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リボルバー

削岩機で和紙は削れますかと面接官はきいた。面接官は左肩から先がなく右手には回転式拳銃を握っていた。ここは東京なのになぜ彼は左腕がないのだろうとぼくは考えていた。咳払いに急かされて水玉模様のネクタイの先をいじりながら削れませんとこたえると面接官は笑いながら引き金をひいた。銃弾はネクタイをすべってぼくのあご先に穴をあけた。口腔にひろがる血と鉛の味わいにぼくは涙をこぼした。まあでもべつにここが東京だろうがジャカルタだろうがバンダルスリブガワンだろうがどこだっていいじゃないか。酸素があればどこだっておんなじだもの。面接官はぼくの眉間に照準をさだめもう一度引き金をひいた。銃弾は涙にすべり軌道をかえて面接官のこめかみをつらぬいた。面接は無事通過しぼくはこの東京の街で立派な社会人としての第一歩を踏みだした。

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