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【大学生】コーヒーをつくるひと


何でもつきもの」と言われるのが留学で、何が起こるか予測不可能な社会で生きていくことは簡単なことではない。だからこそ、その何でもつきものという海外生活は、日本では経験できないからこその醍醐味であったりもする。


最近どんなテイストでnoteを書こうか迷っています、カナダ留学生のsasaと申します。Co-op留学生として、今回はカナダで私が経験したお仕事のお話をしようと思います。留学を考えている方への解説チックなお話からは少し逸れたテイストになってしまうかもしれないけど、滞在中に何かしらのお仕事に就くこと、文化も第一言語も違う同僚と、歩幅をうまく合わせて、同じコミュニティで一緒にうまくやっていくこと。いくつかのお仕事を体験し、色んなことを学んだなぁと思ったのでここに書き留めておこうと思います。今回は初めて働いた、コーヒーショップで働いていたときのお話から。

①コーヒーをつくるひと

シェアハウスが決まり、ホストファミリーを出る頃、現地の生活にもだんだん慣れてきて、そろそろパートタイムのお仕事を探そうと思った。私はCo-op留学生現在4月目で、週に20時間働くことのできるstudy termの期間にいる。あくまでpart timeのみが可能で、授業のない時間を縫って、ちょこっとお小遣い稼ぎをしたいと思っていたし、現地で働くことで、さらに英語力をあげたいという理由もあった。

こちらでは、Indeedやfacebookを使ってオンライン上でアプライする形がメジャーだが、日本のお店と違い、経験上90%は返信が来ない。お店のwebsiteからメールアドレスを見つけてきて、レジュメを貼り付けて送ってみても反応なし。youtubeなんかで留学経験者のレジュメ配りの動画を見つけてからは、レストラン街のダウンタウンを友達を歩き回り、人を雇っているか声をかけながら、ぺこぺこ挨拶して自分を売る日々が続いた。


最初に連絡が来たのは、とあるローカルのコーヒーショップだった。私はプロフェッショナルまでではないが、世界に多くいるカフェイン中毒者の一人で、毎朝スターバックスのコーヒーをペーパーフィルターにかけ、沸騰させたお湯を少しだけさまし、大量のアイスをグラスにいれてドリップして飲むのが日課だ。これがないと一日は永遠に始まらない。もちろん、氷を作り忘れたことなんて一度もない。


ドリングづくり、会計、店内の清掃が主な仕事内容。もちろん食べ物がオーダーされたら、電子レンジやグリルでチンしてコーヒーと一緒にお出ししたりもする。かなり決まり切った作業のようにも思えるが、バリスタの仕事はかなり楽しかった。個人的にコーヒーショップの裏側がどんな感じになっているかに興味があったし、カフェイン馬鹿の私にとって、勤務中にコーヒーの匂いに囲まれながら働けるのは、かなり魅力的だった。


コーヒーショップの朝は早い。朝は6時にオープンするから、5時なんかに起床して、真っ暗な道を歩いて職場に向かう。お仕事を始めた時は新しいシェアハウスに引っ越す前だったからもっと家を早く出なければならず、完全夜行性コウモリ人間の私にはほぼ不可能だったのは分かっていたが、朝型人間になるチャンスだと思って、喜んでやってみようと思えた。


日本より日の出の遅いバンクーバー。朝市にお店の看板を出して、コーヒーのドリップボタンを押して、音楽をかけて、在庫の足りなくなったマフィンを追加したりして、少しずつお店を動かしていく。最初にやってくるのは、建設系で働いているjumpsuit(作業着)を来たお兄さん。「いつものアメリカーノ」と注文を受けて、お仕事に間に合うように手際よくコーヒーをお出しする。私はまだ新人だったから、「この子が新人の子ね」とおじさんが声をかけてくれたり、先輩が「あの人はいつもアールグレイとSplenda(砂糖の名前)」2本ね」とアドバイスをもらったりする。なにも決まったプロセスでメニューどおりにドリンクを作るだけに見えるお仕事だけど、こんなにもお客さんと面と向かって会話することのできるお仕事はそう多くないとも感じる。私たちはただコーヒーを売っているだけではないのだ。


