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#107_【事業】2024年新年のご挨拶①_土木遺産・景観保全活動を考えるプロジェクトの発足

明けましておめでとうございます。
2024年がはじまりました。
本年もよろしくお願いいたします。

今年はどのような1年にしようかと思ったときに、昨年を振り返りながら考えるのが良いかと思い、暮れのご挨拶で2023年を振り返りました。

新年の抱負として、今年は以下の目標を掲げて活動していきます。

  • 土木遺産・景観保全活動を考えるプロジェクトの発足

  • 島から人とモノの動きを考える

  • 自分の学びの機会も創り出す

各テーマで結構な字数になりますので、ひとつ1記事で紹介しています。


土木遺産・景観保全活動を考えるプロジェクトの発足

先日、「文化財をしらべる・まもる・いかす」をテーマにした本の紹介しました。

対馬に移住してからしばらくの間、対馬の歴史や文化財は、素人からすると敷居が高すぎると感じていましたが、この記事に出てくる学芸員さんとの出会いから興味を持ちはじめ、「文化財は、失われたら戻ってこない」ということを意識しだしたように感じます。

私は、国、県、市が指定するものに限らず、暮らしてきた人々が代々大事にしてきた物も含めて「文化財」と捉えていますが、例えば、城下町厳原の景観をひとつ取ってみただけでも、高層ホテルの建設、道路の拡幅、電線の地中化、韓国人観光客をターゲットにした看板の掲出など、色々な課題に直面しています。
生活空間に存在する文化財も多いので、有識者の中には生活空間と文化財を共存させることの是非から提起される方もいましたが、生活の外に追いやったらそれこそ忘れ去られるのでは?という疑問が浮かんだり、防災や交通安全の確保、観光客のキャパオーバーといった現実が目の前にあるという事情もあったりで、単に古いものを残すか否かという二元論では割り切れないことを、数々感じました。

【半井桃水館前の武家屋敷通りです。】
【建設前に比べると否定的な論調が収まった感じの東横INN対馬厳原】
【道路拡幅と電線地中化を進めている馬場筋通り。】
【厳原港周辺にあるハングル文字だけの看板類。】
【対馬市交流センターにある看板類。】

実際のところ、すぐに「正解」は出てきませんが、ひとつ抑えておかねばならないことは、「歴史を取り戻すには、在りつづけてきた時間のぶんだけ、また時を積み重ねなければならない」ということかと思います。
地域に歴史的資産があることは、我々観光ガイドの立場から述べますと、それによって収入が得られているという現実的恩恵もありますがf^_^;)、仮によその地域がマネをしようにも、同じだけの時間をかけねばなりませんので、大きな資産に膨らむ可能性があると考えられます。
世の中には、「不良資産」というのもありますので、闇雲に何でも残そうとすると足かせが増えますが、時を経ることによる価値が見いだせるものは、次の世代にもつなげられるようにしたいと考えます。

そこで、今年からプロジェクトを立ち上げ、以下の活動をはじめようと計画しています。


おさんぽイベントの開催

歴史の話といいますと、古くさい、重苦しい、分からないといった印象から、敬遠される方が少なからずいらっしゃると思います。
かくいう私もそのひとりでしたが、我々の先達も同じ人間です。もっと気楽に歴史と向き合ってもいいのではないでしょうか。

対馬を散歩していますと、幸運にも、よそでは見かけない過去の痕跡が、あちこちに埋もれています。
そこで、対馬を散歩しながら気になったものに、自分なりの解釈を加えて参加者と共有しあう「おさんぽイベント」を開催しようと考えています。

【今屋敷の防火壁です。】
【コテ絵とレンガ塀です。レンガはフランス積みでしょうか。】
【何のマークか分からずtwitterで尋ねたところ、日本専売公社とのこと。】

