イルカさよなら いつか聴いたギターこんにちは 風見鶏こんにちは ジンベイザメこんにちは かみ
2021年9月15日 16:42
かーてんのすきまからあさひがさしてぼくはきみのはだかのせなかにきすをしたまどぎわのさぼてんがひかりをたべていたきみはねぼけまなこでかべにかかったとけいをみていそいでからだをおこしてみづくろいをはじめたぼくはふとおいてけぼりにされたようなきがしてきみのなまえをよぼうとするけれどなんだかそれはとてもいけないことのようなきもしてかがみとにらめっこするきみのちいさなうしろすがたをまばたき
2021年9月13日 20:31
目が醒めると、天井が四角くくりぬかれていました。ぼくは紙屑のカーペットにうもれていました。一晩中ふり続いた雨は黎明の空にいきおいよく吸い込まれて、やがて一粒の、巨きな雨露になりました。その異形に、部屋の片隅のリクガメは、ひどく怯えきって顔を出さなくなりました。プリズムにかがやく雨露はいつしか七色の橋をかけて、ぼくはあおむけのまま腕をのばしました。しんと霧散して、空は灰色、に
2021年9月11日 21:17
ぼくはヨーグルトのジェットコースターにのって紙やすりのようにざらついた宇宙をめぐる宇宙風の風圧をうけて閉じたまぶたにうつるタコの貌をした宇宙人に手をふるとかれも吸盤だらけの手(足?)をふりかえす異星特製の水玉模様のお茶を飲んでああぼくはいつもきみに傷ついてああ今夜だけはきみに飛び立ってしまいたい
2021年9月9日 22:37
白い花がネックに咲いた。黒い穴からは透明な血がこぼれて、きみの犬歯にしみついた。何度、何度、つまびいても正しい音は鳴らず蝸牛の底に沈澱して、波打ち際の深海魚みたい。「ねえ、Fってどうやって押さえるんだっけ」きみの指先がそっと、最果てにふれて真っ白けにかがやいた。折れかけたペグみたいな脚を地面につき刺して、早過ぎた夜明けの霧の中をらんらんと歩く。一切の音を失くし