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2025年までにカーボンポジティブとフォレストポジティブの実現を目指して~環境保護とチョコレート~

カカオ農園が抱える、あらゆる問題の要因は貧困です。貧困による人材不足から児童労働せざるを得ず、また、カカオの木の老朽化や土壌の質の悪さなども相まって生産性が低くなってしまいます。生産性の低さは新たな農地を求めた森林破壊を誘引し、それが気候変動にまでつながるため、バリーカレボーではそれぞれの問題に対して、インパクトのある活動を実行し、結果を測っています。

バリーカレボーが行っているサステナブルな取り組み「フォーエバーチョコレート(Forever Chocolate)」は「生産者の繁栄」「児童労働ゼロ」「自然を豊かに」「サステナブルなチョコレート」の4つの柱から成り立っています。

今回は4つの取り組みのなかから「自然を豊かに」についてまとめました。こちらの取り組みは国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「15.陸の豊かさも守ろう」の3つのゴールに貢献します。

気候変動に配慮した農法や森林再生を導入し、カーボン&フォレストポジティブを目指す

カカオ豆は現在、主にコートジボワール、ガーナなどの西アフリカの農園で栽培されています。そして、その多くが小規模なカカオ生産者であり、旧式の農法や栄養不足の土壌、カカオの木の老朽化により生産性が低く、常に貧困に苦しんでいるのが現状です。

また、自然環境の破壊はカカオの生産性を低下させるだけでなく、生物の多様性や森林生態系の破壊につながります。結果として連鎖的にカカオ生産者へのさらなる圧力となるのです。

これからもチョコレートを末永く提供し続けるために、チョコレート業界は二酸化炭素排出量の削減と森林破壊のないサプライチェーンの実現に取り組む必要があります。

カーボンポジティブを実現するための取り組み

カーボンポジティブとは、二酸化炭素(CO2)の吸収量・削減量が、排出量を上回る状態のことのことです。また、カーボンニュートラルという言葉もよく使われますが、こちらは排出する二酸化炭素の量と、吸収する量が同じ状態を指します。

カーボンポジティブは地球温暖化防止に直接影響を与えるため、バリーカレボーをはじめ、さまざまな企業が積極的に取り組んでいるのです。

2025年までに実現を目指す自然環境への取り組み

食品会社のサプライチェーンにおける二酸化炭素排出量は、平均して全体の87%(※4)に相当します。つまり、チョコレートやココア製品、フィリング、デコレーション、コンパウンド(※5)が製造される場所や施設の外で、最大の排出が発生しているのです。そのため、私たちは、1〜3のすべての段階(※6)でカーボンインパクトを評価することを約束しました。

バリーカレボーは2025年までにカーボンポジティブの実現をめざすフォーエバーチョコレートの一環として、調達するすべての原材料の生産と加工、および関連する土地利用変化(LUC)を評価します。そして、それにともなう森林破壊と二酸化炭素排出量を、大規模かつ適切な特定・測定に取り組んでいます。

2020/21年には、長年取り組んできたプロジェクトによって有益な結果が得られました。EcoVisionLabの協力のもと、保護価値の高い森林とその地域を特定する、業界初の指標となる高炭素ストック(HCS)マップの開発につながったのです。

※4:CDP:HUNGRY FOR CHANGE Are companies driving a sustainable food system? https://www.cdp.net/en, CDP, 2020
※5:植物油脂主体のチョコレート
※6:私たち自身のオペレーションが生み出すカーボンインパクト(段階1)、私たちが使うエネルギーが生み出すインパクト(段階2)、私たちが調達するすべての原材料の生産と加工、および関連する土地利用変化(LUC)を含むサプライチェーン全体のインパクト(段階3)

