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こわれたギター

白い花がネックに咲いた。
黒い穴からは透明な血がこぼれて、
きみの犬歯にしみついた。

何度、何度、つまびいても
正しい音は鳴らず
蝸牛の底に沈澱して、
波打ち際の深海魚みたい。

「ねえ、Fってどうやって押さえるんだっけ」

きみの指先がそっと、最果てにふれて
真っ白けにかがやいた。

折れかけたペグみたいな脚を
地面につき刺して、
早過ぎた夜明けの
霧の中をらんらんと歩く。

一切の音を失くしても、
一生分の眠りにつけば、
またきみに会える。

あの交差点で、
またきみに会える。

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