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2025年までに50万人以上の生産者を貧困から救うために~農家の所得向上に有効な取り組みとは~

チョコレートの生産には欠かせない「カカオ」。世界におけるカカオの生産は、ガーナとコートジボワールで約3分の2を占めています。さらに、それらの生産者の収入の半分以上がカカオの生産に依存しているのが現状です。

カカオ農園では、貧困問題がより深刻化しています。そんな中、バリーカレボーではサステナビリティの一環として「2025年までにサステナブルなチョコレートを当たり前にすること」を目標に掲げ、フォーエバーチョコレート(Forever Chocolate)という取り組みを実施しています。

フォーエバーチョコレートは、生産国で働く人々を尊重し、カカオの生産が健全に行われることを目指した活動です。具体的には「生産者の繁栄」「児童労働ゼロ(※1)」「自然を豊かに」「サステナブルなチョコレート」という4つの課題を解決することを目的としています。

※1:ここでいう児童労働問題は、国際労働機関(ILO)が定めた基準に基づく。

今回はその4つの取り組みの中から、カカオ生産者の貧困と深く関連する「生産者の繁栄」について考えていきます。この取り組みは国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)「01.貧困をなくそう」のゴールに貢献します。

カカオ生産者の大多数が陥っている「貧困」の現状

世界的なカカオの生産地であるガーナでは、カカオ生産者の収入の約3分の2をカカオ(※2)が占めているといわれています。

カカオ生産者にとって、カカオが生活基盤を支える大きな収入源である一方、貧弱な農業慣行や土壌の栄養不足、カカオの木の老朽化等の問題がカカオ農園の生産性を低下させ、貧困の悪循環に陥れているのです。

さらにカカオ生産者は以下のような問題に直面しています。

  • 水や衛生施設へのアクセス問題

  • 道路インフラや輸送ネットワークの欠如

  • 品質が低くアクセスが困難な医療サービス、学校教育

こうした通常の生活において、普遍的な基本サービスへのアクセスを制限する未発達な農村インフラの問題に直面しているのです。カカオ生産国については、農村のインフラ開発をはじめ、土地登録、生産者データベースシステムに対して更なる支援が必要だとバリーカレボーは考えています。

※2:ガーナのカカオ農家は貧困と経済的脆弱性を経験しています(2017年)。cocoainitiative.org(2021年8月2日アクセス)

カカオ生産者の所得向上のために取り組んでいくべきこと

バリーカレボーでは、安定したカカオの生産・チョコレートの提供をすべく、生産者の専門性・生産性をより高めるための取り組みを実践しています。例えばカカオ生産者向けの農業研修、農業に必要な材料へのアクセス改善、土壌の肥沃度向上のための植栽材料など製品提供、投資用融資への支援などが挙げられます。

EUのようなカカオ輸入国・地域では、支援に必要な各種サポートを実施しています。カカオ生産者が生活を安定させるための事前調査や森林破壊に関する法律は必要不可欠なものであり、原産国とのパートナーシップと連動させることが必要です。

完全に持続可能なチョコレートを作ることは、決して単独で行えることではありません。NGO、産業界、政府、その他のステークホルダーなど、カカオに関わるすべての関係者による幅広い活動によって達成することができます。

生産者を貧困から救うためのバリーカレボーの取り組み

バリーカレボーでは、2025年までにサプライチェーンの50万人以上の生産者を貧困から救うという目標を立てています。

目標を達成するために、農業や栽培方法の近代化・収穫量の増加・収入の多様化・農業の専門化など、生産者を継続的に支援しています。

ここでは、具体的なバリーカレボーの取り組みや、取り組みの結果を解説していきます。

1対1でのサポートとトレーニング

バリーカレボーでは、カカオ生産者に対して農場の診断・スキル分析・データ収集を実施し、生産性向上パッケージ・苗木配布といったサービスを提供して、カカオ生産者を支援しています。

バリーカレボーの生産者支援で特徴的なのは、1対1でのサポートやトレーニングを行っていることです。

農家の土壌・カカオの木の樹齢・代替作物や家畜の有無などの状況を分析したうえで、個々の農場特性に合わせて、ファームサービスの専門家がファームビジネスプラン(FBP)を作成していきます。

個別のファームビジネスプランは、最適に管理された場合に特定の農場が生み出す可能性のある収入を10年単位でモデル化したものです。個々の生産者の現状やレベル、ニーズに合わせることで、より効果的なサポートやトレーニングを行っています。

農場でのコーチングに加え、各生産者のニーズに具体的に関連した技術的アドバイスを組み合わせることは、トレーニング中に学んだスキルの実践的習得をサポートする最も効果的な方法といえます。

カカオ生産者をサポートするため、生産性パッケージ、苗木配布、収入多様化パッケージのといった3種類のサービスを提供しています。

取り組みに対する実績(2020‐21年)

バリーカレボーの取り組みは、農家の生産性向上と所得の多様化を通じて、農民が自給自足から生活所得へと移行できるようにすることが目的です。

「2025年までに50万人以上のカカオ生産者を貧困から救う」という目標の進捗を測定するため、コートジボワール、ガーナ、カメルーン、インドネシア、ブラジルにおける購買力・生活費調整後の国際貧困ラインの定義「1日あたり1.90米ドル(※3)」を基準とし、貧困状態を測定しています。

