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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 15 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

句合(くあはせ)の題がまわつて來た。先づ一番に月といふ題がある。凡そ四季の題で月といふほど広い漠然とした題はない。(正岡子規「句合の月」より)

【雑詠・十三吟】

瓢には喚起力あり流浪者の
(©都築郷夫)俳句 kigo

五倍子(ふし)知らぬ素人園藝汗をせり
(©都築郷夫)俳句 kigo

真昼なりつひ三尺寝夢もなく
(©都築郷夫)俳句(夏季) kigo

焼きそばが流行る兆しでハマなどは中華屋多く楽しさうだな
(©都築郷夫)短歌 tanka

夜道行く事が昨今まるでなく暗さ怖きはをかしな石器人
(©都築郷夫)短歌 tanka

多飲と言ふ症状の末頻尿さん
(©都築郷夫)川柳 senryu

ツイッター意外や去る者追はずなり
(©都築郷夫)川柳 senryu

落花生下剤のかはりとする人あり
(©都築郷夫)俳句 kigo

せつかくの秋の証しの露の袖拭つて苛つく自転車置場
(©都築郷夫)短歌 tanka

武蔵野に田鶴(たづ)多かりし時代なら千鶴さん名ありふれてゐし
(©都築郷夫)短歌 tanka

猫ぢやらしうちのは逃げるばつかりで
(©都築郷夫)俳句 kigo

八幡に参ると我が家系考へ
(©都築郷夫)川柳 senryu

ロバート·B·パーカー物せし論考を讀めるスペンサーなど絵になる哉
(©都築郷夫)短歌 tanka

【月讀】

 私の本名は吉田二臣(つぐおみ)である。この、つぐおみつてゐふのが難讀で、必ずふたおみと間違はれる。ふたおみ、なる名前は却つてあり得ない。何故ならせつかくの自然からの授かり物である子供に、そんな豚の公家のやうな、「ふたなり」のやうな、ふざけた命名をする親(とは限らないが)は恐らくゐなからう。
 バンドマン時代は記述では吉田ツグオミだつた。なんだかスピッツのシンガーの人みたいだが、いちいち間違はれるのは不快だし、仕方なくの処置である。
 ところで巻頭の引用で子規が言ふやうに、月の題は、まあ季語としては秋季のものなんだらうけれど、夏の月、とすれば夏季だし、一番の面倒な點は月が(櫻花や雪と比すと)一年中空に見られる天体だ、そこに尽きる。通年でどうにでも詠める訳で、それぢや秋の名月も霞んでしまふやも知れぬ。

 やうやく本題に入るが、月の古語、と言ふか雅称は「月讀(つくよみ)」だ。この訓みと私のツグオミは、韻を踏んで(?)ゐるし非常に似てゐる。だから飛躍した論理をかざして、月讀のミコトから取られたんだね?名付け親の方は。などゝ仰る方も多い。と言ふか何歳までかは、自分でもさう思つてゐた。
 で、或る日私は何の気なしに、母にさう訊いてみたのだ。父親は極道者なので子供の名前を考へたりはしない。
 すると..母は「それはないわねえ」だと。だいたいからして月讀の周辺についてを全く知らなんだ。珍しくロマンティックにキメて貰へたのかな、なる思ひは空転した。二臣は単にツグオミなので月讀ではないのだ。長くなつたが、こんな思ひ出がある訳である。今は都築で通つた方が気分よい。詩人の習性と言へやう。

©都築郷夫

【詩】

昼 食い足りて 腹くちく
眠くもあり 少し 逡巡するが
何となく 意を決し 起きて
ゐる 事 とする。
何するまでも ない もんだ
どうせ 詩 だ
おまへは 書くことによつて しか
目醒めの 手口を 知らぬ。
繰り返すが 眠い とても
だが 夜更かし がしたい
子供の 如く 眠りこけ
る自分 を 抑制したい。
何故なんだ どうして なのか
分からない から 生きる
さう云ふ 手筈 (さつきは
手口 と言つた) こんな、

ヌーヴォーロマンのやうな疲れた
一日が凝縮されてゐる詩一篇書き
残し結局は眠りに向けて遁走する

おまへ とは 己。おれ。

©都築郷夫

【絶句!】

熱雨又冷地 あつきあめまたちをさまし
雲灰空集蝟 くもぐれーにそらにつどふ
天候悪拂私 てんきによりおのれはらひ
頭寄捻出智 あたまよせあふちえひねる

とか(またしても出鱈目)やつてる内にまた空晴れ残暑模様。降つたり止んだりかなー。しかし、未だしも簡単な、と言はれる五言絶句にしてこの規則づくめ、漢詩は本当に六ツかしい。私のものなんか児戯ですよ、お遊戯。

©都築郷夫 漢詩 chinesepoem

【あとがき】

こゝいらで筆を擱きませう。詩に書いてあるやうに私は疲れてゐます。幻聴がするたびに、これのどこが佯狂でどこが仮病なんだよ!?と、気持ちがさゝくれ立ちます。そんな中で、讀んでビョーキが伝染る、なんてことがあつたら..と更に苦慮してゐます。本当はこんな文章は書きたくないです。本当は誰かいゝひと見つけて、病的生活を卒業したい。本当は。また。またお会ひしませう。今度は笑つて。都築拝。

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