優しいオバケのいる坂
※タイトルにオバケとありますが、心霊系ではありません
数年前、当時4歳だった従兄弟と2人で散歩に出かける機会がありました
仮にこの従兄弟の愛称を「 まーくん 」としましょう
ちなみに散歩コースは、交通量がそこそこ多い道路沿いの歩道です
そのときのまーくんは、補助輪とペダルを取り除いた三輪車に乗っていました
( 見た目はカゴの付いていない自転車のような感じです )
ペダルもないのにどうやって進むのか?
それはもちろん、足で地面を蹴って進みます
例えば、自転車にまたがって休憩しているとして、もう少し先に進みたい状況になったとします
( 具体的には、目の前に自転車に乗った友達がいて、その人に自分のスマホの画面を見せたいときとか )
でも、ペダルを漕ぐほどでもない距離感
そんなときに、地面につけている足でヨチヨチと歩きますよね?
あんな感じです
しかし、まーくんはヨチヨチどころではないのです
かなり俊敏にダカダカと移動するのです
そのとき僕は徒歩だったのですが、まーくんのあまりの移動速度にウォーキング程度の速度では間に合わないのです
ウォーキング以上ジョギング未満の早歩きです
見様見真似でやる競歩くらいのスピードです
しかもまーくん、持久力が凄い
全然止まらないのです
なので、僕はずっと早歩き
家を出て三分後には、早歩きを諦めて軽いジョギングと化していました
僕は軽いジョギングをしながら、ずっとまーくんと喋っていました
まーくん
今日保育園でね○○ちゃんと遊んだよ〜
僕
よかったねぇ〜♪
まーくん
ここはね、○○くんのおうちなんだよ〜
僕
よく知ってるね〜♪
まーくん
この道前に来たことある〜
僕
よく覚えてるね〜♪
お前は「 よ 」からはじまる言葉しかしらんのか!とツッコミをいれたくなるような会話ですが、僕としてはどうしようもありません
子供は好きなんですが、4歳くらいの子どんな会話をしたら良いのかわからず、笑いながら一言返すくらいが精一杯なのです、、、
そんな中身の無い返事をするので精一杯な僕に対して、まーくんはずっと笑顔で話を続けてくれるのです
そのトーク力、見習いたいものです、、、
*
そんな会話を何分していたかわかりませんが、気付くと家から1kmほど離れたところまで来ました
その場所は、ちょっとした丘になっているところでした
まーくんは、勢いよくその丘を登っていきます
僕はまーくんが道路沿いに転ばないように、まーくんの後ろにぴったりついて走っていきます
丘を登りきるのに2分ほどかかりましたが、まーくんはほとんど休むことなく登りきりました
子供ってみんなこんなに体力あるもんなの?
と心底驚きました
丘を登りきると、すぐに下り坂があります
まーくんは、勢いよく下ります
もちろん、僕は必死についていきます
休憩しないの???
内心思いました
下りはじめてしばらくすると、傾斜が少し緩くなり、まーくんの移動速度が徐々に落ちてきました
そのとき、まーくんは
「 あれ?坂なのに遅くなってきたよ! 」
と言いました
僕は
「 そうだね〜 」
と返しました
正直、これまで得た知識を動員すれば、なぜ坂なのに速度が落ちたのかを説明できるわけですが、4歳の子相手にそれは難しい話です
しかし、はじめて「 坂なのに速度が落ちた 」という経験をしたまーくんの考えを聞いてみたいと思ったので
「 なんでだと思う? 」
と加えて返しました
すると、まーくんは
「 うーん、、、優しいオバケがスピードでないようにしたんじゃない? 」
と答えたのです
目には見えない力をオバケで説明するのか!
それに、「 優しいオバケ 」というなんとも可愛さと純粋さを感じる言葉選び!
いかにも子どもらしいといえばそれまでですが、子どもの発想というのはなんと自由なんだろうと、ちょっと感動してしまいました
心が汚れ、常識で固められてしまった僕の頭では絶対に思いつかない考えです
*
その後、今下ったばかりの坂をまた登って、来た道を戻り帰宅しました
総お散歩距離、2km
4歳の子にしてはなかなか頑張ったんじゃないでしょうか
ですが、僕の中では2kmも散歩したことよりも、「 優しいオバケ 」の方が思い出として色濃く残りました
常識を知らないがゆえの子どもの発想
その発想力には、もしかしたら大人たちですら驚くアイデアがいっぱい詰まっているのかもしれません
まだまだ常識も知らない人として
子どもと話すのではなく
一人の立派な人として子どもと対等に話してみるのも大事なことかもしれません
このお散歩は、僕がより一層子どもを好きになったきっかけになりました
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