以前、おさんぽコミュニティ「あるっこ」代表の並木有咲さんを交えてお散歩イベントをしましたが、参加者それぞれがどのような目線で街を歩いているのかを知ることができ、いままで気付いていなかったマチの魅力や面白さが感じられる楽しみ方を味わえます。
そのイベントを通じて、自分の言葉で対馬のことが語れるようになり、「自分の住む対馬が楽しい」「対馬に住んでいて良かった」と感じられる方がひとりでも増えてほしいと考えています。

補足で、「ぼっち」はダメなのかとツッコまれそうですが、まったくそんなことはなく、ひとりの世界で深掘りしたことを、集団のおさんぽで共有したことにより、お互いにとっての発見が生まれた、ということはいくらでもあります。ただ、人が集まるには何かきっかけがないと難しいと思いその機会を作っている、くらいに捉えてください(かくいう私は、他人に合わせるのが苦手ですので、単独行動をしていることが圧倒的に多いです)。

ガイド人材の発掘、育成、定着化

観光業は、内需衰退が見込まれる日本における「再生の切り札」と言われていますが、2019年半ばの日韓関係悪化や新型コロナウイルスの感染拡大など、世の中の情勢に左右されることが大きく、人材がなかなか定着しないという課題があります。そうでなくても、世の中人手不足ですから、人材を探してくるところから大変です。

もともと対馬では、小さいナリワイをつなぎ合わせて暮らしてきたところがありますので、そこに立ち返り、ライフワーク優先の働き方にも対応できる人材育成の仕組みや、閑散期でも賃金が払える仕事を創出する足掛かりを作りたいと考えています。

【対馬の山がちである地理を活かした原木しいたけの栽培。】
【古代から行われているといわれるニホンミツバチの養蜂。】

そして、ツアーといいますと観光名所や史跡をめぐるものと想像される方が多いと思われますが、お客様からしますと対馬という場所に来ること自体が「異次元の体験」なのでしょう、ガイドの合間に地理や日常生活に関するご質問も数多くいただきます。
そこで、対馬に関係ある話であれば、ネタはひとつでも多いほうがよかろうと、昨年は有限会社丸徳水産さん、環境省さん、対馬海上保安部さんなど、地元の事業者や官公庁からご協力をいただきながら、ガイド研修を実施しました。
今年も継続し、観光ガイドを通じて広報活動のお役にも立てればと考えています。

【磯焼け問題への取り組みとして行われているひじき養殖を実際に体験しています。】
【ツシマヤマネコのフンの採取記録をどのようにとっているか解説いただいています。】
【対馬海上保安部さんによる航路標識の講義です。】

※もし講師になっていただける方がいらっしゃいましたら、下記のお問い合わせフォームからご連絡いただけると幸いです。

文化財や景観について考えるシンポジウムの開催

昨年、おととしと、「廃墟景観シンポジウム」に参加しました。
「廃墟」といいますと、おおむね「色物扱い」されますが、「廃墟」と「文化財」を並べてみることで、発見できることがあります。

最近軍事史跡マニアの方に、対馬にある廃墟の例として「砲台跡」を紹介したところ、どうもそうではないらしいと感じ取れるリアクションをされましたがf^_^;)、実際のところ、どこまでが「廃墟」でどこからが「史跡」なのか、というような明確な定義はありません。
ただ、「廃墟」は良くも悪くもユルかったり、「朽ちるに任せる」ところがあったりする(その変化を楽しむという考え方もある)のに対し、「文化財」は残すための大義名分やその通りに維持する労力、資金が必要となってきます。

何を残すのが適切なのか明確な答えはありませんが、文化財や景観について考える場を作ることによって、自分のふるさとについて考える機会にもつながると思いますので、このような発信にもチャレンジしていきたいと考えています。

【厳原湾から臨む清水山城の景色。】
【国の特別史跡(金田城跡)の中にある、陸軍の城山砲台跡。】

明日は、「島から人とモノの動きを考える」について、書いていきますo(^-^)。

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