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【創作のための読書】『中世盛期西フランスにおける都市と王権』を思考材料に……。

はじめに

 先日購入した書籍を読み進めながら、リアルの史実と創作物内の設定を脳内で比較する作業が進んでいます。

 もっとも、得た知識をストレートに使用することはほとんどありません。(今回に至ってはゼロだと思います)知識のインプットは二の次で、あくまで脳への刺激=着想を得るための手段として目下マイペースに読書を続けています。

 小説や漫画、雑誌からでも同じ効果は得られるのですが、制作している作品のテーマに関連する書籍を読むことで思考がそっち方面へ向いてくれることが私にとって重要なポイントとなっています。たとえ、興味や必要の範囲から外れた内容や、専門的過ぎて難解な文章があったとしても、考えることで創作エンジンがますます回転されるので、それはそれで有意義です。

 ちなみに、3冊のなかでも特に『中世盛期西フランスにおける都市と王権』は専門性が高く感じられ、浅学非才な私にとっては色々な意味で"重たい書物"です。下地がないまま唐突に読んでいるので「なるほど!」感が全くないです。

中世盛期西フランスにおける都市と王権 第1章、第2章を読んで

 大意をつかむかつかまないかという瀬戸際で斜め読みを敢行しているわけですが、個人的には「権利」「土地」「法的文書(取り決め)」がキーワードとして挙げられるように思います。

 本書には権利や特権を与える・奪うといった言葉が何度も登場するのですが(正確には認める・認めない)「やっぱ、人は他人より優位に立ちたい生き物なのだな」というのが率直な感想でした。

権利をどう使うかについて

 ①偉大であると誇示するために、または他との立場を明確に分けるために利用

 ②与える:不満や反抗心を抱く勢力を鎮圧・抑制するために、あるいは交渉材料として利用。または友好的関係を維持するために利用。

 ③奪う:罰を与え反省・改心させるために利用。または、権利により得ていた利益を損失させ経済的ダメージを与える、もしくは、奪うことでより多くの利益を得るために利用

 思い浮かんだものをいくつか書きました。

 他にも様々な意図があるものと思いますが、本書を読む限り領主権や領民の権利、経営権、貢租徴税権、その土地にあるものの所有権など、土地に関する規定についての記述が多く、「土地」と「権利」は切っても切れない関係にあるものだと強く感じました。

 ①はさておき、②、③の「"土地とそれに関する権利"を与える、奪う」ということが、人々にどれほど影響を与えたのか、そして、その権限を有する人間がいかに優位な存在であったのか、考えると、なぜかこう、無性におぞましいイメージが脳裏をよぎります。

 すごい主観的なのですが、そもそも土地の奪い合いで戦争ばかりしてきた世界の歴史があるし、文明レベル(本書の内容は12~13世紀)から考えると、どうしても私は、現代じゃ考えられない「悲惨さ、むごさ」の存在を想像してしまいます。権利の前ではどうすることもできない、ただただ虐げられる者たちの憤怒哀号の声が、どこからともなく聞こえてくる……。

 ※やたらネガティブなこれらイメージは、21世紀を生きる私の価値観との比較から生まれるものなので、実際はそういった側面もありつつ、案外楽しい暮らしがあったのかもしれません。

ルールをつくる意図

 土地の所有権を与奪する力を持つことは、ある意味人々の命を握ることと同義で、だからこそ、(無為な争いをなくす意味も含め)権利の名のもとに法的文書を作成する文化が根付いた ⇒ 公平や和睦を謳いながらも、王権側にとって都合よい規定をつくることで、領主より優位に立とうとした。

 これは、そうだったら面白いな、という創作的視点からの想像に過ぎなのですが、

 たとえば、

「ルールを作る」⇒「そのルールは皆にとって公平であると示す」⇒「様々な場面でルールを適用させ有用性を示す」⇒「ルールを深く浸透させ、常識化させる」

 そうやって世間を丸ごとルールで縛り付けることが出来れば、誰かにとって一方的に有利であり、不当であるという指摘を跳ね除ける、"都合の良い社会"を生み出すことが可能なのではないか

 ……そんなことを思い浮かべながら、そして創作に活かせるヒントを探しながら、以降も『中世盛期西フランスにおける都市と王権』を読み進めていきます。

最後に

 史実を正しく理解すること。理解した上で根拠を交えての推論を述べること。それらは全くできていませんが、私にとっては「考えるキッカケを得られること」が何より大切です。着想を得ることは難しいですが、思いついた瞬間は、達成感や爽快感で脳みそが喜び満ち足ります。

 最近、脳の劣化がやばいので……今年は特に読書でメンテナンスを図ろうと思っています。


ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

 

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