2020‐21年、国際貧困ラインの基準に照らし合わせると、バリーカレボーのサプライチェーンに属する214,584人(49%)のカカオ生産者が貧困状態から脱したと推定されます。また、コートジボワール、ガーナ、カメルーン、ブラジル、インドネシア、エクアドルの125,593人(75%増)の生産者が、農法の改善、収量の増加、収入の多様化、農法の改善を目的とした農業サービスを利用することができました。49,335軒の農家が生産性向上パッケージを受け取っています。

さらに、コートジボワール、ガーナ、カメルーン、ブラジル、エクアドル、インドネシアでは、苗床生産施設の能力を拡大しました。その結果、約270万本(24%増)のカカオの苗木と、約200万本(49%増)のカカオ以外の樹木の配布につながっています。

その他、394,305(42%増)ものカカオ農園の地理的位置と規模のマッピングを行いました。カカオ生産者への国勢調査のインタビューについても390,019件(34%増)実施し、社会経済や世帯に関するデータを取得しています。

※3:世界銀行データハブ

収入の多様化

バリーカレボーでは、カカオ生産者がカカオ生産以外の収入源を得られるよう、収入の多様化を目指す取り組みも行っています。

収入多様化パッケージのサービスを提供し、生産性向上パッケージや苗木配布と同様に、専門家と生産者との1対1でのサポートとトレーニングを実施しています。具体的には、農園でのカカオ以外の食用作物の栽培、食用品や日用品の製造・販売などの小規模なビジネスの運営をサポートしています。

コートジボワールでは、収入源となり得る米やトマト、キャベツなどといった8種類の食用作物を農園単位で試験的に導入、栽培し、収入源とするためのテストを実施しました。その結果、選択肢として有力なのはトマト、ナス、唐辛子の3種であることがわかりました。

テストを通じて、収穫量・生産コスト・販売額や収益額・作物の干ばつに対する感受性・カカオとの補完性を考慮した収穫サイクルなどの項目をモニタリングし、カカオ以外の食用作物を生産できる環境づくりを目指しています。

収入の多様化における現地での具体例2つ

・石鹸の製造・販売(カメルーン)
女性のカカオ生産者向けの研修として、収入創出のための石鹸製造についてトレーニングを実施しました。実際には石鹸の作り方、起業家としての考え方、マーケティング、グループ内のトラブルを管理する方法などについて学ぶ場を提供しています。

研修前には周りに石鹸づくりや販売を行う人がいなかったものの、研修後には実際に女性たちがコミュニティで石鹸の製造・販売をスタート。カカオ生産者としての収入以外にも収入を得られるようになりました。

将来的には他の女性への石鹸づくりのトレーニングなども実施し、安定した収入を継続して得られる環境づくりに力を入れるとしています。

・天然サトウキビジュ―スの製造・販売(エクアドル)
エクアドルでは多くのカカオ生産者が、他の製品の生産や中小企業の経営など、起業家としての活動も活発に行われています。収入の多様化の一環として、生産者が製品やサービスを販売するために展示できるファーマーズマーケットを毎月開催しているような例もあります。

あるカカオ生産者は、天然のサトウキビジュースを製造・販売しています。ファーマーズマーケットのブースでは1日に40人以上の人が訪れ、ジュースが購入されただけでなく、もっと広く認知される機会を得ることができました。

その場で他の起業家たちからいくつかのフィードバックを受け、より良い商品として改善する計画を立てています。製造・販売だけでなく、よりよい商品づくり・経営につながっているのです。

アップサイクルへの取り組み

これまでは捨てられていたものを捨てずに活用するという「アップサイクル」に取り組むことは、カカオ生産者の所得向上にもつながります。

例えば、バリーカレボーが開発・発売している「ホールフルーツチョコレート」は、100%カカオの実のみから作られているチョコレートです。カカオの豆を覆う白い果肉「カカオパルプ」は、これまではカカオ豆を発酵させるために部分的に使われてきたのみで、残りの大半は破棄されていました。これらを部分的ではなくすべて使う形で、チョコレートづくりに活用しています。

カカオフルーツは通常、その70%が不要なものとして廃棄されます。ホールフルーツチョコレートはフルーティーさと濃厚なチョコレートが調和した特徴的な味であるだけでなく、かつては不要なものとして部分的に廃棄されていたフルーツを評価する、影響力が高い製品だと考えています。

▼ホールフルーツチョコレートについてはこちら

まとめ

カカオ生産者の貧困問題は、あらゆる問題が複雑に絡み合っています。貧困脱却のために、私たちは 2025 年までに持続可能なチョコレートを標準にする計画「フォーエバー チョコレート」を立ち上げました。

バリーカレボーは各年ごとに、これらの期限付きの測定可能な目標の進捗状況を報告し、第三者の監査人によって検証されています。今後もニーズを踏まえてプロジェクトを継続的に実施し、カカオ生産者をサポートしていきます。


他の3つの目標を具体的に掘り下げた記事についてはこちらからご覧いただけます

2025年までに児童労働の根絶を目指す~子どもたちとチョコレートの未来を守るために~

2025年までにカーボンポジティブとフォレストポジティブの実現を目指して~環境保護とチョコレート~

2025年までに100%サステナブルな原材料を使用したチョコレートへ~バリーカレボーの挑戦~

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