カカオ農園の開発支援

森林の再生と保護

生活者ニーズにともなってカカオ農業を推し進めた結果、森林が必要以上に伐採され、生態系に大きな影響が出ているのが現状です。

2025年の目標実現に向けて、森林の再生と保護、森林破壊リスクの評価、アグロフォレストリーや生物多様性戦略の実施、干ばつや病気に強く高い収穫量を生み出すカカオ農園の開発支援に注力しています。

アグロフォレストリー(Agroforestry)とは

アグロフォレストリーとは農業(agriculture)と林業(forestry)を組み合わせた造語で、森林農業とも言われています。主に熱帯地方で、木を植えて管理しながら栽培も行う手法を指します。木を植えて増やしながら農業を行うので、森が守られ、温室効果ガスを吸収し、地球温暖化防止にもつながります。

人にも森にも優しいサステナブルな農業方式であるため、現在注目を浴び、世界に広がりはじめている取り組みのひとつです。地球環境保護が叫ばれている現代において、アグロフォレストリーで作られた作物は商品価値が上がり、さらには生産者の収入向上をもたらすというメリットがあります。

日本においても新型コロナウイルス感染症の影響下、サステナブルチョコレートを求める生活者が増えています。当社の最新の調査によると、感染拡大以降日本の 37%の生活者が、以前よりもサステナブルなチョコレート菓子を多く購入したことが判明しました(※7)。そして世界でも同様の傾向が見られています。より多くの人々が、サステナビリティに対して目を向けはじめている証拠です。

バリーカレボーでも2020年9月に「ホールフルーツチョコレート」を国内で発売しました。「ホールフルーツチョコレート」は、従来70%が廃棄されていたカカオの実をアップサイクルし、100%カカオフルーツでつくられたチョコレートです。

2021年度において、販売している製品の43%はサステナブルなカカオのみを使用。また、カカオ以外の原材料の66%は、サステナブルな原料を使用しています(※8)。さらにはアグロフォレストリーや、自然の生態系の再生などへの投資も進めています(※9)。

最近では日本の他のメーカーでも、アグロフォレストリーで作られたチョコレート商品が増えました。作り手がサステナブルな取り組みを進めるなかで、生活者も同様にどういった商品を買うべきか考えるようになってきています。

※7:<バリーカレボージャパン>サステナブルチョコレートの明日を形づくるオンラインカンファレンス、「サステナブルチョコレートの未来 2021 with #changemakers 」開催|バリーカレボー
※8:フォーエバーチョコレート プログレスレポート 2020/21|バリーカレボー
※9:アグロフォレストリー|バリーカレボー

フォレストポジティブを実現するための取り組み

カカオ農園のマッピング確立とモニタリング実施

フォレストポジティブ(※10)を実現するには、サプライチェーンから森林破壊を排除し続けなければなりません。そのためには、調達先の農園の正確な位置を把握することが重要です。バリーカレボーは、50万人以上のカカオ農業従事者を2025年までに貧困から脱出させることを目標に、ダイレクトサプライチェーンの下にあるすべてのカカオ農園のマッピングを行っています。

2018/19年度末の時点で、17万6984の農園と農業従事者の全データをデータベース「Katchile(カチリ)」に入力しました(※11)。このデータベースは、位置、農園規模、カカオ農園と農業従事者の社会経済、および世帯のデータに関する主要なインサイトを提供するものです。

このデータをもとに、ファームビジネスプラン(農園事業プラン)とファームサービス(農園サービス)によって生産性を向上させる方法について、個々の農園のレベルに応じたオーダーメイドのアドバイスを提供できます。

実際にコートジボワールとガーナにおいて、サプライチェーン内の森林保護区から25キロメートル以内にある合計4万7182カ所のカカオ農園のマップを完成させました。

また2021年には農場モニタリングがさらに整備され、国立公園、狩猟保護区、森林保護区、そして新たにコートジボワールの分類林から25キロメートル以内の農場まで含みました。2020/21年度には、ダイレクトサプライチェーンに含まれる240,570(+358%)の農場が、保護林エリアから25キロメートル以内に位置していることを把握しています。

