詩を書いています。 モチーフはいとしいひとです。 スピッツに多大な影響を受けております。

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最近の記事

Awakening

季節はいつも黙って行き過ぎる かわす言葉も誓う約束もなく そこらの街角でふと交わるでしょう そのときこんにちはもさよならも ごめんねもありがとうも言わないでしょう 遅めの昼ごはんを静かに食べるでしょう お腹がふくれたらようやく天気の話をして つめたいんだかぬるいんだか よくわからない潮風に吹かれて だだ広い港をならんで歩くでしょう アナウンスをきいていそぎ足で 遊覧船にのって海に出るでしょう 甲板にでてだいだいにゆれる世界をながめて ホメオスタシスについて語り合うでしょう 互

    • 上機嫌

      ようやくめぐりあえたよ ファム・ファタル ほんとうにたまたまだったんだ 宇宙のかたすみの 偽物の星でぼんやり ラッキーストライクを ふかしていたら 足もとに立っていたんだ まるい眼鏡をかけて 履いてた靴はぼくとおなじ マーチンの3ホール でもぼくのと違って ちゃんと磨かれていたよ なにかがはじまるような 気がして 煙草の箱を投げ棄てた ちょっと高いジッポも 苔生したような 思い出話も とうてい理解できないような 思考回路も ぼくのいない 未来の話も うれしくて かなしくて 

      • リボルバー

        削岩機で和紙は削れますかと面接官はきいた。面接官は左肩から先がなく右手には回転式拳銃を握っていた。ここは東京なのになぜ彼は左腕がないのだろうとぼくは考えていた。咳払いに急かされて水玉模様のネクタイの先をいじりながら削れませんとこたえると面接官は笑いながら引き金をひいた。銃弾はネクタイをすべってぼくのあご先に穴をあけた。口腔にひろがる血と鉛の味わいにぼくは涙をこぼした。まあでもべつにここが東京だろうがジャカルタだろうがバンダルスリブガワンだろうがどこだっていいじゃないか。酸素が

        • 皐月

          春のはじまり 嵐はすぎた 喫茶店 クランベリーケーキ 食べきれず にがいミルクティー 電話をかけた 不通 ウェイトレス にこにこ 繁華街 家に帰る もういちど ラッシュアワー 籠の中の 紋白蝶 あっという間の 星霜 夜の底 洗いそこねの靴下 詩人もどきの ツベルクリン反応 さよなら 葦切 さよなら イルカ さよなら いつか聴いたギター こんにちは 風見鶏 こんにちは ジンベイザメ こんにちは かみさま 工事中 また電話をかけた 不機嫌な声 愛してる 早い梅雨 忘れ傘 恥じらい

        Awakening

          グッドモーニング・マイ・グロリアス

          かーてんのすきまからあさひがさして ぼくはきみのはだかのせなかにきすをした まどぎわのさぼてんがひかりをたべていた きみはねぼけまなこでかべにかかったとけいをみて いそいでからだをおこしてみづくろいをはじめた ぼくはふとおいてけぼりにされたようなきがして きみのなまえをよぼうとするけれど なんだかそれはとてもいけないことのようなきもして かがみとにらめっこするきみのちいさなうしろすがたを まばたきもせずくちびるをかみしめてみていた とうとつにきみはふりむいておはようといった

          グッドモーニング・マイ・グロリアス

          れいん忘却

          目が醒めると、天井が四角くくりぬかれていました。 ぼくは紙屑のカーペットにうもれていました。 一晩中ふり続いた雨は黎明の空にいきおいよく 吸い込まれて、やがて一粒の、 巨きな雨露になりました。 その異形に、部屋の片隅のリクガメは、 ひどく怯えきって顔を出さなくなりました。 プリズムにかがやく雨露は いつしか七色の橋をかけて、 ぼくはあおむけのまま腕をのばしました。 しんと霧散して、空は灰色、にがい静寂。 腕にはりついた紙片がはがれて、 ぼくの鼻先に舞い落ちました。 そこ

          れいん忘却

          まぶたの裏の宇宙

          ぼくはヨーグルトの ジェットコースターにのって 紙やすりのように ざらついた宇宙をめぐる 宇宙風の風圧をうけて 閉じたまぶたにうつる タコの貌をした宇宙人に手をふると かれも吸盤だらけの 手(足?)をふりかえす 異星特製の水玉模様の お茶を飲んで ああぼくはいつも きみに傷ついて ああ今夜だけは きみに飛び立ってしまいたい

          まぶたの裏の宇宙

          こわれたギター

          白い花がネックに咲いた。 黒い穴からは透明な血がこぼれて、 きみの犬歯にしみついた。 何度、何度、つまびいても 正しい音は鳴らず 蝸牛の底に沈澱して、 波打ち際の深海魚みたい。 「ねえ、Fってどうやって押さえるんだっけ」 きみの指先がそっと、最果てにふれて 真っ白けにかがやいた。 折れかけたペグみたいな脚を 地面につき刺して、 早過ぎた夜明けの 霧の中をらんらんと歩く。 一切の音を失くしても、 一生分の眠りにつけば、 またきみに会える。 あの交差点で、 またきみに

          こわれたギター