カフェは色んな人が混ざりあう不思議な空間だ。若い年代のカップルがお茶するデートスポットにもなりえるし、期末試験とレポートに追われた学生が勉強をしに駆け込んでくるシェルターみたいな機能もある。リタイアしたおじいさんが犬を連れて「この子のためのブルーベリーマフィンを買いに来ました」なんて注文もある。コーヒー片手に店を後にする人もいれば、お店の片隅で、席に座っていた見知らぬおじいさんに「最近はずっと雨ねぇ」と声をかける超outgoingなおばあさんもいる。初対面でお話するって、やっぱりカナダは違うなぁと感じていると、次の日には一緒に店に足を運びに来て、もはやすでにニコイチになっていたりもする。


私が働いていたお店では、日本人は私一人。そのほかは違う国から来た同じような留学生と、シフトを交代しながら勤務する。そんな人たちとコーヒーを売って、少し空いている暇があると、お互いの国について話したりもする。自分はこの国の首都出身で、ここに来る前はアメリカに2年住んでいたとか、ここで永住権(PR)を取るつもりなんだなんて言う子もたくさんいる。一人は違う学校に通うcoop留学生で確かマーケティングかなんかを学んでいたんだろうか。経済の話になって、ビットコインにお金を少しだけ投資しているんだとか、これからの経済はこうなっていくとか、色々なことを教えてくれたりもした。


みーんな同じ「留学生」なのに、みんなそれぞれ別々の方向を向いていて、それぞれに目標がある。国が違うだけでこんなに考えることが違くて、それと同時に社会や経済、自国についてこんなにもたくさん話せるみんなはすごいなぁと刺激を受けたりする、私にとっては異文化交流の場でもあった。
行き交うお客さんが集う場所、従業員がお互いのビジョンについて議論したりする場所。なんだか、啓蒙思想が普及した頃のヨーロッパでカフェ文化が発展した理由が本当の意味で理解できた気がする。


コロナでお店が経営難になってしまい、急遽お店が閉まることになり、結局バリスタとしてのお仕事はたったの一か月半ほどで終わってしまった。上司の方とお給料やスケジュールに関するトラブルなんかもあったりして、働くことは楽しいことばかりだけではないと感じたし、むしろそれがこの社会の「働く」ということなのかもしれないと感じた。だけど、このバリスタのお仕事自体は楽しかったし、また違う場所でコーヒーを作りたいと思った。



コーヒーは色んなものに変化することができる。人と話す時間、オンライン授業や宿題をやる時間、人の待ち合わせの暇つぶしなんかにも使われる。バリスタの目線で、お客さんを観察して、みんな、それぞれの人生があって、人々が同じ日に、ほぼ同じ時間帯で、一杯のコーヒーを買いに来る。ある人はコーヒーを楽しむために、コーヒーを買うかもしれないし、ある人はその時間や空間を買うために、コーヒーを買うのかもしれない。


コーヒーは何にでもなれる。人に居心地よく過ごしてもらうための空間を提供することもできるし、お仕事前のお客さんに「いってらっしゃい」と応援することもできる。だから、一杯のコーヒーを丁寧にお作りすることには、深い意味がある。
長く勤務することができなかったバリスタのお仕事だが、また将来日本に帰ってコーヒーと向き合い、やっぱりいいなと思ったら、カフェを開いてみようか。豆の勉強を本格的に初めてみるのもありかもしれない。



また少し、コーヒーもカフェも好きになった。




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ここまでご拝読頂き、ありがとうございます!

わたくしSasaのnoteでは、現在カナダ留学を経験している身として

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