※10 :カカオの栽培で伐採される以上の木を増やすこと
※11:フォーエバーチョコレートプログレスレポ―ト2018‐2019|バリーカレボー

荒廃した森林への植林を開始

2020/21にはコートジボワールとガーナで、270万超の若いカカオの苗木と、再植林のために約200万本の緑陰樹を配布しました(※12)。コートジボワールでの「Initiative For Sustainable Landscapes(持続可能な景観のためのイニシアチブ:ISLA)」プロジェクト支援を通じ、違法なカカオ栽培を排除して自然林の再生を促すことにより、6,280ヘクタールの原生林保護と、3,800ヘクタールの森林を復活。この取り組みにより、森林破壊に関与していない原材料の割合は37.6%に増えました。

その後植林能力の増強によりコートジボワールとガーナで、チーク・マホガニー・セジュラなど、1ヘクタールあたり35本以上の木を植えました。これはバリーカレボーが2017年から創設署名している、CFI(※13)の要求事項にも合致しています。

劣化した森林や農場間・近郊の生態系の修復は、水や土質、在来植物種など、森林の生態系を取り戻すことが目的です。また、これらの生態系の修復は、環境要因だけにとどまりません。生態系の保護・回復は、生産者の生活を改善し、農村の幸福度を高めることにもつながります。

2021年5月には、FORLIANCEおよびコートジボワールの森林統治組織と提携し、コートジボワールで初めて荒廃した森林の植林(300ヘクタール)を開始しました。

※12:フォーエバーチョコレート プログレスレポート 2020/21|バリーカレボー
※13:2017年にバリーカレボーとカカオ業界のメンバーによって署名された「ココアアンドフォレストイニシアチブ(CFI)」

調査による結果・取り組みに対する実績(2020‐21年)

カカオのサプライチェーンにおける炭素集約度(※14)の削減

2020/21年度の当社のカーボンフットプリント(※15)は全体で783万tCO2eとなり、前回報告と比較すると横ばい状態です。これは主に、持続可能な方法で調達された砂糖などの原材料の入手量が、低下したことによります。カカオ以外の原材料のカーボンフットプリントを除くと、カカオのサプライチェーンにおける炭素集約度の削減(6.9%減)は大きく進展しました。

※14:団体、個人、企業、国などの、売上高あたりの二酸化炭素排出量
※15:団体、個人、企業、国などの温室効果ガスの排出量を表す指標

カカオのLUC負荷の削減

トレーサビリティと調達への取り組みにより、カカオのLUC負荷を-10%以上(233.000 tCO2e)削減しました。さらに、工場におけるCO2e原単位も削減しています。製品1トンあたりのCO2原単位は、3.73tCO2eから3.57tCO2eに減少しました。

炭素集約度と二酸化炭素排出量の減少

アグロフォレストリーの取り組みを通じて、推定150,000tCO2eのスコープ3除去を達成。これにより、当社の二酸化炭素排出量は7.67tCO2eに減少し、炭素集約度は製品1トン当たり3.49tCO2eまで減少しました。

再生可能エネルギー使用の増加

排出量の削減は、事業によるエネルギー効率と使用エネルギーの種類を改善することが重要です。2020/21年には、再生可能エネルギーの使用を増やし、64工場のうち26工場で、再生可能電力のみを使用しています。

まとめ

バリーカレボーはフォーエバーチョコレートの主軸のひとつである「自然を豊かに」を目指し、カーボンポジティブ、フォレストポジティブを実現できるよう着実に歩んでいます。

カカオの生産量減少に苦しむカカオ生産者にとって、気候変動や土壌の質の悪さなど、環境の変化が、生産者にさらなる圧力をかけているのです。また、自然破壊が進むことは、気候変動や生態系を壊すことにもつながります。チョコレート業界は今後いっそう、二酸化炭素排出量の削減や、森林破壊のないサプライチェーンの実現に励む必要があります。


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